(二)-15

文字数 298文字

「なんとかなりませんか」
 千代は食い下がってみた。
 しかし受付の女性は「でも、ホームレスというわけではないんですよね」と言った。
 ホームレス。単語は知っているけど、その意味は重い。ホームレスかそうでないのかの境界線は、限りなく薄いが決定的に遠い。アパートを追い出された時点で千代はホームレスであったが、そういうふうには見られたくなかったし、自分がそうだと思いたくはなかった。そして一度そうなってしまうと、二度と「普通」には戻れない気がした。だからなんとしても踏みとどまりたい。
 だから、千代は言った。「違います」と。
「そういうことでは、受けられません」
 受付の女性は、もう一度そう言った。

(続く)
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み