七 ハートブレイク

文字数 268文字

亡骸の片付けが終わり、
スーツの男は一礼して玄関に向かった。
貴女はソファに身を委ねると、
そっと目を閉じた。

血と肉の匂いは消え、
ジャスミンの甘いインセンスが香る。
それは毛皮に纏わりつき、決して振り払えない。
「僕は愛さなかったのに。」
アイツは愛したのか。
「僕はあんなにも愛していたのに。」
怒りに身を震わせると、
洗い立ての毛皮はふわふわと揺れた。

眠りについた唇は、オイルに塗れているように
桃色にヌラヌラ輝いている。
僕は身体を伸ばして、唇に鼻を付けた。

うさぎの寿命は短い。
貴女よりずっとずっと。
僕は意を決して、ワンピースから覗く左胸に噛みついた。


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