第5話
文字数 285文字
再び磯村の記述。
……突然、ドアの開く音が聞こえ、奴らが入って来た。くぐもった、あの声が響く。
「おい、約束の金が手に入ったから、今からお前らを解放してやる。ちゃんと勇也に礼を言うんだな。八歳の割になかなかしっかりした息子さんだ」
そして磯村と妻の春枝は縛られたまま外に出され、車に乗せられた。目隠しをされていたので、あのハイヤーだったかははっきりしないが恐らくそうだったと思う。
そのまま一時間ほど、いや実際は三十分だったかもしれないが、ともかく車に揺られると、急に停まりそのまま外へ投げ出された。車が走り去っていく音が聞こえ、大声で叫ぶと、やがて勇也の声がして……。