1-5 カレンの視界

文字数 603文字

「ライアン!」

 私は叫んだ。私の弟であるライアンが、体を貫かれ投げ飛ばされる。その様子が目から離れなかった。また失うのか。強烈な喪失感に一瞬、体が硬直してしまう中、巨大な火球がトカゲのような業魔を襲った。強烈な爆音とともに、私は吹き飛ばされ、屋根から転げ落ちる。

「あ"づい"い"い"あ"あ"あ"あ"あ"ううう"あ"あ"あ"あ"あ"」

 業魔の断末魔が響く。
 激痛で透明化が解除されているようで、見るなアアア !とも聞き取れる叫びを繰り返しながらもまだ再生しようと肉体を修復している。そこへ容赦なく2発目の火球が命中し、業魔は崩れ去った。

 朦朧とする意識の中、私はライアンを探す。

「ライアン……ライアンまで…… 失いたく……」

 私は思うように動かない体を引きずりながら、ライアンが吹き飛ばされたであろうところに向かった。

(まだ……助かるはず…… あの怪我なら……すぐに、大司教様に見せて…治療魔法さえ……)

 そうきっと助かる。そしたらめいっぱい怒って、めいっぱい抱きしめるの。心配したんだからと、よくやったと。
 何とか辿り着いた。そこには、血まみれのライアンと知らない男がいた。

「ライ……アン」

 私はただ眺めることしか出来なかった。ライアンは溶け、その男を包んだ。
 瞬く間に、黒ヤギのような業魔に変貌する。
 私は一瞬理解出来なかった。その状況を、希望が目の前で打ち砕かれたこと
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