第9話 ロマンチスト
文字数 1,521文字
「あなたほどの人が何でこんなこそ泥紛いの事をしているんですか?」
白童子の意地なのか倒れること無く立ったまま俺に疑問をぶつけてくる。
「あっ!?
悪党に奪われた美術品を取り返す正義のヒーローじゃ無いか、格好いいだろ」
「結構真面目に聞いているんですけど」
「出会ったばかりの奴に多くを語るほど俺は友達がいない奴じゃ無いぜ」
一応槇村ともたまには一緒に飲みに行くし、それ以外でも二~三人は仕事の打ち上げで呑みに行く。
うん、決して寂しい変人じゃ無い。
「捻くれた大人ですね。
有望な後進に道を諭すのもヒーローなんじゃ無いんですか」
「よく口が回ることだ。
語ってやってもいいが、その代わり鬼道とかいうのを教えろよ」
俺の記憶なら鬼道とは女王卑弥呼が使っていたと言われる記録上日本最古の術。
確かその頃なら勾玉が流行っていたはず。
何があるなと勘が囁く。
「俺は・・・」
「僕は約束してませんよ」
「神を求めている」
「えっ神ですか・・・」
白童子はいい年した大人が何を言ってんだろうと、40を過ぎても売れるのを夢見るバンドマンを見る目を向けてくる。
「それが何で美術品の奪還に繋がるんですか?」
「美には神のメッセージが込められている。
女が美しい、料理が美しいは分かるだろ。生物の生存本能に直結しているからな。だがそうした生存本能に直結してなくても美しいと感じるものがある。
なぜだ?
それこそが神が創造物たる人に宛てたメッセージ。
そのメッセージを集めて読み解いて紡いでいけば神に到る」
人を作った神にとって人などゲームの中のNPCのような存在だろう。だがNPCに過ぎなくても意思が芽生えた以上は創造主を求めて止まないのは魂の欲求。
まあ大抵の奴はこれを聞いて笑うけどな。この歳になっても夢を笑われるのは辛いもんよ。
「神に到ってどうするんですか?」
なのに白童子は素朴な疑問を問い掛けてくる。
「お前浪漫が無いな。
この世界のどこかに隠れて俺達を見ている神を見つけ出してやるんだぜ。これ以上の浪漫がどこにあるかよ」
「あなた僕が出会ったことの無いスケールのロマンチストである事は分かりましたよ」
「ご理解ありがとう。
そんな神のメッセージの籠もった芸術品を盗んで神聖を穢し、あまつさえそれを闇の世界に隠蔽するなど許されることじゃない。
だから俺は奪い返し、光の世界に戻す」
「なるほどね。あなたがただの悪党でないことは分かりました」
白童子が呆れ果てた末に感歎したように言うと白童子を縛っていた縄が解けた。
「なに!?」
「間接の一つや二つ外す芸は僕だって持ってますよ」
「ぐっ」
しまったあの光る手に目を奪われすぎて他への警戒を怠った。
「今日の所はあなたの浪漫に免じて見逃してあげますよ。
それにこの美術品は元に戻してくれるんでしょ」
俺を脅すように念を押すように白童子は言う。
勾玉を猫糞しないなら良しとするということだろうな。
「おいおい何が見逃すだよ。鬼道のこと語れよ」
格好付けて立ち去ろうとする白童子を俺は呼び止める。
この俺が脅されたまま引っ込めるかっ、それに勝負は俺が勝った。
「あなたがもし僕のことを見付けられたら教えますよ」
「てめえ」
白童子は流される船が岸に近寄ったタイミングで岸に飛び移るのであった。
「くそっ」
船を放って追跡は出来ない、かといって船を停船させている内に白童子は闇に消えてしまうだろう。
悔しいが、美術品を守れたことで良しとするしかないか。
損切りが出来るのも大人の嗜みさ。
それに白童子への手掛かりが無いわけじゃないしな。
白童子の意地なのか倒れること無く立ったまま俺に疑問をぶつけてくる。
「あっ!?
悪党に奪われた美術品を取り返す正義のヒーローじゃ無いか、格好いいだろ」
「結構真面目に聞いているんですけど」
「出会ったばかりの奴に多くを語るほど俺は友達がいない奴じゃ無いぜ」
一応槇村ともたまには一緒に飲みに行くし、それ以外でも二~三人は仕事の打ち上げで呑みに行く。
うん、決して寂しい変人じゃ無い。
「捻くれた大人ですね。
有望な後進に道を諭すのもヒーローなんじゃ無いんですか」
「よく口が回ることだ。
語ってやってもいいが、その代わり鬼道とかいうのを教えろよ」
俺の記憶なら鬼道とは女王卑弥呼が使っていたと言われる記録上日本最古の術。
確かその頃なら勾玉が流行っていたはず。
何があるなと勘が囁く。
「俺は・・・」
「僕は約束してませんよ」
「神を求めている」
「えっ神ですか・・・」
白童子はいい年した大人が何を言ってんだろうと、40を過ぎても売れるのを夢見るバンドマンを見る目を向けてくる。
「それが何で美術品の奪還に繋がるんですか?」
「美には神のメッセージが込められている。
女が美しい、料理が美しいは分かるだろ。生物の生存本能に直結しているからな。だがそうした生存本能に直結してなくても美しいと感じるものがある。
なぜだ?
それこそが神が創造物たる人に宛てたメッセージ。
そのメッセージを集めて読み解いて紡いでいけば神に到る」
人を作った神にとって人などゲームの中のNPCのような存在だろう。だがNPCに過ぎなくても意思が芽生えた以上は創造主を求めて止まないのは魂の欲求。
まあ大抵の奴はこれを聞いて笑うけどな。この歳になっても夢を笑われるのは辛いもんよ。
「神に到ってどうするんですか?」
なのに白童子は素朴な疑問を問い掛けてくる。
「お前浪漫が無いな。
この世界のどこかに隠れて俺達を見ている神を見つけ出してやるんだぜ。これ以上の浪漫がどこにあるかよ」
「あなた僕が出会ったことの無いスケールのロマンチストである事は分かりましたよ」
「ご理解ありがとう。
そんな神のメッセージの籠もった芸術品を盗んで神聖を穢し、あまつさえそれを闇の世界に隠蔽するなど許されることじゃない。
だから俺は奪い返し、光の世界に戻す」
「なるほどね。あなたがただの悪党でないことは分かりました」
白童子が呆れ果てた末に感歎したように言うと白童子を縛っていた縄が解けた。
「なに!?」
「間接の一つや二つ外す芸は僕だって持ってますよ」
「ぐっ」
しまったあの光る手に目を奪われすぎて他への警戒を怠った。
「今日の所はあなたの浪漫に免じて見逃してあげますよ。
それにこの美術品は元に戻してくれるんでしょ」
俺を脅すように念を押すように白童子は言う。
勾玉を猫糞しないなら良しとするということだろうな。
「おいおい何が見逃すだよ。鬼道のこと語れよ」
格好付けて立ち去ろうとする白童子を俺は呼び止める。
この俺が脅されたまま引っ込めるかっ、それに勝負は俺が勝った。
「あなたがもし僕のことを見付けられたら教えますよ」
「てめえ」
白童子は流される船が岸に近寄ったタイミングで岸に飛び移るのであった。
「くそっ」
船を放って追跡は出来ない、かといって船を停船させている内に白童子は闇に消えてしまうだろう。
悔しいが、美術品を守れたことで良しとするしかないか。
損切りが出来るのも大人の嗜みさ。
それに白童子への手掛かりが無いわけじゃないしな。