序章1 成人の義
文字数 1,794文字
私は、牛車にひかれ、成人の義に移動している。
15歳を迎えたその日であった。
父は公家に属する。母はもうこの世にない。
母は側室であったが、父から母へ、そして私への愛情はあった。
正室には、世継ぎあった(嫡子)。
側室の子だからと言って虐められるたり迫害されることなく生活していた。
ただ、嫡子には一生仕えるという使命を感じていた。誰に言われたわけではないが、自然とそう思っていた。父への恩返しとして。
成人の義を行うのは、内萌芽宮である。
嫡子以外の子は、この義を行う義務はなく、行わない方が多い。莫大な費用が掛かるからである。
それを考えても、私は愛されている、大切にされているのだと思う。
私は、普段、邸の中の離れで暮らしている。じいやが常についている。教養から武術まで、全て教えてくれた。
私が、町に出ることはほとんどない。
牛車から見る町の風景
この都市のほとんど(95%)は庶民である。庶民は、公家でも、武家でも、法家でもない者の総称である。そして、庶民の中には、遺児と呼ばれる子がいる。
異民との混血児であり、頭に角が生えていたり、手が羽であったり、中には目が6つあったりとその様態は様々である。
しかし、遺児の多くは15才、つまり私の年になる前にその生涯を終える。
遺児およびその家族は、迫害を受けたりするが、一部の人間は神聖な者として崇拝していると書で読んだ。
政府は、遺児達の存在を無視するかのように、これといった措置を何も取らずに、ただただ放置していた。
今の政府は、公家、武家、法家からなっている。その昔は、宗家があり、その下に公家、武家、法家があった。宗家は、この世の産みの親であり、いわば神の一族である。公家は、良心や理性を、武家は力や防衛を、法家は秩序と統制を司り調和をとっていた。しかし、数百年前に公家と武家が共謀して宗家を滅ぼした。法家は、宗家と共に戦って敗れたが、残された。今は残った3家での調和をとっている。
1人の少女と目があった。
その目は黒目が大きく澄んでいて、なんとも美しかった。黒髪は、艶やかで、肩で切り揃えられていた。
歳は10才くらいだろうか?私よりも、少し幼く見えた。着ている物は、質素であるが、内側から出る可憐な美しさは抑えきれていなかった。
どこでも嫁ぎ先があるような子であった。
角さえなければ。額には、5寸(約15cm)ほどの角が1本生えていた。
じいやの視線を感じ、私は手元に視線を戻した。
そう、私たち政府側の人間は、遺児など見えないのだ。
何事もなかったかのように、じいやは、
「本日の成人の義に、親王様はとても気を使っております。音鼓(つづみ)様、よろしいですね」と念をおした。
「はい、まずは下露穂神様の泉にて禊を行い、その後、髪を結い、草薙の衣を身に付け、懐に任御宇札を入れます。その後、世良親王より冠を賜ります。その間、一切口をきいてはなりません。」
じいやは、可もなく不可もなくといった顔で音鼓をみて、頷いた。
公家は裸を見られてはいけない。例え、性交の時でさえも衣を着用したままであるのが習わしである。武家は裸になったりするらしいが、そんな野蛮は公家にはない。法家は知らない。
女性に裸を見られるは、成人の義の禊のみである。この時、決して勃起してはならず、勃起した時点で義は中止となる。話によると、巫女は透けるような薄い衣で、身体を添わせて、身体を清めるらしい。その欲情に負け、公家落ちする者がいるらしい。理性を試すこの義の関門である。
義が始まった。下露穂神の泉で衣を脱いだ。
音鼓は引き締まった身体をしている。じいやとの武術の稽古で、身体を鍛えている。いざというときは、この身で嫡子を守らなければならない。
禊の泉は、冷たく文字通り胆を冷した。
これでは、勃起のしようもない。
音鼓が泉から上がるとき、巫女が現れた。
牛車から見た黒髪、黒い瞳の少女であった。
頭には5寸の角をはやしている。
ただ違うのは、薄手の衣を身にまとい、髪にきらびやかな釵を指している。薄手の衣から、少女の身体がよく見える。下着は身に付けていないようだ。
少女はじっと音鼓の身体を見つめ、その後、恥ずかしそうに視線をそらした。
そして、「立派」と呟いた。
私は勃起した。
序1 終わり
15歳を迎えたその日であった。
父は公家に属する。母はもうこの世にない。
母は側室であったが、父から母へ、そして私への愛情はあった。
正室には、世継ぎあった(嫡子)。
側室の子だからと言って虐められるたり迫害されることなく生活していた。
ただ、嫡子には一生仕えるという使命を感じていた。誰に言われたわけではないが、自然とそう思っていた。父への恩返しとして。
成人の義を行うのは、内萌芽宮である。
嫡子以外の子は、この義を行う義務はなく、行わない方が多い。莫大な費用が掛かるからである。
それを考えても、私は愛されている、大切にされているのだと思う。
私は、普段、邸の中の離れで暮らしている。じいやが常についている。教養から武術まで、全て教えてくれた。
私が、町に出ることはほとんどない。
牛車から見る町の風景
この都市のほとんど(95%)は庶民である。庶民は、公家でも、武家でも、法家でもない者の総称である。そして、庶民の中には、遺児と呼ばれる子がいる。
異民との混血児であり、頭に角が生えていたり、手が羽であったり、中には目が6つあったりとその様態は様々である。
しかし、遺児の多くは15才、つまり私の年になる前にその生涯を終える。
遺児およびその家族は、迫害を受けたりするが、一部の人間は神聖な者として崇拝していると書で読んだ。
政府は、遺児達の存在を無視するかのように、これといった措置を何も取らずに、ただただ放置していた。
今の政府は、公家、武家、法家からなっている。その昔は、宗家があり、その下に公家、武家、法家があった。宗家は、この世の産みの親であり、いわば神の一族である。公家は、良心や理性を、武家は力や防衛を、法家は秩序と統制を司り調和をとっていた。しかし、数百年前に公家と武家が共謀して宗家を滅ぼした。法家は、宗家と共に戦って敗れたが、残された。今は残った3家での調和をとっている。
1人の少女と目があった。
その目は黒目が大きく澄んでいて、なんとも美しかった。黒髪は、艶やかで、肩で切り揃えられていた。
歳は10才くらいだろうか?私よりも、少し幼く見えた。着ている物は、質素であるが、内側から出る可憐な美しさは抑えきれていなかった。
どこでも嫁ぎ先があるような子であった。
角さえなければ。額には、5寸(約15cm)ほどの角が1本生えていた。
じいやの視線を感じ、私は手元に視線を戻した。
そう、私たち政府側の人間は、遺児など見えないのだ。
何事もなかったかのように、じいやは、
「本日の成人の義に、親王様はとても気を使っております。音鼓(つづみ)様、よろしいですね」と念をおした。
「はい、まずは下露穂神様の泉にて禊を行い、その後、髪を結い、草薙の衣を身に付け、懐に任御宇札を入れます。その後、世良親王より冠を賜ります。その間、一切口をきいてはなりません。」
じいやは、可もなく不可もなくといった顔で音鼓をみて、頷いた。
公家は裸を見られてはいけない。例え、性交の時でさえも衣を着用したままであるのが習わしである。武家は裸になったりするらしいが、そんな野蛮は公家にはない。法家は知らない。
女性に裸を見られるは、成人の義の禊のみである。この時、決して勃起してはならず、勃起した時点で義は中止となる。話によると、巫女は透けるような薄い衣で、身体を添わせて、身体を清めるらしい。その欲情に負け、公家落ちする者がいるらしい。理性を試すこの義の関門である。
義が始まった。下露穂神の泉で衣を脱いだ。
音鼓は引き締まった身体をしている。じいやとの武術の稽古で、身体を鍛えている。いざというときは、この身で嫡子を守らなければならない。
禊の泉は、冷たく文字通り胆を冷した。
これでは、勃起のしようもない。
音鼓が泉から上がるとき、巫女が現れた。
牛車から見た黒髪、黒い瞳の少女であった。
頭には5寸の角をはやしている。
ただ違うのは、薄手の衣を身にまとい、髪にきらびやかな釵を指している。薄手の衣から、少女の身体がよく見える。下着は身に付けていないようだ。
少女はじっと音鼓の身体を見つめ、その後、恥ずかしそうに視線をそらした。
そして、「立派」と呟いた。
私は勃起した。
序1 終わり