13 部長は歌うことになる
文字数 1,238文字
「私たちも考えて来たの!ひろ子の趣味。」
「そう、どういうのがひろ子の憂さ晴らしになるかな、って。」
明日菜に続いて節子が言う。
私自身の趣味や気分転換や気晴らしを友人達に考えさせてしまって申し訳ないな、てか憂さ晴らしって…、等と疋嶋丸は思ったが素直に
「ありがとう。」と礼を言った。
「あ、もちろん童話を書きたいって言うひろ子の気持ちを一番に考えようとは思うんだけどぉ。」
と何だか旅行の計画を立てるみたいに楽し気に喋る明日菜の次の言葉に疋嶋丸は驚いた。
「歌がいいと思うの!」
ん、え?!
うた…、歌、唄、唱…
民謡かな、詩吟とか俳句とかのほうかな?
市民合唱団みたいなやつとかかな?
それとも普通にカラオケとかかな?
「音楽活動、って言った方がいいかも。」
当惑を通り越し動揺している疋嶋丸を見かねて節子が言った。
音楽活動…成る程、じゃいわゆる伝統芸能じゃない方の"うた"なのだろうな多分。だとすると、
「カラオケとかでストレス発散、ってことかな?」と疋嶋丸は2人に尋ねると
「違うよ、カラオケは音楽活動じゃない。」即座に明日菜から明確な否定が返って来たので少し面食らった。
そして分からなくなってきた。
この友人ふたりは一体私に何をやらせよう?としているのだろう。どんな方法が私に向いている、と言うのだろう。
「あたし達の言ってる音楽活動は、自分で歌を作って、それを歌える場所で演奏して歌う、うんまぁアーティスト活動だね。」と節子がいつも通り明日菜の補足に回ってくれる。
突っ込みたいけど先ず全部聞こう、と待ち構えていると今度は明日菜が続いた。
「ひろ子はさ、圧倒的に自分を表すのが下手なんだよ。思ってる事凄いたぁくさんあるのにその半分も言わないんだ。歌を作って人前で歌うって自分の塊を誰かにぶつける事なの。もしひろ子がさ、それ出来るようになったら無敵だよ!」
出たよ無敵、と疋嶋丸は思ったが、でも確かに自分の弱点の克服には効果的なのかな、とも思った。
「それにさ、これなら私たちも手伝う事けっこうあるし、この方面の知り合いも沢山いるし、ライブがあったら私達も絶対行くし!」
「何よりあたしさ。」
ふと、ずっと補足か聞き役でしかなかった節子が口を開いた。
「ひろ子の歌好きなんだよね。」
「わかる!そうなんだよ!そうなの本当に!」
明日菜が、よく言ってくれたとばかりに興奮気味に
「全然上手じゃないんだけど、なんかもう沁みちゃうんだよね!」
「そう。歌が上手い人なんて腐る程いるけど、でもあたし、ひろ子の歌を聴きたい、って思う。…不思議と。」
「理由が言葉にできる"良さ"なんて、世間にありふれた"良さ"でしかないんだよ。」
いつの間にかホールに店長が出てきていた。
「だから僕もいつか君の歌を聴いてみたいな。」
何だか褒められているような気がしなかったし、ついでに嬉しいかどうかも分からなかったけれど疋嶋丸は素直に礼を言った。
「2人ともありがとう。店長も有難う御座います。」
「そう、どういうのがひろ子の憂さ晴らしになるかな、って。」
明日菜に続いて節子が言う。
私自身の趣味や気分転換や気晴らしを友人達に考えさせてしまって申し訳ないな、てか憂さ晴らしって…、等と疋嶋丸は思ったが素直に
「ありがとう。」と礼を言った。
「あ、もちろん童話を書きたいって言うひろ子の気持ちを一番に考えようとは思うんだけどぉ。」
と何だか旅行の計画を立てるみたいに楽し気に喋る明日菜の次の言葉に疋嶋丸は驚いた。
「歌がいいと思うの!」
ん、え?!
うた…、歌、唄、唱…
民謡かな、詩吟とか俳句とかのほうかな?
市民合唱団みたいなやつとかかな?
それとも普通にカラオケとかかな?
「音楽活動、って言った方がいいかも。」
当惑を通り越し動揺している疋嶋丸を見かねて節子が言った。
音楽活動…成る程、じゃいわゆる伝統芸能じゃない方の"うた"なのだろうな多分。だとすると、
「カラオケとかでストレス発散、ってことかな?」と疋嶋丸は2人に尋ねると
「違うよ、カラオケは音楽活動じゃない。」即座に明日菜から明確な否定が返って来たので少し面食らった。
そして分からなくなってきた。
この友人ふたりは一体私に何をやらせよう?としているのだろう。どんな方法が私に向いている、と言うのだろう。
「あたし達の言ってる音楽活動は、自分で歌を作って、それを歌える場所で演奏して歌う、うんまぁアーティスト活動だね。」と節子がいつも通り明日菜の補足に回ってくれる。
突っ込みたいけど先ず全部聞こう、と待ち構えていると今度は明日菜が続いた。
「ひろ子はさ、圧倒的に自分を表すのが下手なんだよ。思ってる事凄いたぁくさんあるのにその半分も言わないんだ。歌を作って人前で歌うって自分の塊を誰かにぶつける事なの。もしひろ子がさ、それ出来るようになったら無敵だよ!」
出たよ無敵、と疋嶋丸は思ったが、でも確かに自分の弱点の克服には効果的なのかな、とも思った。
「それにさ、これなら私たちも手伝う事けっこうあるし、この方面の知り合いも沢山いるし、ライブがあったら私達も絶対行くし!」
「何よりあたしさ。」
ふと、ずっと補足か聞き役でしかなかった節子が口を開いた。
「ひろ子の歌好きなんだよね。」
「わかる!そうなんだよ!そうなの本当に!」
明日菜が、よく言ってくれたとばかりに興奮気味に
「全然上手じゃないんだけど、なんかもう沁みちゃうんだよね!」
「そう。歌が上手い人なんて腐る程いるけど、でもあたし、ひろ子の歌を聴きたい、って思う。…不思議と。」
「理由が言葉にできる"良さ"なんて、世間にありふれた"良さ"でしかないんだよ。」
いつの間にかホールに店長が出てきていた。
「だから僕もいつか君の歌を聴いてみたいな。」
何だか褒められているような気がしなかったし、ついでに嬉しいかどうかも分からなかったけれど疋嶋丸は素直に礼を言った。
「2人ともありがとう。店長も有難う御座います。」