現在の話3

文字数 638文字

そこまでの記憶しかないな、と首を傾げたところで室内に誰かが入ってくる。
「先輩~! 大丈夫ですか? 意識ははっきりしてます? 記憶に変なこと起こってないですか? これ何本に見えます?」
入ってきたのは後輩だった。指を三本立ててこちらに見せてきたので一応「三本」と言っておいた。
「よかった~じゃあ取り敢えず先生呼んできますね!」
「おう」
後輩の目には涙が滲んでいた気がしたがつっこむのは止めておいた。
「心配かけたのかね」
一人呟くと後輩の「当たり前でしょ!」という声が聞こえてきそうだった。

「結論から言うと脳内チップの劣化からくる機能停止だね」
医者が言うには予想通りの言葉だった。
「なるほど……」
「破損寸前だったからチップは新しいのに変えてあるけど、ボディはどうする? そろそろ新しくしてもいいと思うけれど」
「じゃあボディも新しくします」
ついでだ、ついで。だから医者の後ろで不安そうな雰囲気を醸し出さないでくれ。
「ヒューマノイド型にして貰ってもいいですか」
「了解、3日くらいは入院ね」
「うへぇ」
そう話した医者は、後でボディのデザイン持ってくるからと言って立ち去っていった。
「先輩しっかり休んでくださいね! 自分お見舞いにも来るんで」
「いや、そこまでしなくても」
ただのボディの交換だし、と言うが後輩は聞く気は無いらしく「じゃあ帰ります!」と言って立ち去っていった。
「Aq2ojに心配かけちまったなあ」
 直ったら酒でも奢るかとベッドに再び寝転びながらそんなことを呟くのだった。
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登場人物紹介

RN3240(現在)

オートマタ

百年稼働している清掃の大先輩

もともとはヒューマノイドだったが、時間の経過と共に

身体を機械へと作り変えた。

嘘か本当か分からないことをよく言うので後輩には信用されていない。

Aq2oj

最近清掃場に入った新人ヒューマノイド

オートマタ先輩のいうことは八割嘘だと思っている

RN3240(過去)

ヒューマノイド

新人清掃員。滅茶苦茶よく喋る。喋らない暇はない位

よく喋る。その話術で先輩の心を開いた。

P-101

ヒューマノイド

ベテラン清掃員。

無口で話す相手が今まで居なかったため声帯機能が

故障気味。新人ヒューマノイドにそそのかされて

声帯機能を取り換えることにした。

RN3240と話す内に自我が出始めた。

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