腹腔鏡手術は術後の傷みが軽いって言った奴出てこいよ!
文字数 2,858文字
『腹腔鏡手術は術後の傷みが軽いって言った奴出てこいよ!』
と騒ぎたいところでしたが、言ったのは無論、主治医の先生なのですけれどもね!
正直これでも、痛みが軽い方だったのかもしれませんけどね!
兎にも角にも、今日 でも私の心の奥底で強いトラウマとなって澱み続ける惨劇の一夜 (めっちゃ大袈裟。出産が二回とも帝王切開 の妻に怒られそう)がやってくるのです。
初日は集中治療室でぐっすりと寝て、『なんだ、傷口そんなに痛まないないやん』とすっかり慢心していた私の元におとずれた二日目の夜は、長い長い一夜となりました。雲行きが怪しくなってきたのは、消灯時間が過ぎた頃、でしょうか?
──そこはかとなく、お腹が痛い。
最初はまあ、そんな感じの軽い鈍痛から始まりました。
さてこの時、手術後の痛み止めがいい加減に切れてきたことで痛みが発現したのか、それとも、何か他の要因・変化があったのか、今でもよくわかっていないんですけどね。時刻が夜半に近づくにつれて、下腹付近にある傷口周辺痛みが増していきます。
軽い鈍痛から始まり、次第に強さを増していく痛み。最終的には、手のひらで傷口周辺を押さえていないと耐えられない程の激痛まで変わります。
この日、なかなかガスがでない事で苦しんでいたので、もしかすると溜まったガスによって傷口が圧迫されていたのかもしれません。結局、原因はサッパリわかりませんでしたが、我慢出来ず十二時ころナースコールを押しました。
「すいません、痛くて寝られないんですが」
「あ~そうなんですね? では鎮静剤 (痛み止め)を打っておきましょう」
但し、と看護師さんが補足します。
「これ、一度打つと四~六時間くらい間隔を空けないとダメなんですよ。それだけ、覚えておいて下さいね」
鎮静剤の成分の関係上、過剰摂取・投与はできないようですね。マジですか初耳だよ、と思いつつも、これで数時間痛みから解放されれば、そのうちに寝付けるだろう。そう考えていました。
──実に、甘かった。
確かに痛みは緩和されました。しかし、痛み止めの効果は思いのほか長続きせず、数時間したらまた元通り。
(あかん。まだ痛み止め頼める時間やない)
額に脂汗を滲ませ必死に下腹を手で押さえつつも、瞼だけは閉じてなんとか眠りにつこうと抗い続けます。
眠ることができれば、大丈夫。
眠ることさえできれば、明日の朝になって痛みも和らいでいるんだ。きっとそうだ。
たぶん、帝王切開 で出産した女性なら分かると思いますが、手術後最初の夜に襲ってくる傷口の痛みがあるじゃないですか? あれと同じような奴ですよ(出産? したことある訳ないじゃないですかwなんとなく、です。あーまた怒られる)
もちろん、眠気、全然きません。
眠ろう眠ろうと意識すればするほど、眠れなくなる悪循環。時計の秒針は無常に進み、二時~三時と時間だけはどんどん経過していきます。結局、四時を回ったあたりで再び鎮静剤を打ってもらうも効果は先ほどよりも薄く、気がつくと窓の外が白くなっていました。
眠れない夜、なんて如何にも綺麗なフレーズですがとんでもない。文字通り眠れない地獄のような一夜でした。
この日、いつ寝たんだったかな?
痛みに悩まされ続けた一夜の記憶が鮮明すぎて、翌日以降の記憶がなんだか曖昧なんですわ。
まあ、そんなことがありつつも。後は平穏無事に入院生活も過ぎていくのですが。
掻い摘んでダイジェストで紹介していきましょう。
* * *
更に翌日、『先ずは、起き上がりましょう』と看護師さんに言われます。
『え、もう? 嘘でしょう!?』と不安を感じ激痛に耐えなんとか起き上がります。傷口が引っ張られる痛みが強くて度々ベッドの電動リクライニングに頼ったりもしてましたが、なるべく自力で上半身を起こさないと、リハビリにならないそうです。
更に数日後、今度は『なるべく歩いてみましょう』といわれます。
いや、起き上がるだけでも眉間に皺がよっている現状なのに、本当に歩くんですか──と言う不満を押し留め、お腹の痛みで前屈みになりつつも、病棟を端から端まで頑張って歩きましたよ。一日、二~三回程度かな? 退院予定日までに回復したい、という一心です。もういい加減に暇すぎてですね、早く退院したかったんです。
また、何度か悩まされたのが『ダンピング症候群』
これ、あんまり耳に馴染みがないと思いますので、軽く説明しておきましょう。
『ダンピング症候群』
本来、胃は、食物と胃液を混ぜて粥状にし、食物を貯めて、徐々に小腸に送り出す働きをしています。
ダンピング症候群は、胃切除後、摂取した食物が急速に小腸に流入するために起こります。
食事中や直後にみられる早期と、食後二~三時間たってみられる後期に分けられます。
○ 早期ダンピング症候群
食物が腸に急速に流れ込むことで起こります。主な症状は、動悸、めまい、冷汗、顔面紅潮、全身倦怠感などです。腹痛、下痢、悪心、嘔吐などの腹部症状がみられる場合もあります。
○ 後期ダンピング症候群
食物が腸に移動し、短時間で吸収されるため、一時的に高血糖になります。これに反応してインスリンという血糖を下げるホルモンがたくさん分泌され、逆に低血糖になって起こります。
症状としては、食後二~三時間たって、頭痛や倦怠感、冷汗、めまい、手指のふるえなどが現れます。
ようは、胃を切除した人にだけ起こる症状です。
よく、胃を切除しても次第に大きくなるとか腸が胃の役割を一部はたすようになる、と勘違いをしている人がいますが、どちらも否です、間違いです。胃は決して元通りになどなりません。
なので、一息に食物を流し込まないよう、細心の注意が必要なのです。
私は固形物のご飯がでるようになった初日にさっそくミスしました。
急いで食べた……という自覚はなかったのですが、食べたんでしょうね? 動悸、めまい、冷汗、吐き気が纏めて押し寄せてきて、五分ほど動けなくなりました。これは衝撃でしたね。ほんと、気をつけようと思いました。
……とは言え、慣れてくればそれなりに大丈夫なんですが。現在では食生活における悩みは殆どありません。
びっくりドンキーのハンバーグ三百グラムもラーメンの大盛りだってたいらげます。
案外、そんなもんです。
さて、傷口も体調も順調に回復し、一月の三十日に無事、退院の日を迎えます。最後の数日は、一階の売店まで毎日のように降りてはスイーツを買って食べる、なんていう自堕落な生活をしていましたw
病院からの帰り道。車の窓から眺める町の光景が、なんだか懐かしく見えたものでした。
※一ヶ月しか、入院してません。
こうして無事、自宅に着いた私。
愛車のエンジンがちゃんとかかることに安堵したものです。(※入院中は、時々妻にエンジンかけて貰ってました)
一応、次回で最後の予定です。
最終回は、この後に続く『抗癌剤治療の話』と『胃カメラの楽な飲み方?』について語って締めくくりましょう。
と騒ぎたいところでしたが、言ったのは無論、主治医の先生なのですけれどもね!
正直これでも、痛みが軽い方だったのかもしれませんけどね!
兎にも角にも、
初日は集中治療室でぐっすりと寝て、『なんだ、傷口そんなに痛まないないやん』とすっかり慢心していた私の元におとずれた二日目の夜は、長い長い一夜となりました。雲行きが怪しくなってきたのは、消灯時間が過ぎた頃、でしょうか?
──そこはかとなく、お腹が痛い。
最初はまあ、そんな感じの軽い鈍痛から始まりました。
さてこの時、手術後の痛み止めがいい加減に切れてきたことで痛みが発現したのか、それとも、何か他の要因・変化があったのか、今でもよくわかっていないんですけどね。時刻が夜半に近づくにつれて、下腹付近にある傷口周辺痛みが増していきます。
軽い鈍痛から始まり、次第に強さを増していく痛み。最終的には、手のひらで傷口周辺を押さえていないと耐えられない程の激痛まで変わります。
この日、なかなかガスがでない事で苦しんでいたので、もしかすると溜まったガスによって傷口が圧迫されていたのかもしれません。結局、原因はサッパリわかりませんでしたが、我慢出来ず十二時ころナースコールを押しました。
「すいません、痛くて寝られないんですが」
「あ~そうなんですね? では鎮静剤 (痛み止め)を打っておきましょう」
但し、と看護師さんが補足します。
「これ、一度打つと四~六時間くらい間隔を空けないとダメなんですよ。それだけ、覚えておいて下さいね」
鎮静剤の成分の関係上、過剰摂取・投与はできないようですね。マジですか初耳だよ、と思いつつも、これで数時間痛みから解放されれば、そのうちに寝付けるだろう。そう考えていました。
──実に、甘かった。
確かに痛みは緩和されました。しかし、痛み止めの効果は思いのほか長続きせず、数時間したらまた元通り。
(あかん。まだ痛み止め頼める時間やない)
額に脂汗を滲ませ必死に下腹を手で押さえつつも、瞼だけは閉じてなんとか眠りにつこうと抗い続けます。
眠ることができれば、大丈夫。
眠ることさえできれば、明日の朝になって痛みも和らいでいるんだ。きっとそうだ。
たぶん、
もちろん、眠気、全然きません。
眠ろう眠ろうと意識すればするほど、眠れなくなる悪循環。時計の秒針は無常に進み、二時~三時と時間だけはどんどん経過していきます。結局、四時を回ったあたりで再び鎮静剤を打ってもらうも効果は先ほどよりも薄く、気がつくと窓の外が白くなっていました。
眠れない夜、なんて如何にも綺麗なフレーズですがとんでもない。文字通り眠れない地獄のような一夜でした。
この日、いつ寝たんだったかな?
痛みに悩まされ続けた一夜の記憶が鮮明すぎて、翌日以降の記憶がなんだか曖昧なんですわ。
まあ、そんなことがありつつも。後は平穏無事に入院生活も過ぎていくのですが。
掻い摘んでダイジェストで紹介していきましょう。
* * *
更に翌日、『先ずは、起き上がりましょう』と看護師さんに言われます。
『え、もう? 嘘でしょう!?』と不安を感じ激痛に耐えなんとか起き上がります。傷口が引っ張られる痛みが強くて度々ベッドの電動リクライニングに頼ったりもしてましたが、なるべく自力で上半身を起こさないと、リハビリにならないそうです。
更に数日後、今度は『なるべく歩いてみましょう』といわれます。
いや、起き上がるだけでも眉間に皺がよっている現状なのに、本当に歩くんですか──と言う不満を押し留め、お腹の痛みで前屈みになりつつも、病棟を端から端まで頑張って歩きましたよ。一日、二~三回程度かな? 退院予定日までに回復したい、という一心です。もういい加減に暇すぎてですね、早く退院したかったんです。
また、何度か悩まされたのが『ダンピング症候群』
これ、あんまり耳に馴染みがないと思いますので、軽く説明しておきましょう。
『ダンピング症候群』
本来、胃は、食物と胃液を混ぜて粥状にし、食物を貯めて、徐々に小腸に送り出す働きをしています。
ダンピング症候群は、胃切除後、摂取した食物が急速に小腸に流入するために起こります。
食事中や直後にみられる早期と、食後二~三時間たってみられる後期に分けられます。
○ 早期ダンピング症候群
食物が腸に急速に流れ込むことで起こります。主な症状は、動悸、めまい、冷汗、顔面紅潮、全身倦怠感などです。腹痛、下痢、悪心、嘔吐などの腹部症状がみられる場合もあります。
○ 後期ダンピング症候群
食物が腸に移動し、短時間で吸収されるため、一時的に高血糖になります。これに反応してインスリンという血糖を下げるホルモンがたくさん分泌され、逆に低血糖になって起こります。
症状としては、食後二~三時間たって、頭痛や倦怠感、冷汗、めまい、手指のふるえなどが現れます。
ようは、胃を切除した人にだけ起こる症状です。
よく、胃を切除しても次第に大きくなるとか腸が胃の役割を一部はたすようになる、と勘違いをしている人がいますが、どちらも否です、間違いです。胃は決して元通りになどなりません。
なので、一息に食物を流し込まないよう、細心の注意が必要なのです。
私は固形物のご飯がでるようになった初日にさっそくミスしました。
急いで食べた……という自覚はなかったのですが、食べたんでしょうね? 動悸、めまい、冷汗、吐き気が纏めて押し寄せてきて、五分ほど動けなくなりました。これは衝撃でしたね。ほんと、気をつけようと思いました。
……とは言え、慣れてくればそれなりに大丈夫なんですが。現在では食生活における悩みは殆どありません。
びっくりドンキーのハンバーグ三百グラムもラーメンの大盛りだってたいらげます。
案外、そんなもんです。
さて、傷口も体調も順調に回復し、一月の三十日に無事、退院の日を迎えます。最後の数日は、一階の売店まで毎日のように降りてはスイーツを買って食べる、なんていう自堕落な生活をしていましたw
病院からの帰り道。車の窓から眺める町の光景が、なんだか懐かしく見えたものでした。
※一ヶ月しか、入院してません。
こうして無事、自宅に着いた私。
愛車のエンジンがちゃんとかかることに安堵したものです。(※入院中は、時々妻にエンジンかけて貰ってました)
一応、次回で最後の予定です。
最終回は、この後に続く『抗癌剤治療の話』と『胃カメラの楽な飲み方?』について語って締めくくりましょう。