過去の話2

文字数 421文字

何もいらない

「先輩って物欲ないんすか?」
 相変わらずなんとも唐突な質問に首を傾げながら私は返事をする。
「あるにはあると思いますが……なぜそんな質問を?」
 声帯パーツを取り替えたおかげで声の出し具合も丁度いい。
会話をするならやはりこうでないと。
「いや、声帯パーツも俺が言うまでそのままだった訳だし、何か買ってるのも見ないし……と思って」
 ただの会話のネタの一つっすよと言うと彼は床面をゴシゴシと磨き始めた。彼はお喋りだが仕事はなかなか手際が良い。
そんなことを考えながら欲しいものについて考える。
声帯パーツは取り替えたばかりで不具合はない。
ボディにもどこか不具合がある訳でもないし、欲しいパーツがある訳でもない。
話す相手も彼が居る訳で。
「物欲ないですねえ」
「まだ考えてたんすか?! じゃあ俺の物欲の話聞いてくださいよ」
「いいですよ」
 そうしてペラペラと話し始めた彼を横目に、友人の様な後輩ができたから他には何もいらないのだと気がついたのだった。
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登場人物紹介

RN3240(現在)

オートマタ

百年稼働している清掃の大先輩

もともとはヒューマノイドだったが、時間の経過と共に

身体を機械へと作り変えた。

嘘か本当か分からないことをよく言うので後輩には信用されていない。

Aq2oj

最近清掃場に入った新人ヒューマノイド

オートマタ先輩のいうことは八割嘘だと思っている

RN3240(過去)

ヒューマノイド

新人清掃員。滅茶苦茶よく喋る。喋らない暇はない位

よく喋る。その話術で先輩の心を開いた。

P-101

ヒューマノイド

ベテラン清掃員。

無口で話す相手が今まで居なかったため声帯機能が

故障気味。新人ヒューマノイドにそそのかされて

声帯機能を取り換えることにした。

RN3240と話す内に自我が出始めた。

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