第2話 異世界美女がただのバカだった件

文字数 1,348文字

「えーと、抜けてしまったんですけど……」

 聖剣(せいけん)キャラタンポはかくしてあっけなく、(おれ)の手によって抜かれてしまったのだ。

 フレインとクレアは下あごをカクカクさせながら、ついでに両ひざもカクカクさせて、愕然(がくぜん)としている。

なんたらごどだぎゃあ(なんということだ)……」

ど、どでんしたじゃあ(び、びっくりした)……」

 いまにも小便でもちびりそうなビビり具合だ。

 そんなに(おどろ)くことなのか?

 こんなに簡単に抜けたというのに……

「で、次は何をすればいいんですかね……?」

 当然の質問だと思う。

へ、へば(じゃ、じゃあ)そいどご(そいつを)()りかざしてみでけれ(みてくれ)……」

そせば(そうすれば)なんかかんか(なにかしら)起ごる(起こる)はずだでえ(はずだよー)……」

 いくらなんでもビビりすぎでは?

 まあとにかく、そう言うなら試してみるか。

「えーと、こんな感じかな?」

 俺はおそるおそる、聖剣キャラタンポを高く振りかざしてみた。

「おっ、うおっ!?」

 剣の先端が強く輝いて、俺は反射的に目を閉じた。

「はっ、はほおおおおおんっ!」

「ひょっ、ひょっ、ひょおおおおおんっ!」

 フレインとクレアの奇声が聞こえた。

 いったい何事だと、俺はゆっくり目を開いた。

「はっ、はほ……」

「ひょっ、ひょほ……」

 なぜか衣装がズタボロになった二人が地面に転がって、カエルのように痙攣(けいれん)している。

「ちょ、大丈夫ですかっ!?」

「み、みごどだ(見事だ)……」

おめさま(お前)の……か、かぢだじゃあ(勝ちだ)

 何もしてねえよ!

 てか、俺、なんか悪いことしてるような気分だよ!

んがだば(お前なら)でぎる(できる)……魔王どご()、倒す、ごどが(ことが)……」

「た、たのむじゃあ(頼みます)……勇者……さま……」

 果てた……

 お、おい、冗談だろ?

 俺、なんかすげー気まずいんだけど……

「あの、フレインさん、クレアさん……」

なしたあ(どうした)?」

「ひえーっ!」

 しっかり生きてるし!

 なんなんだ、この小芝居(こしばい)は!

「あのー、このあと、どうすれば? その、魔王っていったいどこに……?」

あそごだあ(あそこだ)

「はいっ!?」

 フレインさんが指差したのは、それほど高くない山、の、それほど高くないところ。

 こんなんでいいのか?

 仮にも異世界転移だろ?

 拍子抜けだよ……

「ゆ、勇者さん……魔王ゴモチョスどご()わったりやってけれ(やっつけてください)……」

「は、はい……」

 クレアさんはそう言って、再び果てた。

 フレインさんも、いつの間にか、また果てている。

 ……

 バカなのか?

 こいつらは?

 なんだか、アホらしくなってきた……

 でもまあ、頼むって言われたしね。

 やりますか、いっこうに気が進まないけど……

 そんなこんなで、俺は目の前にあるその山に、コンビニに行く感覚で向かった。
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