死神ジュンの葛藤 第4話

文字数 707文字

老婦人は猫が気がかりだと言う…

猫は老婦人に桜を見せてやりたいと言う…



「あーもう! 全くどいつもこいつも(わたくし)のことを何だと思っているのかしら? これではまるで街の便利屋ですわ!」

などと空を飛びながら愚痴をこぼす死神約一名…



「延命が無理なら、逆に桜を強制的に咲かせてしまうのも一つの手よね? 今から気温をガンガン上げてやればあるいは???」

などと今度は対処法を考えるのに余念がない。



そんな時、死神レーダーに強烈な反応があった。

しかも方角は老婦人の入院している病院の方からだ。



「いけないッ!!」

ジュンは急いで病院へと向かう。



老婦人の病室では緊迫した空気が流れていた。

医師や看護師が、測定器具の数値を難しい顔をしながらにらめっこし、それを親族たちが神妙な面持ちで見つめていた。



ジュンが見たところ、老婦人の命は間もなく尽きようとしているところだった。



「思ったより早かったですわね。やっぱり生に執着がない人間はそれだけ早く亡くなる、ってことかしら?」



ジュンは仕事道具の大鎌を取り出した。
魂を刈り取るためだ。

そうしなければ魂が迷い、地縛霊や、時には悪霊となって現世に留まり続けることになる。

そうなってしまった魂は輪廻の輪を外れ、二度と転生出来なくなる。



測定器具から『ピー』という一定の電子音が流れ出す…

と同時に、老婦人の身体から魂が抜け出した。



老婦人は死んだのだ。



すかさずジュンが大鎌を降り下ろし、老婦人の魂を確保する…



「ふぅ、 間に合いましたわ」

ジュンは安堵した。
少なくともこれで老婦人の魂が迷うことはない。



「さぁ、もう少しお付き合い願いますわよ!」

ジュンは魂となった老婦人を大事そうに抱えると、猫が待つ家へ向けて飛んで行った。


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