1-3 気配
文字数 2,267文字
異端審問官達は外壁の門に到着する。フリードは横にある受付へ質問をぶつける。
受付の門兵から、遺体を埋めたであろう時刻に1台だけ出ていった記録があった。
レオン・デ・ミランカという名の男で、門兵が言うには極度の視線を恐怖らしい。
そして確認した限りでは人権印も刻まれていたと。
1週間前にこの街に、妹2人と入り、昨晩出ていった際は、青年と一緒に馬車に乗って出ていったとの事で、門兵はその時荷物をしっかりと確認はしていなと言っている。
その夜のうちに、この街に帰ってきているようで、それを聞いたフリードは、レオンの元へ向かうことに決めたようで、門兵にそいつの特徴や住んでいる場所を聞く。
門兵の言う特徴を書きまとめ、街の南へ向かった。
煉瓦造りの住宅が並ぶ中、住んでると思われる場所を見つけた時には、太陽は頂点過ぎ、これから沈むための準備をしていた。
「近隣住民へ避難の要請と念の為、少し離れたところに魔法団を配備しておいてくれ、あと俺の剣と"ハチ針"数本持ってきて」
フリードは忙しなく他の審問官に指示を飛ばしていた。一軒家は不思議なほど静かで、実はもう誰もいないのではと錯覚してしまいそうだった。カレンも程なくして到着する。
「おうカレン。あの家の中、お前の奇跡で見える?」
フリードが指を指した方にカレンは顔を向ける。
「いえ、少し遠いので見えないですね。もう少し近づかないと……」
その時は背後からガラガラとタイヤを転がす音が聞こえ、振り向くと
「フリード隊長!周辺の住民の避難終わりました。それと剣とハチ針です」
フリードの指示した物資が馬車によって運ばれてきていた。
「ありがとさん。魔法団は?」
「配置には時間はかからないそうなので、程なくしたら行けるとのことです」
「そっか。じゃあぼちぼち準備するか」
フリードはそういうと、馬車から荷物を下ろし、数十本の剣とハチ針と言われる特殊な剣を数本出した。
フリードはその剣一つ一つに触れていく。すると剣たちは人の手を借りずに、勝手に空中へ浮かび上がり、フリード隊長の周りを整列するかのように漂いだした。これがフリードの"奇跡" 。
我々異端審問官は、異端審問官に就任する前に必ず洗礼を受ける。洗礼を受けた際、体に障害が出たり、最悪死亡したりする場合があるが、常人が生涯鍛錬を積んだとしても手に入らない身体能力や、奇跡と呼ばれる能力が発現することがある。
ライアンももちろん洗礼を受けたが……、 まともな能力は手に入らなかった。けれど倍率の高い大都市に就任できたのは、カレンの実績のおかげだろう。
カレンは自分の束ねている部隊に指示を出していた。その凛とした背中には隊長の証であるマントがたなびいている。故郷と父を失ったあの日から、カレンは家族全員の家計を、業魔への怒りを、全てあの背中に背負って異端審問官となった。ライアンはは少しでもその背負ってくれたものを軽くしてあげたいと、カレンの後を追った。
俺は姉の負担を少しでも軽くできているのだろうか、またあの日のように背負われているだけになっていないだろうか。
ライアンは自分の心に問いかける。
「ほいっ」
フリードがこちらに何かを放り投げる。それを落とす寸前でキャッチする。
「あぶっ……これは?」
「ハチ針だよ。使い方わかるよね」
ハチ針、一種の魔法誘導器具と言われている。 剣の部分がハチの針のように尖っているのでハチ針と呼ばれていると習ったが、実物は初めて持った。
柄の部分は円柱が2つ直列に繋がっていて、それぞれを逆の方向に回転させることで、剣と分離する仕組みになっている。対象が業魔化した際、このハチ針を刺し、剣を分離させ、業魔の体内に留置することで、遠距離からでも業魔を認知し、魔法を命中させることが出来る。
異端審問官のような身体能力のなく前線にでることの出来ない魔法団も遠距離から火力が出せるというものだ。逆にいつまでも刺すことが出来なければ、魔法団からの支援は無いと考えた方がいい。
故に重要。
「俺なんかでいいんですか」
ライアンは不安そうな顔をしていた。だが同時に期待も心の底から溢れてくる。
カレンの……姉さんの役に立てるのではと。
「無理に刺そうとしなくて大丈夫よ。俺も刺すし」
フリードは、複数あるハチ針の1本に触れ、宙を漂う剣の隊列に加えながら言う。
「じゃあそろそろ行こうか」
20名近くいる異端審問官が、フリードの司令に呼応し、一軒家に歩み出す。
「カレン、中の様子は?」
「2人、中にいます。1人は男でもう1人は女性のようです。 男が女性に対して馬乗りになっているように見えます」
まだ一軒家まで10m近くにあるが、カレンには中の様子は筒抜けであるようだった。
これがカレンの奇跡。盲目になる代わりに手に入れた能力。
カレンが言うには、説明するのは難しいが強いて言うなら目が見えた頃より良く見えるらしい。
一軒家にどんどん近いていく。 フリードがハンドシグナルで数名に裏口へ回るように指揮する。
ライアンは、その指示に従い裏口へ向かう。
裏口の扉前までつくと、自分の鼓動が激しくなるのを、ライアンは感じた。緊張をかみしめながら、いつでも踏み込めるように構える。
表の扉が蹴破られる破壊音が聞こえたと同時に、ライアンも裏口を蹴り飛ばし中に踏み込む。そこからは一瞬だった。
受付の門兵から、遺体を埋めたであろう時刻に1台だけ出ていった記録があった。
レオン・デ・ミランカという名の男で、門兵が言うには極度の視線を恐怖らしい。
そして確認した限りでは人権印も刻まれていたと。
1週間前にこの街に、妹2人と入り、昨晩出ていった際は、青年と一緒に馬車に乗って出ていったとの事で、門兵はその時荷物をしっかりと確認はしていなと言っている。
その夜のうちに、この街に帰ってきているようで、それを聞いたフリードは、レオンの元へ向かうことに決めたようで、門兵にそいつの特徴や住んでいる場所を聞く。
門兵の言う特徴を書きまとめ、街の南へ向かった。
煉瓦造りの住宅が並ぶ中、住んでると思われる場所を見つけた時には、太陽は頂点過ぎ、これから沈むための準備をしていた。
「近隣住民へ避難の要請と念の為、少し離れたところに魔法団を配備しておいてくれ、あと俺の剣と"ハチ針"数本持ってきて」
フリードは忙しなく他の審問官に指示を飛ばしていた。一軒家は不思議なほど静かで、実はもう誰もいないのではと錯覚してしまいそうだった。カレンも程なくして到着する。
「おうカレン。あの家の中、お前の奇跡で見える?」
フリードが指を指した方にカレンは顔を向ける。
「いえ、少し遠いので見えないですね。もう少し近づかないと……」
その時は背後からガラガラとタイヤを転がす音が聞こえ、振り向くと
「フリード隊長!周辺の住民の避難終わりました。それと剣とハチ針です」
フリードの指示した物資が馬車によって運ばれてきていた。
「ありがとさん。魔法団は?」
「配置には時間はかからないそうなので、程なくしたら行けるとのことです」
「そっか。じゃあぼちぼち準備するか」
フリードはそういうと、馬車から荷物を下ろし、数十本の剣とハチ針と言われる特殊な剣を数本出した。
フリードはその剣一つ一つに触れていく。すると剣たちは人の手を借りずに、勝手に空中へ浮かび上がり、フリード隊長の周りを整列するかのように漂いだした。これがフリードの"奇跡" 。
我々異端審問官は、異端審問官に就任する前に必ず洗礼を受ける。洗礼を受けた際、体に障害が出たり、最悪死亡したりする場合があるが、常人が生涯鍛錬を積んだとしても手に入らない身体能力や、奇跡と呼ばれる能力が発現することがある。
ライアンももちろん洗礼を受けたが……、 まともな能力は手に入らなかった。けれど倍率の高い大都市に就任できたのは、カレンの実績のおかげだろう。
カレンは自分の束ねている部隊に指示を出していた。その凛とした背中には隊長の証であるマントがたなびいている。故郷と父を失ったあの日から、カレンは家族全員の家計を、業魔への怒りを、全てあの背中に背負って異端審問官となった。ライアンはは少しでもその背負ってくれたものを軽くしてあげたいと、カレンの後を追った。
俺は姉の負担を少しでも軽くできているのだろうか、またあの日のように背負われているだけになっていないだろうか。
ライアンは自分の心に問いかける。
「ほいっ」
フリードがこちらに何かを放り投げる。それを落とす寸前でキャッチする。
「あぶっ……これは?」
「ハチ針だよ。使い方わかるよね」
ハチ針、一種の魔法誘導器具と言われている。 剣の部分がハチの針のように尖っているのでハチ針と呼ばれていると習ったが、実物は初めて持った。
柄の部分は円柱が2つ直列に繋がっていて、それぞれを逆の方向に回転させることで、剣と分離する仕組みになっている。対象が業魔化した際、このハチ針を刺し、剣を分離させ、業魔の体内に留置することで、遠距離からでも業魔を認知し、魔法を命中させることが出来る。
異端審問官のような身体能力のなく前線にでることの出来ない魔法団も遠距離から火力が出せるというものだ。逆にいつまでも刺すことが出来なければ、魔法団からの支援は無いと考えた方がいい。
故に重要。
「俺なんかでいいんですか」
ライアンは不安そうな顔をしていた。だが同時に期待も心の底から溢れてくる。
カレンの……姉さんの役に立てるのではと。
「無理に刺そうとしなくて大丈夫よ。俺も刺すし」
フリードは、複数あるハチ針の1本に触れ、宙を漂う剣の隊列に加えながら言う。
「じゃあそろそろ行こうか」
20名近くいる異端審問官が、フリードの司令に呼応し、一軒家に歩み出す。
「カレン、中の様子は?」
「2人、中にいます。1人は男でもう1人は女性のようです。 男が女性に対して馬乗りになっているように見えます」
まだ一軒家まで10m近くにあるが、カレンには中の様子は筒抜けであるようだった。
これがカレンの奇跡。盲目になる代わりに手に入れた能力。
カレンが言うには、説明するのは難しいが強いて言うなら目が見えた頃より良く見えるらしい。
一軒家にどんどん近いていく。 フリードがハンドシグナルで数名に裏口へ回るように指揮する。
ライアンは、その指示に従い裏口へ向かう。
裏口の扉前までつくと、自分の鼓動が激しくなるのを、ライアンは感じた。緊張をかみしめながら、いつでも踏み込めるように構える。
表の扉が蹴破られる破壊音が聞こえたと同時に、ライアンも裏口を蹴り飛ばし中に踏み込む。そこからは一瞬だった。