脱出17

文字数 679文字

 「タケシ、俺、思い出した。お前の顔をそんなにしたのは、俺じゃないか!タケシは治安保護管をしてたよな?孤児狩りで捕まえに来たところを返り討ちにしたんだ。ごめんなさい。本当にごめんなさい。」
 「それ、俺もさっき思い出した。で、悪かったなあって思ったんだ。あのとき、お前はまだ12歳ぐらいだったんだろうけど、あそこで施設に送ってたら、ここより上の街に行けたんだろう。それに、もとからこんな顔だ。気にするな。ただな、これから杉山、ワッショイ、よーちゃんには手伝ってもらうことがある。城の電子頭脳が台風で一部壊れて、思考停止の電波が出なくなった。つまり、街が不安定になった。街にいる連中は、おまえらほど意志がない。弱い連中だ。好きにしろと言われても、それが出来ない連中だ。たぶん、地上の街はこのまま崩壊していく。ただ、穏やかに暮らせるうちは、穏やかに暮らしたい。そのためには管理する必要がある。お前らは管理されない強さがあるから、管理する側になることができるんだ。夢が見れない夢の邦はなくなった。いまから、ここを希望の園に変えていきたい。手伝って欲しい。」
 「都合がいい話になっているな。どうする杉山?俺は今まで通り地下をうろちょろするが、寝るときは地上で寝ることにする。お前と二人で地下なんてまっぴらだ。それに夢が見れるなら、風通しがいいところの方がいい夢を見れるだろうからな。」
 俺はタケシを友達だと思っている。友達から頼まれたのなら、断る理由がない。それに、また、地上に戻れる。ワッショイが言うように夢を見るなら地上のほうがいい。そのほうが希望が持てる。(了)


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