第7話

文字数 1,067文字

メールの文章…私はからかわれているのでしょうか?
『ライブまで待てないよ…会えない?』
返事に困ります。
突然のメールにこの文章、その気になってバカをみる気がしてなりません。
恋愛とかいうものから遠い遠い世界で生きてきた私ですよ、おひとりさまの私には
ハードルが高すぎる言葉です。
しばらく仕事も手につかず、結局家に帰る事にしました。
いつもなら歌を大声で歌いながらの帰り道も、さすがに今日は静かです。
音楽は鳴っていても、耳にすら入ってきません。
とりあえず無事家には辿り着き、ビールをゴクリ…ゴクリでは済まず一気に飲み干して
しまいました。
メールの返事をしなければ、あたりさわりのない言葉を選びました。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

『急にどうしたの?何かあった?』
すぐに返事が帰ってきました。
『遅くまでお仕事お疲れ様』『素直に言ったつもりなんだけど』
『素直にって、またまたももくんってば』
『ダメ?』
『えっと…いいのかな?』
『あのね、ライブの時さ、俺の後にきいくんとこ行ったでしょ。それ見て…』
急展開です。
しばらくメールでの話は続きましたが、どうにもこうにもこういう事に慣れていない
訳ですから、堂々巡りをしてしまいももくんに半ば強引にと言いますか、結局会う事に
なってしまいました。
『じゃあ、明後日ね』
『うん』
『おやすみ』
『おやすみなさい』
眠れる訳ありません。
明日の仕事は大丈夫でしょうか…

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「和香おはよ。どうした?寝不足?」
「お姉おはよう。緊急事態」
「和香の緊急事態ってなんかある?」
「今まで無さすぎたから緊急事態なんですよ」
「話聞くよ」
「…恥ずかしすぎて」
「なになにー」
「後で言えそうなら話す」
「了解」
私一人では到底解決する事は出来そうにはないのですが、誰かに話してしまって
いいものなのか、こんな話が出来るのはお姉くらいしか思いつかず話してみることに
したのです。

「ついにきたね和香」
「いや、この歳になってバカをみるのは立ち直る自信がないよ」
「まだ始まってもないうちから何言ってんの」
「始めるといつか終わりが来るわけで…」
「先の事考えてたら何も始められないでしょ」
「まあ…」
「オヤジ和香にも春がやって来たね」
「からかわれてるだけかもしれないし」
「ま、いいんじゃない。楽しんどいで」
お姉に話して少し楽にはなった気がします。
とりあえずは仕事に集中。
他の人には気付かれませんように…
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