第2話 出会い2

文字数 1,029文字

 何もかも煌びやかな室内、少年はあちこち見ながら初老の存在を感嘆(かんたん)した
 
 「さて、お腹が空いたろう」
 
 うんうんと頷くと、横から咳払いが聞こえてきた

 白髪の小さな老人がどこからともなくやってきて、いつのまに?と少年は驚いた
 
 「旦那様、そちらのお坊ちゃまをお風呂に入れるのが先でございます」
 
 「そうだな、クズ、風呂に入って来い」
 
 そして初老の男は少年に近づき、
 
 「あの執事長は怖いから気をつけろよ」
 
 と耳打ちしてきた
 
 え?さっき男を投げつけたオヤジがジジイが怖い?
 
 そんな疑問符を抱いてたときに、メイドの女性にがっしり掴まれた
 
 「おいっ離せよ!何するつもりだよ!」
 
 感情を感じない目をしたメイドが
 
 「何ってお風呂場へ行くのです」
 
 「行き先くらい聞いたら自分で行くから離せよ!」
 
 と、もがいてもメイドは動じない。いくら痩せ細った体とはいえ、暴れたら体勢が崩れるはずだが、メイドはビクともしない
 
 逆に少年の方が引きずられているように見えた
 
 
 脱衣所で服を脱ごうとするが、メイドは傍から離れない
 
 「お召し物はこちらに着替えてください」
 
 「分かったから早く出てってくれよ」
 
 「いえ、旦那様に綺麗にするように命じられていますので」
 
 「はぁ?!
 
 全部服を剥ぎ取られ、手で大事なところを覆い隠しながら風呂場の扉を開くと…
 
 なんて綺麗で広い浴場なんだ…街の奴らと集まっていた大浴場なんか比べ物にならねーぞ
 
 と感動しているのもつかの間、頭からお湯をザバーっと掛けられた
 
 「おいっビックリするじゃねーかよっ」
 
 そんなことはお構い無しに淡々とシャンプーの液を手にしているメイド。そして頭を洗い始めたのだが、メイドの表情とは打って変わってとても優しく気持ちが良かった
 
 記憶にないはずの母親らしきものがかすかに浮かんだ気がした
 
 髪を洗い流し、今度は体ときたけど、少年はもう羞恥心を持っている
 
 「ちゃんと洗うから、な?…あ、そうだ、背中だけ洗ってくれるか?」
 
 メイドは察したらしく、背中を優しく洗い始めた
 
 ほっ助かった…と少年は安堵した




ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み