第3話 不私擬憲法

文字数 830文字

「探偵もののドラマが増えましたね、神籬(ひもろぎ)さん」
 若者のテレビ離れが叫ばれているが、ニカルはTVっ子だ。

「スパイものもな」
 スパイがユアナンバーカードのCMをするとは、どういうブラックジョークだろう。

 内宮で参拝を終えると、人もまばらな茶屋へ向かった。
「あ~ら、準ちゃん。久しぶりじゃないの~」
「ああ。たまには地元に帰らないとな」
 女将はニカルの顔を見るとすぐ察したのか、挨拶もそこそこに奥へ消えた。

「おかげ参りは、食べることも目的のひとつですね」
 茶屋だけでなく、飯屋も絶品だ。

「俺は普通にお参り目的だぞ」
 震災、プロミネンス以降の世の乱れっぷりには、何かあるに違いない。

「論じるテーマが多すぎますね」
 ニカルはいちご大福パフェを頬張った。

「法をいじくりまわしてやりたい放題になっているが、そもそも日本の国益からして違憲なものもある」
 俺のはバナナ大福きなこ掛けだ。

「日本の憲法は変えようと思っても変えられないですよね。条件といいますか、ハードルが高すぎます」
 建国しなおすしかないのだろうか。

「憲法変遷という解釈がありますが、第7条の一項を見ると、天子様が憲法を改正出来ると読み取れないこともないですね」
 強引と言えば強引だが、衆議院の解散も第7条を根拠に行われる。

「憲法24条も無視しようとしてるからな」
 そのくせ9条は守れと言う。

「神籬さんの主張は分かりましたが、それを口にして総攻撃に遭うのは19条に反していますね」
 こうしてみると、変えなければいけない憲法など無さそうに見えるのだが・・・。

「俺の好きな古典的SFがあるんだが、見事に現代をなぞっているんだよな」
 憲法もそうだが、この世のシナリオを書いた人物がいるとしか思えない。

「それでしたら、わたしの好きなアニメでもハッピーエンドな物語がありますよ。佳境に至るまで、シビアな状況が続くのは似ているのですが」
 シニカルな笑みだが、部下ながら頼もしいやつだ。



 目の光は心をよろこばせ
 好音信(よきおとづれ)は骨をうるほす








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