夢と記憶

文字数 990文字

ここはアステール18階層の地。

晴人たちは昨夜、宴会場でお酒を飲んで酔っ払ったのだ。


そして馬小屋で寝る3人であった──。


ふと晴人が目を覚ます。

──夢か…。

どうやら晴人は現実世界での夢を見ていたようだ。

そう──。

事故で亡くした血の繋がらない母親との記憶が──。

それは1年半前の出来事──。
今日からお前の母さんだ。

晴人の父親は出張が多く家にいる機会が少ない。

そんな中、父は晴人に新しいお母さんとなる人を玄関で紹介した。

どうやら相手の彼女は子持ちで小さな女の子と一緒にやってきたのだ。

はじめまして。ハルちゃんって呼んでいい?

彼女は慣れ慣れしく話してくる。

正直、新しい母親なんて”受け入れたくない”という気持ちで一杯だった。

なんだよ…。新しい母さんって…。
晴人はうつむき加減で父親に言った。
そうやって亡くなった母さんとの縁を切るのかよ!

晴人の本当の母親が病気で亡くなったことの気持ちを

胸にいだきながら家の2階へと走り去って行った。

急な出来事で戸惑ってるだけだから…。

父親は相手の彼女に優しくフォローをする。



すると──。



相手の彼女は突然2階にある晴人の部屋の前まで行ったのだ。

そして優しくドアをノックし始めた。


“コンコン…”

ハルちゃん…。
相手の彼女はドアの前で突然、泣きながら喋り始める。

──私が嫌いでも…。


“妹のひなだけは嫌いにならないでね…。”

その言葉を聞いた晴人は、ふと玄関にいた妹の表情を思い出した──。

“そうやって亡くなった母さんとの縁を切るのかよ!”と父親に言った一言の後、

2階にある自分の部屋に立ち去る前に一瞬だけ妹の表情が見えたのだ。


“怯えていた…。”


“妹も考えてみれば立場は晴人と同じ”であることを──。


新しい家族は晴人だけじゃない。

妹も同じ──。


晴人は部屋のドアを開いて返事をしようとするが、

相手の彼女の姿は見えない。


玄関に戻ったようだ。


そして相手の彼女と妹は一度、家に戻ると言って帰ってしまった。

そしてその道中──。


トラックとの衝突事故により相手の彼女は亡くなり、

妹だけが助かったのだ。


晴人はたった一言

”はい。”と相手の彼女に言いたかった。

そして言えないまま、お母さんと呼べないまま妹と暮らす生活が始まる──。


妹が異世界に行く前に行った言葉

『助けてよ…。お兄ちゃん…。』っていうのがトラックとの衝突事故のこと。


晴人は兄として”守るもの”がある。

そう思っていた──。

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