第2話 月曜日

文字数 1,038文字

学生時代と社会人とのギャップに驚かなくなって、すでに4年の歳月が過ぎていた。
出社時刻は9時だけど、僕はいつも始発電車で会社へと向かう。
埼京線の混雑具合はハンパないからそうしていた。
ぎゅうぎゅうに詰め込まれた車内はこの世の地獄だから、早起きしてでもゆったり座れた方がマシだと思う。
毎日お弁当は持参している。
勿論僕の手作りだけど、たまには彼女にも作ってもらいたいなと思う。
付き合い始めて6年。
学生時代は半同棲生活をしていたけれど、お互い社会人になってからは会う時間は減っていた。

「清人は何でも出来るから、あたしなんて必要ないでしょ!」

一年前に初めて喧嘩した時の彼女からの言葉が、今でも心に突き刺さったままでいる。
忘れたいけど、一緒にいると時折思い返してしまう自分が嫌でたまらない。
最近では、いつ別れを切り出そうか悩んでいる。

セックスもあまりしなくなった。
彼女が泊まりに来た夜は、それなりのコトはするけれど、ふと違うことを考えてしまう瞬間がある。
それはセックスの悩みと言っても良い。
彼女は感受性が強い。
だからいつも僕なりに「してあげている」つもりだけど、彼女はそうじゃない。

セックスはお互いに気持ちの良いものじゃないのかな? そんな不満を抱えたままの恋愛に疲れて来た。

だけど、長時間労働も結構身体には堪えている。
仕事終わりの夜は、雰囲気作りさえ面倒臭くなる時がある。
そんな事は彼女には言えない。
だって男だし、働くのは当然なんだと思うから。

もうすぐクリスマスだと言うのに、デートの予定は入っていない。
その日は朝から外回りだから、きっと帰りは終電になるだろう。
僕は寂しさを紛らわす為に、今日も電車でスマホをいじっている。
SNSで知り合った「ミサキ」さんとはかなり仲良くなっているつもりだ。
何故だろう?
随分昔から知り合いみたいな気がする。
僕は一度会ってみたくなった。
だからミサキさんに連絡を入れた。

『ミサキさん好みの素敵な飲み屋見つけたんです! 一緒に行きませんか? イングリッシュパブって行ったことありますか? 良かったらメッセください^_^ 教授より』

教授というハンドルネームは僕の中学時代のあだ名だった。
牛乳瓶眼鏡だったからついたニックネームだけど、今はコンタクトレンズに変えた。
髪型や洋服にも気を使うようになった。
それと同様に、ネットの世界は嘘だらけだから、僕は自分をうんと着飾っていた。

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