第6話 真実2
文字数 2,016文字
「なぜ昨夜アルと一緒の部屋にしたか分かるか?」
また話題を変えた、これ以上混乱させないでくれとギルは眉間にしわを寄せた
「お前の住むスラム街に刺客を送らせて情報を得ていた、より有望な人材を得るためにな」
「人材?」
「そう、『裏』の仕事に向いている逸材を探るためだ。街の人間に気づかれないよう本当の住人にさせてな」
「?!」
「油断もすきもないだろ?」
「ああ…」
これが初老の男のいう『裏』の世界の一部…どれだけデカイ存在なんだ?と慄《おのの》いた
「お前の存在を知り、アルと組ませようとすぐに確信した」
おれの…存在?
「お前を監視していた者が言ってたよ、お前は人の心を開くと」
「心を開く…?」
ギルが不思議そうに呟くと
「ああ、現にアルやミハルはお前に対する感情が変わりつつある」
「?」
初老の言葉に対し、1日過ごしただけのギルには理解不能で当然である
「アルは確かに『裏』に向いている、だが心を開かないのはネックになることもある。お前を監視していた刺客のように人々に溶け込む才能も時には必要だ。」
『裏』のことをまだ知らないギルには話が見えてこなかった。
もったいぶらずに言えよ!と苛立ってもいた。
それに感づいてか初老の男は
「そう焦るな、回りくどい性格なのは慎重の表われだ、臆病な年寄りだと思って許してくれ」
と、さっきと打って変わって笑みを浮かべた
「どうもお前もアルが必要かもしれないな」
「?」
「お前は感情に流されやすいと聞いてたが、確かにその通りだ」
ギルもそれは自覚しているため、ぐうの音も出なかった
「お前を抑える人間が必要になる、アルはうってつけの人材だ」
初老の男の笑みが消え、さっきとは違って重く闇を感じる表情を浮かべ
「お前たち二人はいい暗殺者になれる」
「あ、暗殺…?」
「そうだ、『裏』の人間にはまず鍛えさせて適正を判断し任務に就かせる。」
その言葉でギルは思い出した。ミハルに抱えられた時、ギルがどんなに暴れてもびくともしなかったことを
「だがお前たちはまだ子供でこれからどんどん力を伸ばすことが出来る。当然どの任務に当たらせても完全にこなせるまでに成長できるだろう。でもなぜ暗殺者かという理由が分かるか?」
「いや…全然わからねー…」
「『壊れた心』を持った人間が若ければ若いほど残酷になれるからだよ」
『壊れた心?』
確かにおれは親も兄弟もいない、『クズ』呼ばわりだった
でもアルやミハルみたいに恨みとかそういうのなんてない…
なぜ俺が?
納得の行かないギルを見て初老の男が
「お前は知っているんだよ、心を封印しているだけで」
「封印?」
初老の男はギルの目をじっと見た
ギルは嫌な予感を拭いきれなかった、じわじわと冷や汗が滲んでいるのにも気づけないほど動揺を隠せなかった
初老の言葉はギルの予感を的中させた
「お前は両親を殺されたところを見ている、はっきりとな」
歪んで見えた…すべてが…
そして最初はうっすらと…それがだんだんと色濃く滲んできた
包丁を持った少年、血まみれの床や壁、横たわる男…
少年はもう既に動かないであろう女の体に何回も包丁を突き刺している
少年は笑っている…生暖かい液体がピチャピチャと体にかかる
それとは反比例して血の気が引くのを感じていた
「お、にいちゃん…?」
その言葉に反応した少年はゆっくりと振り向き
「今度はお前の番だよ、
何とも言えない寒気を感じた
いつも優しかったお兄ちゃんが…なぜ…?
「…お前は始めから孤独ではなかったんだ」
初老の男はゆっくりと続きを話し始めた
「お前たち家族は幸せだったんだ、でもお前の兄はどんどん心を蝕まれていった。責任感のある人間にありがちなプレッシャーに耐え切れずな…。」
確かに覚えている、だんだんおかしくなっていく様子を
「ノイローゼにまで追い込まれた子供の家庭に他人は足を踏み込まないだろう、だんだんとお前たち家族は孤立していった」
そうだ、仲の良かった友達みんな離れていった…
「そして殺人まで犯してしまった人間の弟までもが同等の扱いを受けた」
『クズ』…その頃からだ…
「あまりにも残酷な状況を見た幼いお前はすべての記憶を封印し、新たな自分を生み出したんだ」
また話題を変えた、これ以上混乱させないでくれとギルは眉間にしわを寄せた
「お前の住むスラム街に刺客を送らせて情報を得ていた、より有望な人材を得るためにな」
「人材?」
「そう、『裏』の仕事に向いている逸材を探るためだ。街の人間に気づかれないよう本当の住人にさせてな」
「?!」
「油断もすきもないだろ?」
「ああ…」
これが初老の男のいう『裏』の世界の一部…どれだけデカイ存在なんだ?と慄《おのの》いた
「お前の存在を知り、アルと組ませようとすぐに確信した」
おれの…存在?
「お前を監視していた者が言ってたよ、お前は人の心を開くと」
「心を開く…?」
ギルが不思議そうに呟くと
「ああ、現にアルやミハルはお前に対する感情が変わりつつある」
「?」
初老の言葉に対し、1日過ごしただけのギルには理解不能で当然である
「アルは確かに『裏』に向いている、だが心を開かないのはネックになることもある。お前を監視していた刺客のように人々に溶け込む才能も時には必要だ。」
『裏』のことをまだ知らないギルには話が見えてこなかった。
もったいぶらずに言えよ!と苛立ってもいた。
それに感づいてか初老の男は
「そう焦るな、回りくどい性格なのは慎重の表われだ、臆病な年寄りだと思って許してくれ」
と、さっきと打って変わって笑みを浮かべた
「どうもお前もアルが必要かもしれないな」
「?」
「お前は感情に流されやすいと聞いてたが、確かにその通りだ」
ギルもそれは自覚しているため、ぐうの音も出なかった
「お前を抑える人間が必要になる、アルはうってつけの人材だ」
初老の男の笑みが消え、さっきとは違って重く闇を感じる表情を浮かべ
「お前たち二人はいい暗殺者になれる」
「あ、暗殺…?」
「そうだ、『裏』の人間にはまず鍛えさせて適正を判断し任務に就かせる。」
その言葉でギルは思い出した。ミハルに抱えられた時、ギルがどんなに暴れてもびくともしなかったことを
「だがお前たちはまだ子供でこれからどんどん力を伸ばすことが出来る。当然どの任務に当たらせても完全にこなせるまでに成長できるだろう。でもなぜ暗殺者かという理由が分かるか?」
「いや…全然わからねー…」
「『壊れた心』を持った人間が若ければ若いほど残酷になれるからだよ」
『壊れた心?』
確かにおれは親も兄弟もいない、『クズ』呼ばわりだった
でもアルやミハルみたいに恨みとかそういうのなんてない…
なぜ俺が?
納得の行かないギルを見て初老の男が
「お前は知っているんだよ、心を封印しているだけで」
「封印?」
初老の男はギルの目をじっと見た
ギルは嫌な予感を拭いきれなかった、じわじわと冷や汗が滲んでいるのにも気づけないほど動揺を隠せなかった
初老の言葉はギルの予感を的中させた
「お前は両親を殺されたところを見ている、はっきりとな」
歪んで見えた…すべてが…
そして最初はうっすらと…それがだんだんと色濃く滲んできた
包丁を持った少年、血まみれの床や壁、横たわる男…
少年はもう既に動かないであろう女の体に何回も包丁を突き刺している
少年は笑っている…生暖かい液体がピチャピチャと体にかかる
それとは反比例して血の気が引くのを感じていた
「お、にいちゃん…?」
その言葉に反応した少年はゆっくりと振り向き
「今度はお前の番だよ、
ギル
」何とも言えない寒気を感じた
いつも優しかったお兄ちゃんが…なぜ…?
「…お前は始めから孤独ではなかったんだ」
初老の男はゆっくりと続きを話し始めた
「お前たち家族は幸せだったんだ、でもお前の兄はどんどん心を蝕まれていった。責任感のある人間にありがちなプレッシャーに耐え切れずな…。」
確かに覚えている、だんだんおかしくなっていく様子を
「ノイローゼにまで追い込まれた子供の家庭に他人は足を踏み込まないだろう、だんだんとお前たち家族は孤立していった」
そうだ、仲の良かった友達みんな離れていった…
「そして殺人まで犯してしまった人間の弟までもが同等の扱いを受けた」
『クズ』…その頃からだ…
「あまりにも残酷な状況を見た幼いお前はすべての記憶を封印し、新たな自分を生み出したんだ」