第5話 異世界美女たちは美少年の肉体を愛でる……

文字数 1,817文字

サゲっこよごへでぇあ~(お酒をよこしなさい)

 くだんのバカ、もとい、剣士フレインと賢者クレアが、類人猿のように腕を振りながら、のっしのっしとこちらへやってくる。

 お前ら仮にも、正義の味方じゃないのか?

 これじゃまるで、チンピラだぞ?

「おい、瞬也(しゅんや)~。サゲっこ買いにきたどお(お酒を買いにきたわよ)

「買いにきたって……お金なんていつも、払わないじゃないですか……」

「ああっ!? なにしゃべっちゅーんずや(言ってるのよ)! ちゃんとツケにしてらべ(してるでしょ)!? おいがだどごなめでらったが(私たちをなめてるの)!」

 フレインは

なはずなのに、酔っ払いのようにいきり立っている。

 なにが『ツケ』だ。

 要するに金を払う気なんてないんだろ?

「ふふふ、瞬也くうん。あんまりおらがだどごバガにせば(私たちをバカにすると)こうなるどお(こうなるわよ)?」

「ひゃあんっ!?」

 なんてことだ……

 いい大人が二人がかりで、いたいけな少年の体を、あろうことかなめるように撫でまわしている……

 なんという、あからさまなセクハラ……

 てか、現代だったらこんなの、下手すりゃブ○箱行きだぞ?

 いくらなんでも、これはさすがに止めないと……

「おい、あんたら。相手は子どもじゃないか? いい大人が二人がかりで、恥ずかしくないのか?」

 あらら、バカどもが俺のことを、にらみつけてきたぞ……

うるへじゃ(うるさいわね)黙ってれ(黙ってなさい)んがみでんた(あなたのような)ヘナチョコの分際が」

「役立たずの勇者さんは、ちょっとおどなしぐしてでけれやあ(おとなしくしててね)?」

 すぐにまた、少年へのイチャイチャを再会しやがった。

「瞬也あ。んがのどんず(あなたのお尻)やっこして(柔らかくて)、プリっとして、めんけじゃあ(かわいいわねえ)

あいだば(そうだ)瞬也くん、おいがだの(わたしたちの)弟さなれじゃあ(弟になりなさいよ)そせばもっと(そうすればもっと)おもしぇごどでぎるでえ(面白いことできるわよ)? そいだ(そうだ)そいがいいでゃあ(それがいいわ)

 二人はニヤニヤとしたスケベ顔で、こわがる少年をもてあそんでいる。

 クズだ、こいつらは……

 いくら根性なしの俺でも、吐き気のする悪はわかる。

 なんだか無性に腹が立ってきたぞ――

「おわっ――!?」

 なんだ?

 聖剣キャラタンポが、光り輝いている……

「はっ、はほおおおおおん!」

「ひょほ、ひょほ、ひょおおおおおん!」

 フレインとクレアの衣服がまたズタズタになり、彼女らはコンビニ店舗の後ろのほうへ吹き飛んで、例によってカエルよろしく痙攣(けいれん)している。

 なんなんだ、この剣は?

 服を破くことしかできないのか?

 セクハラなのはどっちだよって話だぞ?

「お兄ちゃん!」

「わっ――!」

 瞬也くんが俺に抱きついてきた。

「ありがとう、守ってくれて! 悪いやつは倒したみたいだよ!」

「うーん、ははは……」

 悪いやつ、うーん、悪いやつ、ね……

 なんだかな……

「ああ、お兄ちゃん、見て!」

「うおっ、今度はなんだ……!?」

 キャラタンポがまた輝きはじめた。

 まさか次は俺たちの服でも破く気か?

 いや、待て。

 なんだ?

 なにか、声が聞こえてくるぞ……?

 なになに、俺たちを?

 もとの世界に戻してくれるって?

「もとの世界に、戻れるのか……?」

「ええっ、本当!? やったあ!」

 瞬也くんは俺を抱きしめながら、うれしそうにはしゃいでいる。

 確かに、かわいいな……

 おほん……!

「うおっ、これは……!?」

「光が、僕たちを……」

 包みこんでいく……

 なんだか、温かい光だ……

 帰れるのか。

 短い時間だったが、異世界転移、それなりに楽しかった。

 あのバカどもはまた、懲りずに勇者召喚と称して、俺のような犠牲者を出すのか?

 それはわからない、が――
 
 帰れる、帰れるんだ。

 帰ったら、またネギでも掘るか。

 ま、案外、悪くないかもな。

 光はついに、俺たちの体をすっかり、のみ込んだ――
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