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文字数 609文字

「あ……あの……あれ、誰ですか?」
 笹塚は衛視と呼ばれる国家公務員だ。
 職務は国会の警固・警備。
 その笹塚に、奇妙な質問をしたのは、女性の2人連れ。
 片方は五〇代ぐらいと思われる、もう片方は三〜四〇代の可能性が高い外見。
 見学に来た観光客ではないようだ。
 2人の女性のスーツ姿から、笹塚は、そう思った。
 だが……。
「どなたの事ですか?」
 2人の女性が指差す先には……人が多過ぎて、誰の事を言っているのか判らない。
「あ……あの……判らないんですか?」
「いえ……ですから……」
 何かが、おかしい。
 女性2人の顔に浮かんでいる表情は……恐怖。
 2人は、スマホを見ながら何かを話している。
 複数の人物ついての会話。
「あの顔……誰?」
「でも……伊切さんにも見えた……一度、会った事が……」
「どうなってんの……?」
「ホントに、あたし達以外には……見えてないの?」
「それに……何で、2人……?」
「わかんない……」
「あの、だから、どうされ……?」
 笹塚が、そう声をかけた瞬間、2人の女性は、笹塚に背を向け、走り出す。
 ゴキャっ……。
 走り出して数秒後、齢上の方が転ぶ。その瞬間、嫌な音がする。
 転んだ女性の右足の足首から先の向きがおかしい。
 笹塚は無線機(インカム)で応援を呼ぼうとしたが……どう説明すれば良いか判らない。
 見える範囲には、他に何人もの人間が居るが、ほぼ全員が何が起きているか理解出来ないまま、固まっているようだ。
 何故なら……。
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