第5話

文字数 656文字

 そして、今、このありさまである。
 深田の寝息はさっきより大きくなっている。高鼾とはほど遠いが、リラックスのほどがうかがえた。
 婚活では得られなかった好きな顔の男との昇天セックス。しかも後腐れなし。
 これに自分はつられたのだ。愚かだと思うけど、いいではないか。どうせ自分は関東を離れるのだ。
 旅の恥は搔き捨てだ。ちょっと違うけど。
 それにしても、ずいぶんと声をあげてしまった。
 雪子は声を出すほうか、出さないほうかというと、出すほうだ。しかし、今夜ほど声をあげたのは初めてかもしれない。
 好みの男との後腐れのないセックス。それがこれほどまでに気持ちよく楽しいとは。
 男たちが風俗にはまる理由が良く理解できた。
 今後、もし結婚することがあったら、旦那の風俗遊びには寛容になろうと雪子は思った。
 それにしても、二度と会うつもりがないとはいえ、今夜は弾けすぎた。
 深田とはベッドを共にするのが初めてなのに、雪子はふんだんに口を使ったし、深田にも口でしてもらった。
 こんなことは今までなかった。
 もうちょっと遠慮や段階というものがあったのだ。
 年をとり、羞恥心をなくしてきていたり、やけくそにやっていたり、そういった面はもちろんある。
 しかし、それだけだろうか。
 隣で眠る深田の顔はさっきよりも随分とだらけた気がして、雪子は思わず苦笑した。
 そんな深田の寝息と自分の呼吸を合わせてみる。
 すーはー、すーはー・・・
 そんなことをしているうちに、雪子はゆっくりと深い眠りに落ちていった。
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