第1話 出会い1

文字数 819文字

 雨の中、スラム街の外れにある瓦礫の中、1人の少年が寒さでうずくまっていた

 「おれもこれで最後だな…」

 そう決意したときに黒塗りの車が目の前に止まった

 黒いスーツを着た男が傘を差し出し、後部座席にいた男に傘を向けた

 降りてきたのは初老の男、と言っても体格はかなり大きかった



 「な、何だよ、あんたら…」

 警戒する少年に

 「威勢がいいな、名はなんと言う?」

 名前?おれはいつも

 「



 と呼ばれていた、本名なんて聞いたことがない

 伏し目がちにそう言うと

 「クズか、これからこっちに来い」

 こっちへって…どこへ連れて行く気だ?と少年は思った

 抵抗はあったものの、一度死を覚悟した身だ、とついていくことにした

 車はとても乗り心地がいい

 見たことがあるのは、スラム街で乗り捨てられたシートもボディーもボロボロの車だった

 さっきいた場所からどんどん離れていく

 一体どこへ連れて行かれるんだろう?と外を眺めていると、だんだん華やかな街の方へ近づいて行った

 着いたのは立派な屋敷だった、少年がのけぞってしまうほどの高い建物だった

 広くて綺麗な建物に圧倒されるばかりだった、少年は胸をときめかせていた

 屋敷に入ると一人の男性が

 「また無断で外に出掛けられたのですか?…なんて小汚い子供…」

 続きをいう前に初老の男は口を塞いだ

 「おれに指図するな!」

 と怒鳴り、男を投げ飛ばした

 初老の男はビックリしている少年の方へ振り向き

 「悪かったな、ひどいことを聞かせてしまって」

 と、打って変わって優しい顔をしていた

 「大丈夫、気にしていないから」

 と笑顔で返事をした

 酷いことを言われるのは慣れている…でもかばってもらったのは初めてだった…
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