第5話

文字数 906文字

「この辺のホテルだと、ここが一番リーズナブルだけど。」
そのあとはホテルを紹介してくれて連れて行ってくれた。でも、残念なことClosedの札がかかって開いていなかった。この他のホテルは高いか、環境が良くないからおすすめしないよ、どうする?と言われて、岡山まで戻ることも考えたけど残念ながら終電は既に出てしまっていた。

結局、家にお邪魔することになってしまった。なんだかこうなるように仕組まれていたように感じていた。私が歩いているところや家にお邪魔するところもなんだか写真に収められていたような気がする。

男の家は、思った以上に広く綺麗だった。男は本当に何もする気はないようだった。シャワーしかないけど、とシャワーを貸してくれた。私はありがたく借りた。パジャマを持ってきていないというと、男のものを貸してくれた。私はここにくるまでにだいぶこの男と仲良くなっていたし、警戒心はどんどんとなくなっていた。正直男はイケメンだったから、なんかもう、なるようになればいいや、という気持ちがあったのは事実だ。
「僕は、ソファーで寝るから、ベットはどうぞ。」
そう言われて、私は大きなベットを独り占めすることになった。でも、なんだかここにきて寂しい気持ちになる。
「何?」
男がこちらをみて策士そうな笑みを浮かべている。もしかしなくてもやり手なんだろうなと思った。私は緊張して、首を横にふった。
「そう。」
男は私の写真をおさめていたが、そのカメラの電源を落として、テーブルにおくと、私の座るベットのきしに腰掛けた。適度な距離だった。
「私、大学にいけなくなっちゃって、ほぼ引きこもりだったんです。」
私は自分の話を始めた。今年の春から復学すること、正直怖いこと、あと、がんばることがよく分からなくて、これからどう生きたらいいか分からないこと。もう死にたい、と毎日考えてしまってそれが辛いこと。徐々に嗚咽混じりになる私の話を男はうなずきながら聞いてくれた。なんか最後はよしよしと宥められていたような気がするけど、途中から疲れて意識が朦朧としていつの間にか寝てしまっていた。「自信を持って」とかなんとか言われたような気がした。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み