生、狭間、死

文字数 537文字

「死ねぇええええ!!!」
手元にあるゲーム機に向かって叫ぶ。
「バーカ!お前が死ねぇええ!!!」
ゲーム機から返ってくる友人の声に大声を上げて笑い合う。
僅差で僕が勝った。
「You Win」の文字にガッツポーズをとる。
「おい、もう1回しようぜ!」
悔しそうに友人が再戦を申し込む。
「しゃあねぇなぁ、今度もぶっ殺してやるよ」
「はぁ?こっちの台詞だし」

僕の部屋に洗濯物を片付けに来た母が顔をしかめて物言いたげな顔をする。
わかってるって!友達に死ねっていったらダメって言いたいんでしょ。まして、ぶっ殺すなんてもっての他だって。全く大人ってなんて石頭なんだろう。
僕は友達に死ねなんていってないんだよ。
友達が操るキャラに言ってるんだ。現実とゲームは違うの。現実とゲームの狭間での言葉遊びなんだって。いつか説明したけど、残念ながら母にはこの感覚がわからないらしい。

「You Lose」画面に浮かぶ文字が悔しくて、
「ね!もう1回!」友達にいう。
「ふふん、それで勝てるかな?」調子に乗る友達。
「Are You Ready?」画面に浮かぶ文字に答えてボタンを押す。

ライフ回復はできて当たり前で、
再戦の呼びかけが二度と来ない日を子供の僕は知らないだけだった。
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