死神ジュンの葛藤 第5話

文字数 671文字

「というわけで、あなたに命をかける覚悟がおありかしら?」

猫に向かってスゴむ死神
その姿に威厳は微塵も感じられない。



「あー、悪いがその、もう一度説明してくれまいか? 歳を取ると物分かりが悪くなってな」



「んも~、ちゃんと聞いてらしたの? いいですわ、じゃあもう一度だけ説明して差し上げます」

なぜか小指を立てながら説明を始めるジュン



「今から(わたくし)が行うのは心象風景を具現化する大魔法です。これは現実を術者の心象風景で強引に上書きする禁呪中の禁呪ですの。 今回は(わたくし)が術式を発動させて、あなたの頭の中の風景を具現化します。 ですけどこれには膨大な魔力を必要とする上に、術者やその対象にも危険が伴います。要するに死にかけのあなたがやると多分タダじゃ済まない、ってことですわ。それでもやりますの?」



「いや、構わんよ。どうせ老い先短いこの命、あの人のために使えるなら本望だよ」

そう言って猫は穏やかに笑った。



「そうですか、わかりましたわ………」

ため息まじりで準備を始めるジュン。



恐らく、この儀式は年老いた猫の生命力全てを奪い去るだろう。

自殺ではないにしろ、わざわざ死を早めるのは、死神ジュンとしても本意ではなかった。



ジュンは猫の頭に手をかざし術式を展開し始めた。



猫から膨大な情報がジュンに流れ込み…



それをジュンが媒介となって具現化する…



すると辺りはみるみる浸食されて、猫の頭の中にあった心象風景が姿を現してゆく…



「成功ですわ」

満足気にジュンが呟いた。



「さぁ、あなたもご覧になって! こここそあなたが思い描いた世界ですわ」


ジュンにそう促され…

猫はゆっくりと目を開けた…
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み