第3話 スタートからそれほど遠くもないゴールへの道

文字数 696文字

 それほど高くない山の、それほど高くないところへ着くのには、それほど時間はかからなかった。

 およそ15分くらいか。

 ふむ、ちょうどコンビニに行く感覚で正解だった。

 岩肌(いわはだ)がゴツゴツしているけれど、それほど登るのに苦労はしなかったし。

 体力に自信なんてない、だが農業をやっていたおかげで、人並み以上のスタミナはついていたようだ。

 あんがい農家も悪くはないかもな。

「さてと……」

 のっぺりと切り立った、しかしそれほどハードでもない岩壁(がんぺき)一角(いっかく)に、大きな、しかしせいぜい大人がすんなり入れる程度の穴っぽこが()いている。

「これじゃあ、入ってくださいと言わんばかりだな」

 もしかしてこれは、魔王ガモチョスとやらの『(わな)』なのでは?

「しかしまあ、せっかく来たんだし」

 入ってみよう。

 俺は居酒屋(いざかや)暖簾(のれん)をくぐる軽さで、洞穴(どうけつ)の中へ足を踏み入れた――

   *

「暗いな……」

 まあ、洞窟(どうくつ)の中なんだし、当たり前か。

「おっ……」

 明かりだ。

 それほど遠くないところに、ぼわっと明かりが見える。

 もっとも、ここに来るまでの道のりも、それほど長くはなかったのだけれど――

「とにかく、行ってみるか」

 あそこに魔王ガモチョスがいるのかもしれない、そう思うと、さすがに緊張してきた。

「うーん、クソ。もうヤケだっ!」

 俺はそれほどでかくない勇気を出し、光の中へ飛び込んだ――

「いらっしゃいませーっ!」

 ……

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