プロローグ

文字数 301文字

 ひんやりとした春の雨が降り続き、遅咲きの桜の花びらもついに散ってしまった。
 このごろ少し考え込んでしまうことがあるんだけれど…… 最近の世の中って、もう喧騒と不安とから成り立っているとしか思えない…… ってね。
 それでも桜は、今年もきれいに咲いた。この同じ桜をあと何回、見ることが出来るのだろうか……

 雨上がりの風景。ボクはそれをずっと眺めていた。ぬかるんだ足元。そこに出来た水溜りは濁っていたが、それでも綺麗な青空を映していた。
 空を見ているとボクはいつも、もう逢えなくなってしまったキミのことを思ってしまう。

「キミも同じ空を見ているの? この風の音が聞こえるかい?」

 そんな言葉を投げ掛けながら。

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