第4話

文字数 975文字

冬になる頃、類が町の外へ転校することになった。


それから、卒業式の日。
怜奈も中学からは町の外の学校の寮に入るということを噂で聞いた。

全然知らなかった。
ショックだった。

今日が怜奈に会える最後なら。

最後くらい、友達みたいに話しかけてもいいんじゃないか。


町の外になんて出たら、怜奈は帰ってこないだろうし、もう会えない気がした。




式が終わって、帰ろうとした怜奈を追いかけて言った。

「怜奈、他の町の学校に行くんだってね。全然知らなかったよー。寂しいなぁ。元気でね!」

式の最中ずっと考えに考えたセリフをドキドキしながら言った。


怜奈はちょっとだけ微笑んだ、気がした。




私のヒーロー。
私の希望。


怜奈がいなくなると、この町には私の希望はもう何もなくなってしまった気がした。



中学では平凡な仲間と平凡な日常を過ごした。

憧れもドキドキも何もない毎日。

退屈なまま3年間を何となくやり過ごし、高校生になった。

高校は町の外までバスで通った。



「ねえ、怜奈って覚えてる?」

小学校の同級生に言われた。言われる間でもなく、覚えてる。

「高校からまたこっちに戻ってきてるらしいよー」

「えっ、そうなの!?」

「何人か見かけたって。あの顔は見間違わないでしょ、派手な顔、相変わらずみたいだよー」

「…そう……キレイになってるだろうなぁ」

「えっ!なっちゃん、それ本気?あんまり言わない方がいいよー!聞かなかったことにするからねっ」

「…なんで?…私は、怜奈の顔って素敵だと思うけど」

「……ま、言ってることもわかるけどー…いっか、怜奈の話はやめやめ」



大きくなってやっと私は自分の思っていたことを人に言えるようになった。

それでもやっぱり、みんなと違うことを言うのは勇気がいる。

小学生の頃からの気心の知れた子だから言えたことかもしれない。

そして、相手が「みんな」でないから。


そうか、だから怜奈は何も言わずにみんなをにらみつけていたのか。

何も言わずに、泣いていたのか。


そうか、怜奈は闘ってたんだ。


みんなと違うということを主張するなら、私も闘わなきゃならないんだ。


怜奈はいつも強くて、1人だって平気に見えた。


怜奈は強い。
どうしてあんなに強いんだろうって。

でも違った。
強くいなければ、押しつぶされてしまいそうだっただけだったんだと、私はやっと気がついた。


今なら、怜奈に言えることがある気がした。


あなたは私の希望だったと。


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