第2話 神隠し

文字数 8,642文字

 いつの間にか寝ていて朝になっていた。少女のほうが早く起きている。
 どこに行ったのか探すと、台所にいて朝ご飯を作ろうとしてくれているみたいだ。
「おはよう、朝ごはん作ってくれるの?」
「お早うございます。昨日夜ご飯を作ってもらったので朝ご飯は私が作らせてもらいます」
「ありがとう!」
「材料はどこですか」
「冷蔵庫にあるよ」
「れいぞうこ?」
「そっか、冷蔵庫は明治にはないか・・・食べ物の収納庫のことだよ、その収納庫に食べ物を入れたら、冷やしたり、凍らしたりできるよ」
「そんな便利なものもあるんですか!?」
 少女は冷蔵庫を開いて覗くと、興味深そうに中を見渡した。
「涼しい・・・これにどんな効果が?」
「食べ物が長持ちするんだよ」
「え!これはすごい装置ですね!後、たくさん食料があるのですね、改めて見ると見たことない食材ばかりです」
 そうか、時代が違うほど食材も違うのか。
 少女は冷蔵庫からほうれん草と味噌と白身魚を取り出した。
「炭はどこに・・・」
「炭!?炭ってあの炭だよね?」
「はい、火を起こしたいです」
「あーそうゆうことね、火はこのつまみを捻ったら出るよ」
「!?すごい!今の時代は便利ですね!私がいた時は炭で火をつけなければいけなかったので」
「大変だね」
「そうかもしれませんね」
 すこし微笑んで少女はそう言った。
「麦米はどこにありますか?」
「麦米?お米ならあるけど」
「お米!?贅沢ですね。もしかしてこの時代では白米が普通ですか?昨日はおもてなしで特別に白米を出してくださったと思っていたのですが・・・」
「今では白米を普通に食べるよ」
「そうなのですね・・・」
 少女は米を研いで鍋で米を炊いた。
 後で少女に炊飯器の使い方を教えてあげよう。きっと炊飯器も教えたら驚くだろう。
 色々明治時代と現代とはギャップがあったものの少女は上手にご飯を作った。
 少女が作ってくれた料理はとても質素で、米に味噌汁、焼いた白身魚といった内容だった。
「いただきます・・・うん、うまい!」
 俺は味噌汁を飲んだ。
「それはよかったです」
 メニューは質素であったがそれでも美味しかった。
 ご飯食べ終わった後、少女がここに来る前に何をしていたのかを聞いた。
「夕方に神社付近の井戸で、水を汲んでいました」
「それでいつの間にか道端に居たと」
「後ここに来る間少しだけふわふわした空間にいました」
「ふわふわした空間?」
「言葉に言い表しづらい空間なのですよ・・・」
「この現象が起こる予兆みたいなやつか」
「多分そうですね」
「自分の家の近くにいたの?」
「そうですね・・・実は私が居た神社の娘なのですよ」
「そうなんだ!それで神社の近くに居たのね」
「そうです」
「なるほどね、とりあえず君が居た神社に行ってみる?」
「そうですね、そうしましょう」
「わかった」
 今のところ、この現象を解く糸口が何も見つからないので、とりあえずこの子が居た所に行くことにした。
「いいんですか?こんなに良くしてもらって」
 少女は申し訳なさそうに言った。
「ここまで聞いたら最後まで付き合うよ」
「ありがとうございます!」
 少女の顔は最初会った頃より明るくなっていた。
「食器洗い手伝いますね」
「おー助かる」
 二人で皿洗いをした。その後昨日洗濯したものを干すのも少女に手伝ってもらった。
クリーニング
「ただいまー」
 洗濯物を干していたら母親が帰ってきた。
「なに友達って女の子?!なら最初からいってよー」
 やっぱり勘違いしてそうだ。女の子が道端にひとりで体育座りしていたのを見て話しかけたら、家出したと言っていて、ここで一人夜通し居させるのは可哀想だと思ったから泊めさせてあげたということにして、それをお母さんに説明した。
「なるほどねー」
 まだ勘違いしてそうだ。
「こんにちは、名前は何ていうの?」
 母が少女に話しかけた。
 そういえばこの子の名前聞くのを忘れていたな・・俺の名前も言ってないし。
「はじめまして、赤松香織といいます、お邪魔しています」
「どこからきたの?」
「三浦から来ました」
「下の方ね」
「はい」
「気持ちが落ち着くまでここに居ていいからね」
「本当にありがとうございます」
 なんとか誤魔化せたみたいだ。
 母親は少女と話した後、少し居間で休んで、すぐに家を出ようとしていた。
 あれ、帰ってきてもう仕事しに行くのか?
「もう行くの?」
「うん、最近は特に忙しくてねーもう行かなきゃいけないよ。家と香織ちゃんはまかしたよ、客間使っていいからね」
「わかった・・・・気をつけて行ってきてね、いってらっしゃい」
「いってきます」
 母親は研究所に住み込みで仕事をしているのでたまにしか家にいない。
 結局二人きりになってしまった。
「そういえば俺の名前を言ってなかったね、平賀湊っていうよ、湊って呼んでね」
「わかりました、わたしは香織でいいですよ」
「香織ちゃんね、あとそんなに固くならなくていいよ」
「はい」
「まぁ・・無理にとは言わないよ」
「頑張ります・・・」
 敬語はちょっと固い感じがあって違和感があるけど・・まあいいか。今日は休日で学校なくて用事もないからこれから神社行こうと思う。その前に香織ちゃんの服をどうしようかな。
「これから神社に行くけど、服どうする?昨日の着物また着る?」
「着物で行こうと思います」
「わかった」
「神社は三崎のどこら辺にあるの?」
「ちょっと説明しにくいですね」
「神社の名前は?」
「鏡心神社です」
 スマホの地図アプリで神社の場所を検索した。神社はここから南の海側にあるらしいが、そこまでまず手前まで電車で行って少し歩く。
「神社の場所はわかったよ、三浦までは電車で行ってそこから鏡心神社までは歩きだな」
「でんしゃ?」
 そうか電車も知らないのか、明治時代は確か汽車で移動していたんだっけ?
「電車は乗り物で、すごく画期的なものだよ、乗ってみたら驚くかも」
「なるほど・・・」
 香織ちゃんは少し困惑している。
「電車に乗る前に行きたいたいところがあるけど、いいかな?」
「いいですよ」
 外に出る支度をして、家から徒歩十五分ほどかかる最寄りの駅に向かうが、クリーニング屋に行かなければいけない。クリーニング屋は駅を超えた所にある。二人はゆっくりと緩やかな坂を降りていく。香織ちゃんは辺りを見回しながら歩いており、通り道に新しい物があるので気になっているのだろう。
「ここに来た時から気になっていたのですが、ものすごい速さで動く物体は何ですか?湊さんと会う前に当たりそうになって・・・」
「え、大丈夫?怪我してない?」
「怪我はしてないです」
「良かった」
 下手した香織ちゃんは車に轢かれてたってことか・・
「それは車といって一種の交通手段だよ、車は原理を説明するのは難しいんだけど、これに乗れば大体の所は早く移動できる乗り物だよ」
「成る程、誰でも早く遠くに行けるのは本当に便利ですね、でも車には気をつけます」
「本当に危ないからね・・・そうだ、基本的な交通のこと教えるよ」
 歩きながらある程度の交通常識を教えた。これを機に香織ちゃんが今の時代で生きるためには今の時代に慣れてもらう必要があると思った。少しずつ今の時代の常識を覚えてもらって、この時代に慣れてくれればいいな。
「これはなんですか?」
「これは自動販売機といってお金を入れてボタンを押すと飲み物が出でくるんだ」
 ピッ
「ほら、あげるよ」
「ありがとうございます・・凄い機械ですね」
 香織ちゃんは飲もうとしているが、開け方がわからなそうにしていた。
「それはボトルって容器で回したら開くよ」
「なるほど、おもしろいつくりですね」
 そうか明治にボトルはないんだな・・・
 当たり前だが明治と令和ではまったく違うので時代のギャップをとても感じる。そして、クリーニング屋に行く途中にある、わずかなお店を簡単に紹介した。
 そうこうしているうちにクリーニング屋に着き、汚れた制服を出した。
 その後最寄りの駅に向かった。最寄りの駅は小さくて閑散としている。香織ちゃんはもちろんICカードを持っていないので切符を買ってあげた。
「「まもなくー三浦行きの電車が参ります、黄色い点線ブロックまでお下がりください」」
「これは、汽車みたいな感じですか?」
「そうだね、電車は汽車が進化したようなもので、これは電気で動くんだよ」
「汽車が進化したらこうなるのですね、こちらの時代ではまだ汽車が革命的だと言われたばかりだったのに・・」
 香織ちゃんは興味津々に電車内を見回していた。
「わ!」
 電車が走り出した瞬間、香織ちゃんが倒れそうになっているのを俺は咄嗟に体を支えた。
 その時腕に胸が当たってしまった、申し訳ないと思いつつも、少し幸運だなとも思ってしまった。
「大丈夫?」
「大丈夫です、ありがとうございます」
 香織ちゃんは少し顔を赤らめていた。
 互いに少しぎこちない空気になった。
 そんな中電車は暑い快晴の下快く走っている。
 そして三崎海岸駅に着いた。駅の目の前に魚屋などの店が少しある。
 ここも明治時代からかなり変わっているのだろうか?
「ここってどこですか?」
「三浦海岸近くの駅だよ」
「三浦海岸ですか、ここは昔なにがありましたか?」
「いやー駅があるというくらいしかわからないなぁ」
「そうですか・・・明治にここら辺には駅なんて無かったですからね、ここが全く知らない場所に感じます」
「そうだよね・・・・」
 相当ここも景色が変わっているのだろう。昔の景色ももう残っていない、それは悲しいのだろうか。香織ちゃんの表情からは何も感じられなかった。
 砂浜沿いに歩いていって、少しした所にあるらしい。
 あいかわらず日差しが強く暑い、だが海沿いを歩くと潮風が吹いていて少し涼しく感じる。
 海沿いから住宅街の街路路に入って少し歩いたら鏡心神社が見えた。まずは参拝しなければならない。お賽銭を入れて、二礼二拍手一礼をした。鏡心神社はおそらく一般的な大きさで、神社内は静かで、神妙な雰囲気だ。香織ちゃんは神社を見渡した。
「すこし大きくなっている・・・」
 香織ちゃんの表情はすこし良くなっていた。
「へーでかくなったんだね」
「今現在まで残っていて、さらに立派になってありがたいことですよ」
「それはよかったね」
 さすがに香織ちゃんの時代の神社より新しくなっていたらしい。新しくなった神社を見てショックを受けると思ったが、案外ポジティブで少し安心した。
「神主はお守りが売っている場所に居るかな」
「多分そうだと思います」
・・・・・・・・・・・・・
「神主さんを呼んでこようか?」
「・・・はい、お願いします」
「すみませーん」
 俺は売店の人に声をかけた。
「はーい」
「神主さんはいらっしゃいますか?」
「いらっしゃいますよ、何か御用ですか?」
「ちょっと神主さんに話したいことがありまして」
「?・・・わかりました、呼びますね、少々お待ちください」
 いきなり尋ねたものだから少し怪しまれた。
 神主さんが出てきた。
「お待たせしました、ご用件は何でしょうか」
 ・・・・・・・・・・・・
 香織ちゃんは神主さんと話すのに消極的だ。
「俺が話そうか?・・・」
 香織ちゃんに小声でそう聞いた。
「大丈夫です・・・いきなり尋ねてすみません、信じてもらえないかと思いますが、私はここの先代の神主の娘です。たいむすりっぷしてきました。」
「本当・・ですか?」
「本当です、私の名前は赤松香織、父の名前は赤松義雄です」
 神主は驚いた顔をした。
「確かに苗字は赤松ですけど・・とりあえず2人とも中へどうぞ」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
 神社のすぐ近くにある家は瓦屋根の家で大きく、中は座敷だ。俺たちは客間に案内された。
「そこへお座りいただいて、少々お待ちください」
「わかりました」
 冷たいお茶を出してもらった。このタイミングで冷たいお茶を飲めるのはとてもありがたい。
 ゴクゴクゴク
 生き返る気持ちだ。
 数分後・・・
「お待たせしました、家系図を持って来ました。あなたがこの神社の巫女、高祖父の娘だとしたら、ここにあなたの名前が書かれていると思います」
 家系図は巻物に書かれていた。
「ここに私が書かれていてその上が父親、祖父と連なっています。あなたがいた時代はいつ頃ですか?」
「明治十六年です」
「明治十六年ですか・・だいたい高祖父の時代かな」
 ちょうど家系図を追っていたところに香織ちゃんの父、赤松義雄の名前が書かれていた。
「確かに高祖父は赤松義雄、この下に・・・」
 赤松香織と名前が書かれていた。
 俺は名前が書いてあって少し安心した。
「未だに信じられません・・」
 神主は動揺しているようだ。
「どのようにタイムスリップしてきたのですか?」
「夕方の時に、丁度ここの家の近くの井戸にいて、突然目の前が白く靄がかかって、いつの間にかこの時代に来ていました」
「なるほど・・・・・私が考えられるのは、タイムスリップと似た神隠しが起こった可能性があると思います」
「神隠し?」
「はい、神隠しは名の通り神が悪戯に人を隠すことです、もっと細かいことは父親に話された記憶はあるのですが、すみませんあまり覚えていなくて、父親に聞いておきます」
「そうですか・・神隠し自体は少し聞いたことがあるくらいで、私はあまり教えてもらえなかったですね」
 神隠しか・・・俺は少し話についていけなくなりそうになった。
「今はそちらの・・」
「平賀湊です」
「平賀さんですか山名さんのお家に香織さんがお邪魔しているということですか?」
 香織ちゃんは答える
「そうですね、道端で途方に暮れている中話し掛けてくれて、泊めてくださったのですよ」
「本当にありがとうございます」
「いえいえ、自分は大したことはしてませんよ」
 この人、いい人だな。
「香織さんは明治に帰りたいですよね?」
「そうですね・・・・・・・帰りたい・・ですね」
 香織ちゃんの言葉には間があった。
「ま、まぁこの問題は放っておくと嫌な感じがするので、どっちにせよ解決しなければいけなさそうですね、この問題は私も協力します。連絡を交換しましょう」
「わかりました」
 神主さんとルインを交換した。神主さんもルインやっているんだな。神主さんの名前は赤松信介さん、今ルインの名前表示で神主さんの名前知った。
「そういえば自己紹介が遅れました、私の名前は赤松信介といいます。動揺していて自己紹介が遅れましたすみません、これからよろしくお願いします」
「こちらからもよろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
 協力してもらえることはとてもありがたい。
「あと、香織さんにここに居てもいいようにしたかったのですが、あいにく私は常にここにいるのではなくて嫁と娘と一緒に少し離れた所に住んでいて、うちは厳しそうなので申し訳ないのですが山名さんにこのままお世話になってもらうしか・・・」
 まじかよ・・・まぁ母親は大丈夫そうだし・・・
「大丈夫ですよ、香織ちゃんが良ければ」
「本当ですか!?引き続き世話になってしまうのは申し訳ないのですが・・・」
「いいよ、困ったときはお互い様だからね」
「・・・・・本当にありがとうございます・・・」
 香織ちゃんは少し泣きそうになっていた。
「よかったー!では引き続きお願いします」
 あわよくば神主さんの家で引き取ってもらえるかもと思ったのだが・・・、
 まぁしょうがないよな・・・
 その後神主さんとは別れ、家に帰ることにした。
 同じ道を辿っていく、空はすっかり淡色になっており、まだ暑さは残っているが、海辺を歩くと海風が心地良い。
「今日はありがとうございます、神主さんに手伝ってもらえることになってよかったです」
「そうだね、俺も神隠しについて調べてみるよ」
「湊さんはやさしいのですね・・・」
「いやいや、こういう時はしょうがないよ・・・」
 香織ちゃんはよくわからない特殊な状況に置かれている。そんな状況で一人は辛すぎると思うから、俺は香織ちゃんが過去に戻れるようにこれから協力をしようと決めた。
 駅に着いた頃には疲れたのか、香織ちゃんは眠そうにしており、電車に乗っている時は寝てしまっていた。自分の肩に香織ちゃんが寄りかかって寝ている時の顔は可愛かった。
 最寄りの駅に着いた、辺りはすでに真っ暗だ。
 ぐーーーーー
 帰り道を歩いていたら香織ちゃんの腹が鳴って、恥ずかしそうにしている。
 そういえば昼飯を食べていないな、俺もお腹が減った。
「私、ご飯作りますよ」
「本当に?!助かるよ」
「夕飯も、お魚料理でいいですか?」
「いいよ」
「わかりました」
「あ、あと炊飯器の使い方を教えるよ」
「すいはんき?」
 香織ちゃんは首を傾げた。
「炊飯器も超便利なものだから」
 家に着き、香織ちゃんは手を洗って、すぐにご飯を作り始めた。そして炊飯器の使い方を教えた。
「・・・・・・」
 香織ちゃんは唖然としている。そんな中、数十分経って夜ご飯ができた。
 夜ご飯も米に味噌汁、白身魚だ。
「「いただきます」」
「炊飯器でお米を炊いてもおいしいですね」
「でしょ?まぁ釜戸で炊いたほうが美味いかもしれないけど」
「炊飯器は楽でいいですね」
「うん、釜戸で炊くのは大変そう」
「比べたら手間かもしれないですね、こっちでは釜戸で炊くのが当たり前なので気にしたこともなかったですが」
 そんな会話をしながら、食事を楽しんだ。
「よかったら、泊めてくださる代わりにこれからも私がご飯作ります。掃除、洗濯も全部やります」
「ありがとう、でも全部じゃなくて俺と交代でやろうね」
「いや、全部やります」
「いやいや、さすがにそこまではさせられないし、そんなことさせたらお母さんに怒られちゃうよ・・・」
「わかりました・・・」
 むしろ全部俺が家事をやってもよかったのだが、香織ちゃんはやる事が無くなりそうなので、ある程度の家事は任せよう。
「掃除や洗濯する時は家電を使うんだけどその使い方を明日教えるよ」
「わかりました」
 そして自分が皿洗いをして、風呂に片方ずつ入って、それぞれ寝た。
 今日はいろんなことがあったな・・・これからどうなるのだろうか。香織ちゃんは今の時代は窮屈じゃないのだろうか。すぐに元の時代に戻れればいいなぁ。
 そしてやはりお母さんに香織ちゃんの本当のことを話すべきだろうか・・・やっぱり忙しいだろうからな・・・

 翌日・・・
 今日は昨日話した通り家電の使い方を香織ちゃんに教える。香織ちゃんはいつも通り朝早く起きており、いつものメニューの朝飯を作ってくれていた。ありがたいことだが、いつも同じようなものを食べていると流石に飽きてしまうな・・・
「ここら辺の神社ってどこですか?」
「ここら辺は、そうね・・・いつも初詣してる場所があるところかな」
 いきなり香織ちゃんから問われたので、スマホのマップを見て、神社を香織ちゃんに教えた。
「ここですね、ここの土地にあいさつするために、お参りに行ってきます」
「そうか、俺も行こうかな」
「わかりました」
 朝ごはんを食べ終わって、近くの神社にお参りした。流石神社の娘だな・・・しっかりしているな・・・
 そしてお参りした後は、家電を一式教える。俺は掃除機をリビングに置いた。
「香織ちゃん、これが家電の一つ、掃除機だよ」
「どういうものなのですか?」
「これはゴミを吸ってくれる機械だよ、動かしてみるね」
 掃除機をコンセントに挿し電源を入れた。
ウイーン!
「!!!!!!!」
 香織ちゃんは大きい音にかなり驚いている。掃除機でゴミを吸うところを見せ、掃除機を一旦止めた。
「すごい音がしますね・・・」
「そうだよね・・でも、そのうちなれると思うよ」
 香織ちゃんは少し掃除機に怯えているようだ。掃除機を動かすとゴミを吸う当たり前なことだと思うが、香織ちゃんからしたら不思議でしょうがなく、怖いものかもしれない。香織ちゃんに他の家電の使い方を教えた。
「一気に教えちゃったけど、わからなくなったら説明書机の上に置いとくから見てね、それでもわからなかったら俺に聞いて」
「わかりました」
「あとなにか教えるものあったっけな、あ、テレビ紹介するか!」
「てれび?」
 テレビの電源付けた。
「!!!」
「仕組みは、まぁこの機械が電波を受信してこの画面に写してくれるというくらいしかわからないなぁ・・・まぁとりあえず、この時代のある程度のことを知るならテレビを見た方がいいよ、いろんな情報を知れる」
「わかりました」
「テレビの内容にわからないことがあったら聞いてね」
「はい」
 香織ちゃんはやはり現代の技術についていけてなさそうだ、でもそれは当たり前だ100年も違うとわけがわからなくなるだろう。
「え?」
 香織ちゃんはテレビの裏側を見た。
「誰もいない・・・・この方って、今しゃべられているのですか?」
「笑笑」
 初めてテレビを見る人はこんな反応するんだな。
「リアルタイムでってことね。そうだよ、現在進行でこの番組はやっているよ」
「なるほど、すごい技術ですね・・・このばんぐみというのはどのようなことをやっているのでしょうか」
「この番組はニュースといって、今起きてる事件や国内、国外の情報をある程度知れるよ」
「なるほど・・・便利になりましたね・・・」
 これは他の家電も説明するの大変だな・・・どれだけ時間かかるのだろうか・・・
「わ!それは触っちゃダメ!」
「ごめんなさい!」
 わたわたする俺は、この状況を心なしか楽しんでいた。
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