私。ようやく医療機関を受診する。

文字数 2,456文字

 前回もお話したとおり、以後、強い胃痛は暫くの間再発しませんでした。
 けれど、胃痛が起こる頻度と強さが、日々増しているのも確かでした。
 強くなっていく胃痛を緩和するため、様々な方法手段を模索し始めたのもこの頃の話。2015年の春から秋口にかけて、でしょうか。
 重ね重ねになりますが、痛みを緩和する方法を模索している暇があるなら病院行けよ! という話なんですけどね苦笑。

 当初何かしらの飲食物を入れれば緩和されていた空腹時の傷みですが、飲む物によっては逆に胃痛が強まる、という症状が出始めたのもこの頃。
 胃痛が酷くなる飲み物の名称を上げておきましょう。

①ビールなどのアルコール類。
②コーヒー

 もう、薄っすら勘づいた方もいるかと思いますが……。そうです、胃に刺激の強い飲み物です。
 私は、軽めとはいえほぼ毎日晩酌をたしなむほどのビール好きであると同時に、無類のコーヒー好きでもあります。(嫌いな人、あまり居ないかもしれませんが)
 それなのに、強さを増す痛みに耐えられなくなった挙句に、どちらも断ってしまいました。ほんと、ここで気づけよ、と言いたくなりますが。
 コーヒーを飲まなくなった代わりによく飲んでいたのが、乳飲料とか清涼飲料水でした。
 毎朝息子を中学校まで送ったのち、陸上競技場の傍らに鎮座している自動販売機で、清涼飲料水を買うのが日課となっていました。お買い上げ、あざーす。そんなことを言われそうなレベルでほぼ毎日。

 何故か?

 痛みの出るタイミングが、最早、空腹時に限定されなくなっていたからです。
 痛みがでる。なっ〇ゃんオレンジを飲む。痛みがでる。なっちゃんオ〇ンジを口に含む。会社のロッカーの中に、なにがしかの飲み物が常備されていました。

 そして、すっかり手放せなくなった清涼飲料水を買うため、夜にふらっと外出したある日、再びあの痛みが襲ってきます。

『強い嘔気とともなった胃痛』

 この時も強い吐き気をともなった鈍痛に蹲ってしまい、数分ほど動けなくなりました。夜の歩道で蹲る私がひとり。なかなかシュールな絵面です。

 流石にこのころにもなると、自分は『きっと胃潰瘍なんだろう』最悪『胃癌なんじゃなかろうか?』と思い始めてました。
 時期を見て、内科を受診した方が良いだろう、とも。
 さて、この『時期をみて』という考え方が大問題。
 この期に及んで、まだ私は、甘い考えにとらわれているのですね。
 体調が悪いという自覚はある。けど、ここまできたらいつ受診しても同じだろう、なんて。
 こんな感じに、なんとなく問題を先送りした経験ありませんか?
 結果を知るのが怖い。
 知らなければ、まだ平穏でいられる。
 そんな考えで日々、過ごしていました。

 とは言え、まったくの無策で過ごしていた訳でもなく、秋ごろから市販の胃薬を飲むようになりました。
 胃薬、というか、胃腸薬、でしょうか? 

 これが、新たな間違いの始まりです。

 百歩譲って胃潰瘍だったならば、進行を食い止める効果があったかもしれません。しかし、おそらく、時既に遅し。どんな胃腸薬を飲んだところで、胃癌が治るはずもないですよね。
 それでも、若干胃痛を和らげる効果は得られてました。
 もしかするとこれが、余計に間違った判断を加速させたのかもしれませんが。

 どんなに優れた胃腸薬であったとしても、癌に効くはずもありません。胃痛は日々増していくばかりで、次第に食欲不振の症状が現れ始めます。
 体調不良も限界が近づき、食事が喉を通らなくなることが多くなって初めて、私は内科医院の受診を決意します。
 胃カメラに対する苦手意識は依然として拭えていなかったため、鼻から入れる胃カメラを準備している市内の個人病院を受診しました。
 そう、胃カメラと一口で言っても、口から飲む一般的なタイプと、鼻から入れるものの二種類があるのです。
 結論から言ってしまいましょう。

 鼻から入れる胃カメラの方が圧倒的に楽です。

 詳細は一番最後に語ろうと思いますが、鼻の奥を通過する際に強めの痛みがでますけど、吐き気をともなう苦しさはほぼ有りません。どの病院でも準備している訳ではないので、自力で探す必要はあるものの、苦手意識のある方は一考の余地ありと思います。
 ほんと、最初から鼻胃カメラの存在を知っていれば、、もっと早く受診していたはずなのですが……。

 2015年十二月初旬。

 診察を受けた私に、医者はこう告げました。

「胃腸薬を飲んで様子を見ますか? それとも、ちゃんと検査しますか?」

 ここまで来て逃げるつもりなどない私は、当然後者を選択します。
 かくして翌週、だったかな? 胃カメラ検診を受けることになりました。
 胃カメラを操作しモニターに映る映像を見ながら、しきりに医者が『ほう』とか『なるほどねぇ』と呟いていたのを覚えています。この患者はあまり良い状態ではない、と直ぐに勘付いたんでしょうね?

「この部分に、大きな潰瘍ができていますね」

 とモニターを見せて説明を加えたのち、細胞を取って病理検査に回しましょう、という運びになりました。
 そんでこの日は、処方された胃腸薬をもらって帰宅。
 胃腸薬、というか、胃酸を抑える薬。

 これがね──めちゃめちゃ効いたんですよ。

 翌日からすっかり胃痛が消えて、食欲旺盛完全なる健康体ですよ。凄いですね。裏返して言えば、胃酸過多からくる胃潰瘍だったのか、それだけ胃壁の状態が悪かったのか。
 兎にも角にも症状は消え、なんだ! 私大丈夫じゃん! と迂闊にも安堵します。
 病理検査の結果は一週間後と言われていましたが、『きっと、ただの胃潰瘍だろう』と完全に高を括ってしまいました。
 そんな甘えた考えをぶち壊す電話が掛かってきたのは、受診から週末を挟んだ月曜日。仕事を終えて自宅に戻った私に、嫁がこう伝えました。

「検査の結果がでたけれどあまり良くないので、明日病院に来て欲しい、と電話がかかってきた」

 そして、2015年の十二月中旬。遂に、癌宣告を受ける日がやってくるのです。
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