第2話 戦争のクラウドファンディング
文字数 2,276文字
2月24日にロシアが侵攻を開始して以来、ウクライナへの1700万ドル(約19億6千万円)以上の暗号通貨による寄付が集まっている。(※1)
ウクライナ政府は2月26日、公式ツイッターアカウントで暗号通貨による寄付を呼びかけた。
(ウクライナの人々と共に立ち上がろう。現在、暗号通貨の寄付を受け付けています。ビットコイン、イーサリアム、テザーで。)
このツイートには、寄付のためのビットコイン(BTC)アドレス、イーサリアム(ETH)とテザー(USDT)のアドレスが記載されていた。ウクライナのMykhailo Fedorov副首相も同様のメッセージをツイートしている。
寄付を募ってから約24時間後に、ウクライナ政府の暗号ウォレットに1000万ドル(約11億5千万円)以上が直接寄付された。
2014年から2021年にかけて駐オーストリア大使を務めたウクライナの外交官、Olexander Scherba氏は、26日に次のようにツイートしている。(※2)
To those who want to help in bitcoin. Bitcoin is officially legit in Ukraine
(ビットコインで支援したい人たちへ。ウクライナではビットコインは公式に合法です。)
また、ウクライナ政府とは別に、ウクライナ軍への支援を行う非政府組織(NGO)「Come Back Alive」に暗号通貨の寄付が殺到している。すでに、500万ドル(約5億7千万円)以上のビットコインを集めている。(※3)
2014年に設立され、キエフを拠点とする「Come Back Alive」は、ウクライナ軍にさまざまな軍事装備、医療品などを提供している。
同団体は2018年から暗号通貨での寄付の受付を始めたが、2月24日から25日までのわずか一日で、340万ドル以上のビットコインを受け取っていた。
しかし、クラウドファンディングプラットフォームであるPatreon(パトレオン)は、「Come Back Alive」の資金調達ページを削除したのである。Patreonの広報担当者は次のように説明する。
Patreon does not allow any campaigns involved in violence or purchasing of military equipment, regardless of their cause.
(パトレオンでは、大義の如何にかかわらず、暴力や軍事装備の購入に関わるキャンペーンを許可していません。)
「Come Back Alive」への寄付は、ウクライナ兵士たちへの支援に使われる。Patreonは同団体の寄付募集ページを削除したが、BTCアドレス自体が削除されたわけではない。
侵攻開始以来、ウクライナ政府とNGO「Come Back Alive」は、暗号通貨による寄付を通じて、すでに1720万ドル(約19億8千万円)を調達している。
ウクライナ政府への寄付は、一体どのような目的で使われるのだろうか。武器弾薬の購入かもしれないし、命を落とした人への弔慰金、負傷した人への見舞金、家や仕事を失った人々が生活を再建するための支援金に使われるかもしれない。
寄付金を武器弾薬の購入には使ってほしくない、人道支援だけをしたいと望むなら、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)やUNICEF(国際連合児童基金)、国際赤十字・赤新月社などがある。
わたしたちは自分のお金をどこに、何の目的で、誰に寄付するかを選ぶことができる。
ブロックチェーン分析会社「Elliptic」の共同創業者であるトム・ロビンソン氏は、"the crypto-crowdfunding of the Russo-Ukrainian War"(ロシア・ウクライナ戦争の暗号通貨クラウドファンディング)とツイートした。(※4)
第二次世界大戦中、日本では国民の貯蓄で国債を購入させ、戦費を賄っていた。(※5)
現代では、わたしたちが望みさえすれば、世界中の誰でも、時間や距離の制約が無く、自由に戦争協力ができるのだ。
今後、暗号通貨は戦争のクラウドファンディングにますます利用されていくだろう。
※1 Crypto Donations Pour in After Ukraine Government Asks for Bitcoin and Ether — $17 Million Raised so Far, Kevin Helms, Bitcoin.com, February 28, 2022.
※2 Olexander Scherba@olex_scherba, February 26, 2022.
※3 Bitcoin Donations Pour in to Help Ukrainian Military Fight Russia — Over $5 Million in BTC Raised, Kevin Helms, Bitcoin.com, February 26, 2022.
※4 Tom Robinson@tomrobin, February 25, 2022.
※5 山岸隆一「強制購入させられた戦時国債」、2012年7月17日朝日新聞紙面掲載、2019年7月27日配信
ウクライナ政府は2月26日、公式ツイッターアカウントで暗号通貨による寄付を呼びかけた。
(ウクライナの人々と共に立ち上がろう。現在、暗号通貨の寄付を受け付けています。ビットコイン、イーサリアム、テザーで。)
このツイートには、寄付のためのビットコイン(BTC)アドレス、イーサリアム(ETH)とテザー(USDT)のアドレスが記載されていた。ウクライナのMykhailo Fedorov副首相も同様のメッセージをツイートしている。
寄付を募ってから約24時間後に、ウクライナ政府の暗号ウォレットに1000万ドル(約11億5千万円)以上が直接寄付された。
2014年から2021年にかけて駐オーストリア大使を務めたウクライナの外交官、Olexander Scherba氏は、26日に次のようにツイートしている。(※2)
To those who want to help in bitcoin. Bitcoin is officially legit in Ukraine
(ビットコインで支援したい人たちへ。ウクライナではビットコインは公式に合法です。)
また、ウクライナ政府とは別に、ウクライナ軍への支援を行う非政府組織(NGO)「Come Back Alive」に暗号通貨の寄付が殺到している。すでに、500万ドル(約5億7千万円)以上のビットコインを集めている。(※3)
2014年に設立され、キエフを拠点とする「Come Back Alive」は、ウクライナ軍にさまざまな軍事装備、医療品などを提供している。
同団体は2018年から暗号通貨での寄付の受付を始めたが、2月24日から25日までのわずか一日で、340万ドル以上のビットコインを受け取っていた。
しかし、クラウドファンディングプラットフォームであるPatreon(パトレオン)は、「Come Back Alive」の資金調達ページを削除したのである。Patreonの広報担当者は次のように説明する。
Patreon does not allow any campaigns involved in violence or purchasing of military equipment, regardless of their cause.
(パトレオンでは、大義の如何にかかわらず、暴力や軍事装備の購入に関わるキャンペーンを許可していません。)
「Come Back Alive」への寄付は、ウクライナ兵士たちへの支援に使われる。Patreonは同団体の寄付募集ページを削除したが、BTCアドレス自体が削除されたわけではない。
ウクライナ軍
がロシアと戦うための手助けをしたい、とわたしたちが望めば、好きなだけビットコインを送金できるのだ。侵攻開始以来、ウクライナ政府とNGO「Come Back Alive」は、暗号通貨による寄付を通じて、すでに1720万ドル(約19億8千万円)を調達している。
ウクライナ政府への寄付は、一体どのような目的で使われるのだろうか。武器弾薬の購入かもしれないし、命を落とした人への弔慰金、負傷した人への見舞金、家や仕事を失った人々が生活を再建するための支援金に使われるかもしれない。
寄付金を武器弾薬の購入には使ってほしくない、人道支援だけをしたいと望むなら、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)やUNICEF(国際連合児童基金)、国際赤十字・赤新月社などがある。
わたしたちは自分のお金をどこに、何の目的で、誰に寄付するかを選ぶことができる。
ブロックチェーン分析会社「Elliptic」の共同創業者であるトム・ロビンソン氏は、"the crypto-crowdfunding of the Russo-Ukrainian War"(ロシア・ウクライナ戦争の暗号通貨クラウドファンディング)とツイートした。(※4)
第二次世界大戦中、日本では国民の貯蓄で国債を購入させ、戦費を賄っていた。(※5)
現代では、わたしたちが望みさえすれば、世界中の誰でも、時間や距離の制約が無く、自由に戦争協力ができるのだ。
今後、暗号通貨は戦争のクラウドファンディングにますます利用されていくだろう。
※1 Crypto Donations Pour in After Ukraine Government Asks for Bitcoin and Ether — $17 Million Raised so Far, Kevin Helms, Bitcoin.com, February 28, 2022.
※2 Olexander Scherba@olex_scherba, February 26, 2022.
※3 Bitcoin Donations Pour in to Help Ukrainian Military Fight Russia — Over $5 Million in BTC Raised, Kevin Helms, Bitcoin.com, February 26, 2022.
※4 Tom Robinson@tomrobin, February 25, 2022.
※5 山岸隆一「強制購入させられた戦時国債」、2012年7月17日朝日新聞紙面掲載、2019年7月27日配信