第21話 とつぜんの襲来

文字数 1,806文字


 森のなかの僕のお屋敷。
 僕がダンジョンでひろった小銭ちゃんを使って建てた夢のマイハウス……。
 それが今、モンスターたちの襲撃を受けてる!

 空を覆いつくすガーゴイル。たまにドラゴン。
 これは、マズイぞ。

「アコギーだね?」
「そうだろうな。かーくんを死刑にしようと思ったのにうまくいかなかったから、ちょくせつ殺しに来たんだ」
「くうっ。留守を狙ってくるとは卑怯な」
「行くぞ。かーくん」
「うん!」

 僕らは猫車をとびだした。ぽよぽよの大群がついてくる。
 ああっ! そうだった。今は足枷(ぽよぽよ)たちがいるんだったー!
 ど、どうしよう。ぽよぽよは最弱モンスターだよ? つれてったら、絶対、足手まとい……いや、もとい。可愛いだけだよね?

「あの……パーティーは四人でしか組めないから、みんなは猫車で待っててね?」
「キュイ……」
「キュイ……」
「キュウ……」

 ああっ、ぽよぽよたちのガッカリした顔が痛い。つき刺さる。

「あっ、いや、いいよ。ついてきても……そのかわり、みんなはうしろで見ててね」
「キュイ!」
「キュイ!」
「キュイキュイ!」

 うう……なんで敵襲からわが家を守るのに、こんなたくさんのウィークポイントを背負ってくハメに?

 僕らは屋敷に入っていく。まずは庭だ。モンスターたちの集団は見えない。

「あれ? モンスターいないね。なかに入ったかな?」
「まあ、かーくんを探してるんだろうし」

 それもそうか。
 エントランスホールのある表口に近づいていく。

「あっ! バスカー! ヴィル! みんな!」
「ガウガウ!」
「ガウー」

 地獄じゃなく僕んちの番犬になった地獄の番犬(ややこしい)たちが誇らしげに待ってた。そのかたわらには、目をまわしたガーゴイルが山積みになってる。

「おおっ、さすがだね。みんな、えらいぞ」
「アオーン!」

 前庭はバスカーたちがいれば問題ないね。
 裏庭には竜くんがいる。たぶん、そっちは竜くんが守ってくれてるだろう。
 けど、屋敷のなかはどうなってるのかな? なかには、ミニコがいるけど。

「おーい、ミニコー。大丈夫?」

 エントランスホールは静か。とくに荒らされてもないし、いつもの風景だ。もしかして、バスカーや竜くんたちがモンスターの侵入をふせいでくれたからかな?

「ふつうだね」
「ふつうだな」
「キュイキュイ」
「キュイキュウ」
「キュウ……」

 うーん。ぽよぽよがいっぱいいるから、ぽよちゃんの声がどれか、わかりづらいな。

 エントランスホールをよこぎり、奥の廊下へふみだした。この廊下を進むと、食堂があり、遊戯場があり、浴場とトイレと、厨房がある。けっこう広いよ。ダンジョンだったら迷うやつ。

「ミニコはキッチンかなぁ?」
「おいおい、かーくん。用心しろよ。なんか出るかもしれないだろ?」
「うちの家だよ? 何が出るの?」
「何がって——」


 アコギーなガーゴイルが現れた!


「って、出た!」
「出るだろ。屋敷包囲されてたろ?」
「そうだけど」


 ガーゴイルの先制攻撃!
 ガーゴイルが襲いかかってきた。ぽよぽよAは失神した。ぽよぽよたちの気合がさがった。


 なんか、テロップがわけわからんこと言ってる。
 いや、ガーゴイルはたしかに、こっちにむかって来たよ? ぽよぽよくんが一匹、コロンところがったよ? だけど、ぽよぽよたちの気合ってなんだ?

「ん? なんか、やる気が出ない」
「……かーくん。おまえのテンション、さがってるぞ?」
「えっ?」

 テンションってのは、ぽよぽよが使うスキルの一つだ。テンションがあがると、攻撃力が上昇する。最大二百倍!
 なんだけど……今、テンションのスキル、使ってなかったような? てか、僕はぽよぽよじゃないぞ? まあ、心はぽよぽよらしいんだけど。

「なんで?」

 すると、テロップが説明してくれた。親切。


 ぽよぽよは一定数以上群れると、群集心理を形成し、オートテンション状態となります。仲間が傷つくとテンションがさがり、逆に仲間が奮起(ふんき)するとテンションがあがります。


 なるほど。一匹が気絶しちゃったから、みんなテンションさがったのか。

「……でも、僕のテンションもさがってるんだけど?」


 かーくんさんは、ぽよぽよたちに仲間だと思われています。


 むう。心がぽよぽよだからなのか? 人間族じゃないのか?

「ど、どうしよう。兄ちゃん。僕、ぽよぽよたちと一蓮托生(いちれんたくしょう)だよ!」
「ハハハ」
「ハハハじゃない!」

 これはもう、テンションがさがりきる前に戦闘終わらせないと!
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