第13話 みんな大好き焼肉食いに来たで。

文字数 1,565文字

ここんところちょっと固い話がつづいたから、今日はあまりややこしいこと考えんと食おうやないか、ちゅうわけでここは俺が若いころによく通ってた焼肉屋やねん。仕事帰りクタクタになった体に燃料ぶち込む店や。
わーい、久しぶりにお肉、お肉ですね♪ゴチになります。
ただな、焼肉いうんはこのエッセイ的にはあまり語ることが無いんや。
そうなんですか?焼肉って好きな人多いし、あれこれ言いたいことあるんじゃないかと思いましたけど。
せやかて焼肉は店を決めて席に着いたらあとは自由で自分勝手な食い物やんか。極レアに焼こうがカリカリに焼こうが、タレで食おうが塩で食おうが各人の自由や。それを俺なんかがあれこれ指図するような野暮はしたないで。誰でも好き勝手に焼いて食べられるんが焼肉のええとこやんか。
たしかにお肉もロースしか食べないってのもアリですし、内臓肉命のホルモン攻めだって自由ですから。それにあれこれ言われたくないですよね。でもそこはこの「毒舌グルメ」のために何か一言くらいは・・・
せやなあ・・ほな、これは別に正しい食い方とかそういうんちゃうで。まあひとつの参考や思て聞いてくれるか。
はい、ではよろしくお願いします。
ちょうど今、注文した肉が出てきたところやけどな。まず最初に焼くのはとりあえずタン塩いう人多いやろ。
はい、焼き網がきれいなうちにまずタン塩を焼くというのはひとつのセオリーになってますよね。
まあそれは確かに順当やと思うで。で、そのタン塩の焼き方についてや、俺の古い知人で焼肉王と呼ばれた、まさに命がけで焼肉食うとった男に教えてもろた方法を紹介するで。
命がけってちょっと大げさじゃないですか?
焼肉王は松坂牛で有名な三重県の人間でな、本当に焼肉が好きで一日一焼肉を長年実践しとったんや。当然やけど体にええわけあれへんは。やはり重度の糖尿病になって命がヤバいところまで行ったんやで。
うわ・・・マジで命かけてますね。
タン塩の焼き方にしても食べ方にしても各人の好みは色々やから好きにやればええんやけどな、焼肉王の焼き方は俺もすっかりハマってしもてん。よかったら試してみてくれ。
はい、ではタン塩お願いします。
まず普通にタンを網に乗せるんやけどな、よーく焼くにせよレアに焼くにせよ、みんな途中で肉をひっくり返すやろ?焼肉王に言わせるとこれはせっかくの美味しい肉汁を火の中に捨てる行為やねん。
え、じゃあひっくり返さないんですか?
こうやってタンを網に乗せたらすぐにおろしニンニクとネギをその上に適量乗せるんや。ここからは目をはなしたらあかんで。肉の表面に肉汁がしみ出してきておろしニンニクが溶け始めたら、その瞬間に箸で引き上げて食うんや。それ今や!
はいっ!よし・・・ぱくっと・・・!!!
・・・でや?
うわ・・ウマ・・これめちゃくちゃに美味しいです。私もこの食べ方ハマりそう。
そうか、それはよかった。まあ別にこの焼き方やないとあかんとまでは言わんけど、試した価値はあったな。後の肉は自由に焼いて食うてくれ。
はい、いただきます。でもこの食べ方したらしばらく人に会えませんね。冨井先生なんか網でニンニクそのものを焼いて食べてるし、タレにもおろしニンニク入れてるし。
それもあるから昔から「焼肉を一緒に食べてる男女は出来てる」言われるんやな。
ああもう!そんな誤解を招くような発言しないでください。っていうか、もしかして私たちそういう風に見られてる??みなさん、違いますよ!Yは冨井先生の愛人とかそういうんじゃないですから。
心配すんな。俺はお前みたいな小娘には手えださへんからな。読者のみなさんもちゃんとわかっとるわい。
ううん・・・その言われ方もなんかカチンとくるなあ。ええい、もういい。とにかくお肉食べます
誤解されんの嫌なんちゃうんかい。ほんま乙女心は複雑やな。また次回!
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登場人物紹介

冨井春義:関西弁のおっさん。悪口担当だが最近ちょっと日和っているとの噂も。意外に気が小さいのかもしれない。

女子大生Y:某芸術系大学生。ツッコミ担当・・・だったはずが最近いいボケをかますようになった様子。

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