No.11『趣味について考える①~趣味の認定条件~』

文字数 2,627文字

僕にはいわゆる趣味というものがありませんでした。

もちろん好きな事はありました。漫画を読んだり、好きなアーティストの曲を聞いたり。
でもそれはあくまでも"好きな事"であって、"趣味"ではないと考えていました。
一時期は「趣味は寝る事です」と言っていた頃もありましたが……。
そこで一度、趣味とは何かを考えた事がありました。

趣味とは…専門家としてではなく、楽しみとしてする事柄

広辞苑にはこのように記されているようですが、そもそも「仕事が趣味です」なんて人もいる位ですから、自分の趣味に認定する為の条件なんてものは無く、考え方は人それぞれで良いのだと思います。

・やっていて楽しい事
・何時間でも続けられる事
・お金をかけるのが惜しくない事

などなど。
「いやいや、それは趣味とは呼べないよ」
なんて言われる事はまずありませんから、自分が「これは趣味だ」と思えるものがあれば、それを趣味と言って良いのです。

本来なら話はこれで終わりなのですが、僕の場合はそう簡単にはいきませんでした。
僕の頭にあったのは、"趣味とは好きな事よりも上位の存在である事"という考えだったからです。

趣味>好きな事

上の式(?)に当てはめると、僕の場合漫画を読む事(好きな事)は趣味にはならない。もっと夢中になれる事でなければ趣味とは呼べない。そんな感じです。

そして、僕の面倒な性格上「これが自分の趣味です」と胸を張って言う為には、もっと具体的な趣味の認定条件が必要だとも考えるようになりました。

情報収集の為に会社でも趣味の相談をしました。

「趣味がないんですけど、何かオススメの趣味ありませんか?」

そう聞くと、"釣り"、"車"、"料理"、"スポーツ観戦"などなど……様々な返事をいただきました。
趣味の話をしている時、どの人もとても楽しそうに語るので、本当に羨ましいと思いました。自分もいつか、こんな風に熱く語れる趣味を見つけたいと心から思ったものでした。

そんな聞き取りを何年か続けているうちに、僕の中で趣味に採用する為の認定条件が徐々に固まっていきました。

①継続して続けていける事
②その話題になると熱量を帯びて話せる事
③お金があまりかからない事
④睡眠時間を削ってでも出来る事


この四大認定条件をクリア出来て初めて、自分の趣味としようと決める事が出来たのでした。
①は、まぁ当然かもしれません。趣味がコロコロ変わる場合もあるでしょうが、ある程度持続する事は必要だと思います。
②も同様です。先ほども記した通り、趣味の話をしている時、人は本当に楽しそうに熱く語るのです。
③も重要です。趣味だからこそお金惜しまないという方もいらっしゃるかもしれませんが、僕の場合はせっかく楽しむものなのにお金がかかり過ぎるようでは、逆にストレスになるので。
そして、認定条件の中で最も重要なのは④でした。

ただ時間を惜しまず使うのとは違います。人が生きる上で重要な三大欲求の一つである睡眠欲。これを苦にせず削り、取り組める事。それが趣味認定条件の要であり、絶対条件でもありました。先にも記した通り、僕にとって睡眠は"疑似趣味"と言えるくらい大事な事だったので、それを削れるという事は、相当感情が動く証拠にもなります。

釣りが好きな人は、どんなに早起きでどんなに遠方でも海や川に出掛けるようです。
料理が好きな人(この場合は早起きしての朝食作り)も同様でした。
ちなみに、僕の場合上記のオススメしていただいた趣味はいずれも四大認定条件に当てはまらなかったので、趣味とは成りえませんでした。

そんな僕が、今の趣味である自然散策と出会ったのは今から何年前だったのか……実はあまり詳しくは覚えていないのです。

決して子どもの頃から外遊びや自然と触れ合うのが好きだったわけではなく、さっきも記したように漫画を読むのが好きな人間です。子どもの頃はそれにTVゲームも追加されており、一日何時間もゲームに没頭しているような子どもでした。

もう10年以上前でしょうか。
結婚した頃からTVゲームとも離れ、子どもが生まれてからは子ども中心の生活になり自分時間が減り、趣味探しからも離れた時期がありました。
それはちょうどそんな時期、子ども達がまだ小さい頃に訪れた夏の自然公園での出来事でした。

その公園にはハンモックが設置してあって、誰でも自由に寝転ぶ事が出来ました。
何気なく寝転んで空を見上げた僕の目に映ったのは、青々と繁った無数の葉の隙間からの木漏れ日の輝きでした。


※↑本物とは違いますが、こんな感じの景色でした。

それまで木をゆっくり見上げる機会があまりなかったとはいえ、その光景にとても感動した事を覚えています。
今思えば、それがきっかけで木漏れ日を生み出す木と、葉と、光と、空の組み合わせを探すようになった気がします。

木漏れ日探しは少しずつその範囲を広げ、自然散策へ繋がっていったのでした。

あれからどんな散策を経て今の自分になったのか正直覚えてはいませんが、過去のスマホに残った年々増えていく無数の木々の写真を見返す限り、その熱量もまた年々増えているようです。
それはつまり①と②はクリアしていると言えます。そして散策は自然が相手なので基本お金はかからず③もクリアしています。
そして、自然散策を始めて数年後、早朝5時からでも苦痛なく散策に出発出来ている自分に気づいた時、最も重要な認定条件である④をクリア。自然散策はめでたく認定条件を全て満たしました。

「僕の趣味は自然散策です!」

面倒臭い遠回りと思われるかも知れませんが、この経過を辿った事で、僕はようやく胸を張ってそう言えるようになりました。そう言えるようになった事が、きっと死ぬまで続けられるだろう趣味と出会えた事が、本当に幸せだと思っています。

僕にとって自然散策がそうであるように、読書が好きな人、音楽が好きな人、スポーツが好きな人、そしてあらゆる事柄にそれを好きな人がいて、それぞれが違った事を同じ様な熱量で夢中で楽しんでいる。それが趣味なんだと思います。

自分から探しに行って見つかる趣味もあれば、偶然出会う趣味もある。そして、趣味との出会いに年齢は関係ない。それも学びました。

もちろん、僕のように面倒臭く考えず、楽しい事を全て趣味だと言っても何の問題もないでしょう。むしろ、そっちの方が気楽に楽しめるはずです。

ただ、考え方が面倒臭い僕の場合は、趣味一つ決めるだけでも認定条件と時間が必要だった。それだけの事でした。
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