第17話 まる蔵の子育て論

文字数 976文字

 まる蔵の話の端々から察するに、この男には「子育て」についての確固たる信念、正しくは「理想」があるようだ。以下に挙げよう。

 親について。
一人っ子はいけない。兄弟は三人がよろしい。兄弟げんかができる程度の、程よい年齢差であること。        

親と子だけの核家族はいけない。必ず祖父母などの親族と同居するべし。

子が寝るときには、どちらかの親が絵本(洋の東西は問わない)を読み聞かせするべし。

子に、できるだけ多くの選択肢を与えること。やらせもせずに、可能性を摘んではいけない。

子の、習い事や勉学、進路決定などにおいて、一切強制をしないこと。

子に、経済面での心配をさせないこと。

子に、食い物の自由を与えること。腹いっぱい食わせること。

ゲーム機やスマートフォンの類は与えない。

親子で過ごす時間を多くとり、休日などはともに出かけるなどし、思い出作りにいそしむこと。

自分のストレスを、子に向けてはいけない。

子に期待はせず、ひたすら愛すること。見返りを求めてはいけない。

「いじめ」など、陰湿な人間関係のない環境に子を置くこと。

他人とのコミュニケーションの取り方の見本を示し、自然と子が習得できるようにすること。

 
 子について。
幼少期から犬や猫、鳥などの命と触れて、彼らが臨終を迎えるまでともに暮らすこと。

自然あふれる環境で、土や草木で汚れる遊びをして肉体と基礎体力、免疫とを養うこと。

両親を「お父さん」・「お母さん」、祖父母がいれば「おじいちゃん」・「おばあちゃん」と呼ぶこと。「パパ」・「ママ」・「じいじ」・「ばあば」の類は認めん。

夜は九時前には寝て、朝は七時前には起きること。

朝飯は必ず摂ること。

挨拶がきちんとできるようにすること。

先祖を敬うこと。

相手の気持ちを察すること。


 以上である。
 おちひもこれらに賛同し、さらに一つ、親について付け加えた。

夫婦仲がよく、また、同居する他の大人同士も仲が良いこと。間違っても、子の前で身内の悪口などを口にしてはいけない。

 現代社会でこれらをすべて満たすことは不可能である。さらに、個人の努力ではどうにもならぬことも含まれている。それは二人も分かっている。

 よって二人は、子を持たないという選択をしたのである。この複雑で難しい世の中において、子を産み育てるという選択をした多くの「勇気ある親御」に、敬意を表しながら。

 




  
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