第5話 真実1
文字数 2,018文字
目が覚めると白いレースのカーテンが風になびいていた
青空が広がり、太陽の光が射していた
ギルが目を覚ましたのに気がついたミハルがいつもの冷めた顔で
「会って1時間もせずに喧嘩ですか?」
と呆れていた
確かに気づいたらこの部屋にいた…
まだ頭が痛い…いくらなんでもゲーム機で殴ることないだろ?と思ってた時に
「ギル、気づいたか」
初老の男がやってきた
「ミハル、ちょっと席をはずしてくれないか」
「かしこまりました」
ミハルがいなくなると、初老の男は険しい顔になった気がした
「アルが女の子であることに気づいたんだろう?」
「あ、ああ…」
初老の男は椅子からバルコニーに移動し、話を続けた
「彼女はギルとは違って貧しくはなかった、ただ環境が著しく悪かった」
他の人の生活を想像したことがないギルには理解出来なかった、何より裕福なのに何が良くないのかが分からなかった
「彼女は母親を早くに亡くし、父と兄と3人で暮らしていた。しかし兄は戦争のため家を離れてしまった。そこからが彼女の地獄だった」
「地獄?」
「ああ、彼女の父親は兄の稼ぎをあてにし働くのをやめ、酒びたりになりアルに暴力を振るった、多分左目もそのときのものだろう…それだけじゃなく…性的暴行をくわえていた」
「?!」
まさか父親に…自分の娘にかよ!と憤りを感じた
「彼女も限界を感じ…父親を殺した」
「…は?そんなことしたら警察に追われるじゃん!」
「正当防衛だよ、あらかじめアルが考えてたのか、近所に逃げて助けてもらったらしい」
険しい顔がより濃くなり、いつもとは違い怖いと感じた
「アルが一番傷ついたのは、あとで病院で調べたところ、妊娠・流産を繰り返し、きちんとした処置もされてなく、子宮は使い物にならないほど損傷していたそうだ、摘出、すなわち子供は出来ない」
そんな重たいもん背負ってるのかよ、とギルは絶句した
だから女であることが分かった瞬間火がついたかのようになったのかも、と感じていた
「正直アルのことはあまり知らないんだよ、唯一ぶかぶかのシャツはお兄さんを思い出すからと答えてくれた、本名も言いたくないの一点張りだったから、お前のように私が名づけた、彼女を配慮して男の名前でな」
「…そうだったのか…」
知らなかったとはいえ、悪ふざけがすぎたなと反省した
「…ここへ運べと頼んだのはアルだぞ」
「は?」
いきなり話題が変わり、よく分からない状況に戸惑った
「何だかんだ言っても心配だったんだよ、慌てて大丈夫かと何度も聞いてきたよ」
あんなんでも心配してくれたんだ、と思ってた
そういえばアルがいない事に気づいた
「アルは?」
「学校に通ってるよ、今時珍しく『のびのびをモットーに』と謳 っているところだ、だから心配はない」
「そっか…」
あんなんでも落ち着ける場所があるんだな、と安心した
「お前も行くんだぞ」
「えー!おれ勉強苦手なんだよなぁ…」
初老の男は笑いながら次のことを話してくれた
「ミハルだって事情がある子だったんだ」
「事情?」
「人身売買って分かるか?」
「ああ、海外で問題になってるやつだろ?」
「その犠牲者になるところだった」
人身売買だったらただじゃすまねーだろ?と思いつつ、話の続きを聞いていた
「ミハルは命からがら逃げてきたけど、妹を助けることが出来なかったそうだ。教えてくれたよ、綺麗な赤い髪をした少女だったと」
あの時!ドライヤー掛けてたときに言ったのはそれでか!
「執事長は酒気帯び運転の車に衝突され、家族をなくしている…ここはいろんな事情を持った人間が集まってる、中にはただ雇っているのもいるが」
ああ、おっさんに投げられた男ね、と察知した
「心に闇を持っている人間の方が強く生きてる、お前もそう思わないか?」
と問われた時に、初老の男と初めて出会ったときのことを思い出した
「でもおれ、あの時死を覚悟したんだ」
初老の男はギルの目を見据えて
「それでいいんだ、一度死んだと思った人間がどれだけ強いか」
真剣なまなざしで見つめられ、自分もそうなのかと納得せざるを得なかった
「私も表向きにはある会社の会長をしている、詳しいことは執事長だけしか知らない。でも裏の仕事ではお前たちに指令を下す」
裏?またギルは頭が混乱していた
青空が広がり、太陽の光が射していた
ギルが目を覚ましたのに気がついたミハルがいつもの冷めた顔で
「会って1時間もせずに喧嘩ですか?」
と呆れていた
確かに気づいたらこの部屋にいた…
まだ頭が痛い…いくらなんでもゲーム機で殴ることないだろ?と思ってた時に
「ギル、気づいたか」
初老の男がやってきた
「ミハル、ちょっと席をはずしてくれないか」
「かしこまりました」
ミハルがいなくなると、初老の男は険しい顔になった気がした
「アルが女の子であることに気づいたんだろう?」
「あ、ああ…」
初老の男は椅子からバルコニーに移動し、話を続けた
「彼女はギルとは違って貧しくはなかった、ただ環境が著しく悪かった」
他の人の生活を想像したことがないギルには理解出来なかった、何より裕福なのに何が良くないのかが分からなかった
「彼女は母親を早くに亡くし、父と兄と3人で暮らしていた。しかし兄は戦争のため家を離れてしまった。そこからが彼女の地獄だった」
「地獄?」
「ああ、彼女の父親は兄の稼ぎをあてにし働くのをやめ、酒びたりになりアルに暴力を振るった、多分左目もそのときのものだろう…それだけじゃなく…性的暴行をくわえていた」
「?!」
まさか父親に…自分の娘にかよ!と憤りを感じた
「彼女も限界を感じ…父親を殺した」
「…は?そんなことしたら警察に追われるじゃん!」
「正当防衛だよ、あらかじめアルが考えてたのか、近所に逃げて助けてもらったらしい」
険しい顔がより濃くなり、いつもとは違い怖いと感じた
「アルが一番傷ついたのは、あとで病院で調べたところ、妊娠・流産を繰り返し、きちんとした処置もされてなく、子宮は使い物にならないほど損傷していたそうだ、摘出、すなわち子供は出来ない」
そんな重たいもん背負ってるのかよ、とギルは絶句した
だから女であることが分かった瞬間火がついたかのようになったのかも、と感じていた
「正直アルのことはあまり知らないんだよ、唯一ぶかぶかのシャツはお兄さんを思い出すからと答えてくれた、本名も言いたくないの一点張りだったから、お前のように私が名づけた、彼女を配慮して男の名前でな」
「…そうだったのか…」
知らなかったとはいえ、悪ふざけがすぎたなと反省した
「…ここへ運べと頼んだのはアルだぞ」
「は?」
いきなり話題が変わり、よく分からない状況に戸惑った
「何だかんだ言っても心配だったんだよ、慌てて大丈夫かと何度も聞いてきたよ」
あんなんでも心配してくれたんだ、と思ってた
そういえばアルがいない事に気づいた
「アルは?」
「学校に通ってるよ、今時珍しく『のびのびをモットーに』と
「そっか…」
あんなんでも落ち着ける場所があるんだな、と安心した
「お前も行くんだぞ」
「えー!おれ勉強苦手なんだよなぁ…」
初老の男は笑いながら次のことを話してくれた
「ミハルだって事情がある子だったんだ」
「事情?」
「人身売買って分かるか?」
「ああ、海外で問題になってるやつだろ?」
「その犠牲者になるところだった」
人身売買だったらただじゃすまねーだろ?と思いつつ、話の続きを聞いていた
「ミハルは命からがら逃げてきたけど、妹を助けることが出来なかったそうだ。教えてくれたよ、綺麗な赤い髪をした少女だったと」
あの時!ドライヤー掛けてたときに言ったのはそれでか!
「執事長は酒気帯び運転の車に衝突され、家族をなくしている…ここはいろんな事情を持った人間が集まってる、中にはただ雇っているのもいるが」
ああ、おっさんに投げられた男ね、と察知した
「心に闇を持っている人間の方が強く生きてる、お前もそう思わないか?」
と問われた時に、初老の男と初めて出会ったときのことを思い出した
「でもおれ、あの時死を覚悟したんだ」
初老の男はギルの目を見据えて
「それでいいんだ、一度死んだと思った人間がどれだけ強いか」
真剣なまなざしで見つめられ、自分もそうなのかと納得せざるを得なかった
「私も表向きにはある会社の会長をしている、詳しいことは執事長だけしか知らない。でも裏の仕事ではお前たちに指令を下す」
裏?またギルは頭が混乱していた