第2話

文字数 1,338文字

ある日、私は前の日のゴミ捨て担当を忘れてたことを思い出して、朝早くに学校へ走ってった。

けど、ゴミ箱がないなと思った時、ちょうど向こうから怜奈が空っぽのゴミ箱を持ってきた。

「あっ、怜奈!捨ててくれたの?昨日、私が捨て忘れちゃったから今朝行こうと思ってたんだ!ありがとう!」

咄嗟に言ったけど、怜奈にちゃんと話しかけたのは、もしかしたら初めてだったかもしれない。

私はいつもただ、怜奈に憧れてただけだったから。

怜奈はびっくりしたような顔をしたけど、どこかちょっと嬉しそうにも見えた。



怜奈は私たちと同じなのかもしれない、と、私はこの時初めて感じた。

怜奈は特別だけど、他の子たちと同じ、私の友達なのだと。



それからしばらくして、怜奈は学級代表とか、目立った役があればすぐに立候補するようになった。


すごいなぁ、偉いなぁ。

私はただそう思ってたけど、みんなはすぐにあずみを推薦した。

多数決があって、私も最初はみんなと同じようにあわててあずみに手を挙げた。

そうなるといつもあずみに決まる。

何回もそんなことが続くようになって、怜奈はいつも机に顔を伏せて泣いてた。

なんだか、悪いことをしてる気分だった。

みんなと同じ、にしたのに。


そのうち、多数決の方法が変わって、みんなが顔を伏せて、先生が人数を数えるようになった。



そうなって初めて私は、怜奈に手を挙げた。



怜奈に決まることはなかったけど、少しでも怜奈の力になれたような気がして嬉しかった。


みんなとは違うことをした。


みんなとは違うけど、私はこの時、それでいいと思えた。

怜奈の力になりたかったし、怜奈のそばにいたいと思ってた。


だけど、怜奈はそれを望んでいるかな?

望まないんじゃないかな。

私なんて、怜奈から見たら、おんなじような顔をした大多数の中の1人なんだろうから。



特別な怜奈の側には、特別な誰かがよく似合う。


だから、そばにはいられなかった。





4年生の時の商店街の七夕祭の日、私は信じられないくらいキレイな男の子を見た。

あんまりキレイでみとれちゃって、せっかく買ったかき氷が半分溶けちゃったくらい。

あの子、誰なんだろ。

その子を目で追うと、あずみと一緒に神社の方へ消えてった。
まるで天使か妖精みたいに。



その子が私たちのクラスに転校して来たときは本当にびっくりして、たぶんだけど私はものすごく大きな口を開けてたと思う。


高槻(たかつき) (るい)です、よろしくお願いします。」


類はやっぱりあずみの友達だったみたいで、学校の行き帰りはいつも一緒。

嫉妬って男子もするものなんだな、って私は初めて知った。


キレイで優しくて絵の上手な男の子。

生まれて初めて、私が恋心を抱いたのは、類だ。

きっとそれは、他の女の子みんなも同じだった。

みんなと同じ。


けれど、それは本当に淡い憧れ。
両思いになれるなんてことはこれっぽっちも期待してなかった。

きっと、テレビの中のアイドルのファンみたいなもの。



怜奈も類のことが好きなんだろうなと思った。


自分の淡い恋心は置いといて、怜奈には類が似合うんじゃないかな、と、私は思い始めていた。

類はいつもあずみと一緒にいて、それは私にはどうにもできなかったけど。

類と怜奈が並んだらきっと…王子様とお姫様みたいにキレイだろうな。

特別な怜奈のそばには、特別な類にいてほしかった。





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