酔っぱらいの話*会社のおじさん編

文字数 3,619文字

先日、自分の「酔っぱらい黒歴史」を書いていて、なんだか本当にダメダメなOL時代だったなぁ…と反省しました。

海外の「酔っぱらい」を取り巻く状況はよく分からないのですが…日本人は「酔っぱらい」に寛容だと思います。

たいしてお酒が強くない体質にもかかわらず、酒好き、宴会好きの民族。「酒の席は無礼講」なんて悪しき習慣もあるのですが、一般的に酔っぱらっている人を「仕方ない」と大目に見てくれている人が多い気がする。

それよか、酔っぱらっての失敗談を競う、なんてアホな人たちも居ます。(私ですかね?)
いや、競っているワケじゃないんですが…誰かの酔っぱらい話を聞くと、わかる!私もやったわー、とついつい同調したくなります。
会社の忘年会の次の日とか、そんな酔っぱらいのナゾの自慢大会?が繰り広げられることも、しばしば。

「いや、1軒目の店出てから記憶ないわ」
「オレ、京浜東北線2往復した」
「起きたら電車の車庫だった」

なんていう会話が翌朝の挨拶代わりです。なんなの?日本のサラリーマン。いや、よう次の日来れたわ、あっぱれ!
(海外だと二日酔いでフツーにシックリーブ取ったりしますからね!)

いやいや…でも、そんな酔っぱらいを甘やかすから、自分の酒量も考えずに何軒もハシゴしたり、上司や先輩が無理にお酒呑ませたりって風潮も根強く残っていたのかもしれませんね。

大変だったコロナ期の中で、いくつかの悪習を断ち切ったといえば、この「付き合い呑み」が無くなったことでしょう。

若い頃に無茶な呑み方したからこそ言えるのですが…本当に美味しいお酒って「呑みたい人」と「呑みたい時」に「呑みたいお酒」を楽しむことだと思います。

行きたくもない宴会や付き合い呑み、接待。
若い頃は「断ったら次に誘ってもらえなくなる」「翌日の話題に入れなくなる」とか「イイ出会いがあるかも・・・」など、色々な邪念に流されて、たいして行きたくもない呑み会に参加して、時間とお金を浪費していました。
今思うと、ホントもったいないことしたなぁ。

家族持ちの人も「部で自分だけ出席しないワケには」「酒好きな上司に付き合っておいた方が点数稼げるかも」などなど、様々な思惑があって、貴重な家族との時間とお金を手放してしまう。

でも、コロナ前から、すでに若い世代の意識が変わってきてましたよね。
「今の若者は付き合い悪い」とか言われても、そんなの気にすることはありません。

確かに仕事をする上でのチームワーク等は考慮するべき時もありますが、基本、仕事時間外はプライベートタイムです。
まさに望まない「時間外労働」はしなくてもイイのよ、ね、ナナミン。


━━ちょっと話が逸れましたが。
そんな「酔っぱらいに甘い」日本において、会社おじさま達の黒歴史を2つほど。
1人目は、私と同じ流血モノです.笑

昔、派遣社員として働いていた会社は、面白いキャラクターが揃っていました。
新卒で最初に就職した会社は、上場企業で伝統ある会社。それゆえ、優秀で性格も温厚な人が多く、とても居心地よく働かせてもらいました。

それに対して…というと語弊がありますが、この派遣されていた会社は本社が地方にあり、なんとも地方色豊かな(方言が聞き取れない)、なかなかユニークな人材が多く・・・ちょっとカオス的でした。(ほめてます)


隣の課のA課長は、ひょろりとしたダンディタイプ。例えていうと・・・柴田恭兵をもっとダメダメにした感じ(失礼)
なんでもテキトーなので、支店長から部下、女性職員にすこぶる不評なのですが・・・なぜか?取引先や業者さんからは結構、愛されてる不思議な課長でした。

たぶん、そのテキトーさが、取引先・業者さんからしたら付き合い安かったのか、ダメっぽいところが逆に母性本能をくすぐったのか(誰の)

私がよく覚えている彼のエピソードは・・・背広の内側に刺繍してある名前がA課長の苗字と全く違っていて、皆に「どこかの呑み屋で間違えたんじゃないか?」と疑われたことがありました。
それに対して彼が、「あ、それね。義兄にもらったんだよね~」とニコニコ笑いながら答えていて、なんだかプライドとかエゴとか無縁な人で生きやすそうだな、と思ったものです。(知らんけど)


そのA課長も無類のお酒好きで、何かと理由をつけては取引先や業者さんに会いに行っては毎晩呑み歩いてるようでした。(たぶん、支店長の居る事務所に居たくない)

ある朝、A課長が始業時間になっても来ない、連絡がつかない、と隣の課のお局様的女性社員が甲高い声で騒いでいました。

まあ、珍しいことでもなかったので、他の課の課長や社員も、ふーん(どっかでサボってんじゃないの?)的な雰囲気。

お局様はプンプン怒りながら客先に「うちのAと連絡が取れなくて。はい、来たらすぐにご連絡させますわ!」と謝っていました。

そんな最中、当のA課長がエレベーターから降りて事務所内に現われたのです。
「まあ、A課長、いったい何処に・・・って。どうしたんですか!?」
お局様のキンキン声が1オクターブ高くなりました。

振り向くと…額やアゴから血を流し、髪はボサボサ、背広もヨレヨレに汚れた格好でフロアに立つA課長。よく見ると、眼鏡のレンズも片方が入っていません。

「いやぁ…よく覚えてないんだけど」
と、酔っぱらいの定型文で始まった解説は、ざっとこんな感じでした。

昨晩、かなり遅くまで呑み歩き、呑み屋付近の公園で休んでいるうちに、ベンチで寝てしまった。
朝起きると、ベンチの下(地面で)で寝ていて、体中が痛い。カバンも背広の内ポケットに入れていた財布も携帯も無い。どうやら盗まれたようだった。

仕方ないので、近くの地下鉄の駅まで歩いて行き、駅員さんに会社の最寄り駅までの運賃を貸して欲しい、と声をかけた。
改札隣の窓口から顔を出した駅員さんが、ビックリして目を丸くしている。
「どうしたんですか?何があったんですか!?」

そこで初めて、自分が殴られて流血しており、眼鏡が壊され、背広がヨレヨレなのに気づいたという。

「いやあ、全然覚えてないんだよねぇ。駅員さんに言われるまで痛くもなかったんだ。不思議だよねぇ」

レンズのない眼鏡を取りながら、ははは、と笑うA課長をフロア中の社員が呆然と眺めていました。
なんと声をかけたらよいものか。とりあえず、命があって良かった。
(としか・・・言葉が見つからない)

「んもう、何やってんですか!A課長!取引先に早く電話入れてください!」
という、ヒステリックなお局様の声で、ようやく現実に引き戻された感じでした。


そのA課長と対照的だったのはB課長。
柔道でもしていたかのような、がっしりとした体躯に浅黒く日焼けした彼は、こち亀の両さんを1.5倍格好よくした感じでした。

大らかで明るくて元気な彼は上司や部下、取引先や業者さんにも好かれているようで、毎晩のように何処からか誘われて接待や呑みに出かけていました。

ある時、課員と供に呑みに誘ってもらって入った居酒屋で、いつもの「酔っぱらい失敗談」の自慢大会が始まったのです。
ここ最近では流血のA課長がぶっちぎりの1位でしたが…「いや、待て。俺もこの前スゴイのやったぞ」と鼻息荒いB課長。

あの流血を上回るには・・・救急搬送とか入院じゃないと?と思っていましたが、彼の暴露エピソードはA課長と甲乙つけがたいダメっぷりでした。

ある夜、ぐでんぐでんに酔っぱらっても、何とか家に辿り着いたB課長。

その頃、彼が住んでいた家は同じ敷地に同じ間取りの家が2軒が繋がっているタイプ。
その門を開けて敷地に入り、ドアを開けると家の中はすでに真っ暗。妻や子供はみんな寝ているようだ。
起こさないように、そっとバスルームに入り、シャワーを浴びようと服を脱ぎだしたところで、誰かが自分の名前を呼んでいる。

ハッ、と気づくと目の前の暗闇の中、懐中電灯を持ったお隣さんの姿が…。

なんと彼は、門を開けた時点で自分の家に入ったと勘違いし、暗闇の中でバスルームと思ったのは、同じ敷地内のお隣さん家のエアコンの室外機前。

そこで服を脱ぎ、ほぼ全裸の状態で立っていた彼を見つけたのは、深夜に外で不審な物音がするため、懐中電灯とバットを持って出てきたお隣さんでした。

「お隣さん…ビックリしたでしょうね」
「あの驚いた顔、一生忘れないね」
「(そりゃそうでしょうよ)・・・パンツも脱いでたんですか?」
「それがさ、かろうじてパンツは履いてたの。俺の理性のおかげで」
「・・・・・・はぁ。(マヂ何言ってんの、この人?)」
「さらに俺のエライところはさぁ、服から靴下まで、きちんと畳んで室外機の上に置いてたの。凄くない?」

B課長は豪快な見かけとは違って、几帳面で繊細なところがありました。机の上はいつもきちんと整理されていて、女性社員は皆、感心していたものです。

けれど…この全裸未遂事件で、彼の株が急落したことは言うまでもありません。

━━ホント、酔っぱらいって迷惑ですよね!



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