かしまし幽姫と学校の怪談:其ノ八

文字数 1,789文字


 無様に呑み込まれる巨体。
 っていうか、どうしていきなり、こんな大きい落とし穴?
「「「イェッサー! 任務遂行であります!」」」
 二宮さん達だったぁぁぁーーーーッ!
 〈二宮金次郎〉と〈てけてけ〉と〈人体模型〉が、規律然とした敬礼を上空の鬼軍曹へと向けているーーーーッ!
 まさかの〈お岩部隊〉が伏兵と()きたーーーーッ!
「よし、フェイズ(ツー)へ移れ」
「「「イェッサー!」」」
 何よ? フェイズ(ツー)って?
 そして何故、平然と指揮権発揮しているのよ? お岩ちゃん?
 セコセコと手際よく〝何か〟を設置していく二宮さん達。
 そして──「設置完了!」「安全確認!」「点火!」──チュドォォォーーーーン!
「ギィィィヤァァァアアーーーーッ?」
 プラスチック爆弾だったぁぁぁーーーーッ!
 まさかのプラスチック爆弾だったぁぁぁーーーーッ!
 到底〝妖怪退治〟らしからぬ方法で制裁されたぁぁぁーーーーッ!
「休んでんじゃねぇーーッ! フェイズ(スリー)だぁぁぁーーーーッ!」
「「「イエッサー!」」」
 ……何だっけ? この小説?
 ちょっと表紙を確認──あ、やっぱ『かしまし幽姫』だ。
 っていうか、無秩序(カオス)過ぎないッ?
 軽く〈FSFシリーズ〉越えてないッ?
 作者さんッ!
「「「ファ ● コンウォーズが出ぇぇぇるぞッ! 母ちゃん達には内緒だぞッ! のめり込めッ! のめり込めッ! のめり込めッ! のめり込めッ!」」」
 嗚呼、すっかり士気高揚の鼓舞ソングと定着しているわ……。
 で、何かしら? アレ?
 すっごく見覚えのある麻袋をセコセコ運んで来てるんだけど?
 うん、土嚢(どのう)見紛(みまが)う大きいヤツ。
「「「流し込めッ! 流し込めッ! 流し込めッ! 流し込めッ!」」」
 やっぱり片栗粉だったーーーーッ!
 ドバドバ注ぎ始めたーーーーッ!
「そ~れ ♪  流し込め★ 流し込め★ 流し込め★ 流し込め★ タコも入れちゃう? 入れちゃいます? クスクス ♪ 」
 一人(ひとり)混じってる!
 いつの間にか、余計なゲスの極みオバケが混じってる!
「ちょ……っ? 待て! オマエら、待……ケホケホゴホゴホ……待て……ゴホッゴホッゴホッ……待てと言うにーーーーッ!」
 濛々(もうもう)と広がる白煙の奥から、懇願(こんがん)とも憤慨(ふんがい)とも取れる怒号が聞こえた。
 粉は()まない。
「よォォォっし! 次、仕上げのフェイズ(フォー)だァァァーーーーッ!」
「「「「イエッサー!」」」」
 何を馴染んで敬礼してるのよ? 色情霊?
「玉子!」「ネギ!」「揚げ玉!」「そして、イカ★ クスクス ♪ 」
「「「「流し込めーーーーッ!」」」」
「ギャアァァァーーーーッ?」
 イカ玉だァァァーーーーッ!
 イカ玉作る気だーーーーッ!
 お岩部隊ーーーーッ?
「トドメだ! お菊!」
「……はい?」
腑抜(ふぬ)けてんじゃねえ! トドメのフェイズ(ファイブ)だろうが!」
「いや、知らないし。って言うか、()も当然とばかりに言わないでくれるかな? 初耳なんですけど? 作戦指示なんか聞いてないんですけど?」
「バカヤロウ!」
「きゃん!」
 ぶたれた!
 渾身ビンタに、お尻ぶたれた!
「指示なんかするワケ無ぇだろ! そもそも作戦プランなんか無ぇ! アタシは小細工なんざ嫌いだ!」
 スゴく奇々怪々な主張をし出したわ。
 スゴく支離滅裂な論を言い出したわ。
 この独眼竜。
「作戦プラン無いなら出来るわけないよねッ? 初耳で当然よねッ?」
「アイツ等を見ろーーーーッ!」と指し示すのは、眼下の二宮さん達。「作戦なんか無くても自発的に遂行してんだろーが! アタシが『フェイズ!』って言っただけで汲んでるだろーが! それが子分(・・)ってモンだ!」
 ……だから、どうして?
「いいか! 作戦に必要なのは作戦じゃねえ! 指揮官を重んばかる尊度(そんたく)だ!」
 違うよ。
 作戦だよ。
「だいたいオマエに出来る事なんか、たかが知れてるだろうが!」
「えへ ♪  可愛いお菊ちゃん撮影会?」
()るぞ」
 ギンッと殺気立ったわ。
 何よ!
 可愛く小首傾げただけじゃない!
「あの〈投棄井戸〉だろうが!」
「誰が投棄(・・)したのかなッ! ドバドバと片栗粉を投棄したのは誰かなッ?」
「いいから、さっさとマントル(・・・・)へ繋げろーーッ!」
 ああ、そういう事(・・・・・)か。
 渋々と従ったわ……釈然とはしないけど。

 
 ()くして、数分後には〈超特大ギガ盛りイカ玉〉の完成です!
 以上『かしましクッキング』でしたーー★
 えへ ♪

 ………………。

 食べないからね?

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登場人物紹介

名前:お菊/更科菊花

(Okiku/Sarashina Kikka)


性格:

偏執的な皿フェチ。

温厚柔和な常識派ではあるものの、自分が可愛い事を自覚に武器とするしたたかさなブリッコ気質も内包している。


特徴:

古典怪談『番町皿屋敷/播州皿屋敷』に登場する日本三大幽霊〝お菊さん〟御本人。

理由あって閻魔大王から肉体を与えてもらい〝更科菊花〟を名乗って〝人間〟として平穏な日常を送っている。

温厚柔和な常識派で普段は腐れ縁の〝お岩〟〝お露〟に振り回されるツッコミ役ながらも、ひとたび〝お皿〟が絡むと異常な偏執愛が暴走して見境が無くなるため、実は三人の中で〝一番アブナイやつ〟かもしれない。

名前:お岩/東海林壱和

(Oiwa/Syouji Iwa)


性格:

実質的に三人組のリーダー格。

大雑把を通り越したガサツさにあり、思考力は放棄しているに近い。

あれこれと考えるよりも感情任せに即行動を起こす後先考えない豪胆さからトラブルメーカーと化しているが、反面、根は人情味に篤い姉御肌。


特徴:

古典怪談『東海道四谷怪談』に登場する日本三大幽霊〝お岩さん〟御本人。

理由あって閻魔大王から肉体を与えてもらい〝東海林壱和〟を名乗って〝人間〟として平穏な日常を送っている。

とにかく大雑把な行動派で、後先考えないトラブルメーカーとして〝お菊〟〝お露〟を振り回す。

実践的な運動能力や潜在霊力は三人組の中でも一番高く、戦闘などの物騒な局面は彼女の独壇場とも言える。

名前:お露/灯牡丹露奈

(Otuyu/Hibotan Tuyuna)



性格:

稀に見るしたたかさで他人を玩具に愉しむ小悪魔的な性格。

また同時に〝性〟に対しては非常に貪欲。

抜け目のなさでも侮れない。

三人組に於いては参謀的知恵袋のポジションでもある。



特徴:

古典怪談『牡丹灯籠』に登場する日本三大幽霊〝お露さん〟御本人。

理由あって閻魔大王から肉体を与えてもらい〝緋牡丹露奈〟を名乗って〝人間〟として平穏な日常を送っている。

他人の困惑を玩具とするしたたかさを秘めており、常に「クスクス」と悪戯心を隠し含み笑う。

また、根っから〝性〟に対して貪欲であり、お菊からは〝色情霊:ビッチ〟とも蔑称されている。

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