第X10話 無論、オム論

文字数 836文字

「ただいま戻りました」
 ニカルが調査から帰ってきた。国民に役立つ利権ならまだマシだが、ろくでもないルールで富を奪うモノであってはならない。

「わたしも理研にいたことがあるんですよ」
「まだ若いのに大したもんだ」
 食材や薬、建築資材に身体論。流行っては困るアイテムや理論があるということだな。

「これは躰に良い食品、悪い食材という視点から入ってしまうと、簡単に騙されてしまうんですよ」
 毎日のように聞くトピックではある。

「躰に悪いとされる食品は、たいていみんなの大好物だな」
 これが悩ましいところだ。

「わたしの栄養学は、元素で捉えています」
 幻想的だな。

「塩分や甘い物が駄目だってのは、些末なことなんだろう」
 人体を構成している元素の大まかな割合は、下記の通りだ。

 酸素 65%
 炭素 18%
 水素 10%
 窒素 3%
 カルシウム 1.5%
 ナトリウム 0.15%
 鉄 0.009%
 
 リン、硫黄、カリウム、塩素にマグネシウムも含まれている。

「微量ながら、人体にはゴールドも存在するんですよ」
 修行すれば、スーパーサイヤ人になれるかも知れない。

「わたしの開発した体組成計は、元素の割合を計ることができます。その変動により、何を食べれば良いのか、何を控えなければならないのか、それらの目安が分かる仕組みになっています」
 食べ物の名目だけで、人体に悪いとNGを出してはいけないということだな。

「炭素が18%なのですから、米は毒だの小麦は悪いだのと、誰かが作り出した瞬発的な栄養学から入るのは間違いの元なんです」

「よく分かった。ところで今日のメシ当番はお前だぞ」
 腹が減っては、探偵は出来ない。

「いまオム掛け料理にハマっていまして、焼きそばが代表格ですが他にないか模索しているんです」
「美味いよな。オムカレーも根強い人気だ」
 天津飯もオム掛けみたいなもんだ。

「では、オムドリアに取りかかります」 
「ああ、頼むぜ」
 ニカルが作るオムドリアは、すき焼きもしゃぶしゃぶもとてもとても適わない。







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