第3話

文字数 391文字

 次に紹介されたのは、温度の天才。
 東村山にある銭湯のオーナーであり、毎日温度計を使わずにお湯の温度を自らの手で計っているという。
 半年前に還暦を迎えた彼に言わせれば、零度から五十度までだったら手を浸すだけでたちどころに温度が一度単位で判別できるとのことである。
 試しに六十度のお湯の入った水槽を準備して、高岡が適当に水で冷まし、温度を測定した。たまたま三十六度という人肌程であり、これなら高岡にも判りそうだ。
 結果はピタリと一致したが、彼の天才ぶりはここからが本番である。
 その後も三度から四十七度まで計五回の実験を繰り返したが、どれも見事に言い当てた。
 しかしこれも地味であった。テレビの素材としては視聴者に伝わりづらい。これが百度やマイナス二十度といった危険レベルであればインパクトがあるだろうが、このままではどこにでもいるような町の名物おじさん的な印象はどうしても拭えない。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み