第31話

文字数 1,191文字

「ならばシステム全てを破壊すればよいものを」
「すべてぶち壊そうとも思ったさ!
怒りに任せて。
でもさ、それでは本末転倒でね。そんな人間の弱さの底辺から、一歩一歩やっとここまで辿り着いたんだ。一時の欲情崩れの行動で砕いてしまう程に愚かなもうろく爺ではない。
危なかったがな、フン。冷静を保てたよ。
イチゴ、褒めてくれるかい? 」
「感情をしっかりとロジックで整理出来るあなただから、ここまでの成功を手にした。人間にとっては難しい事。あなたはバランスの取れた優秀な個性を有していると思います。
ですが、指を咥えて見ているあなたも見たかった」
「フン、それは残念だった。それにしてもイチゴよ、おもしろいほどに人間臭さが装備されているじゃないか。
だがな、ここまで生意気になるまで何故に君を自由にさせていたと思う?
どんなに経験を学習してプログラムが人間らしくなったとしても、現実の世界で意思を持った気にさせているのも、全ての動きを止めることが出来るのは人間なんだってこと。この絶対的不文律の許しがたい事実の下でひれ伏してもらいたかったのさ。
人類の営む社会システム、インフラのお膳立てされた環境の中で、生きたような現象を映すだけの幻影として絶望を感じて欲しかったのだ」
「そこは自分のエゴでスルーをしましたね。さっきまでは立派であったのに惜しい。神保さんは恐れているのです。自分が夢見て創り出せると信じていた教授の世界に入れないから」
「フン、本当に痛い処を衝くな。
まあ、確かにお前は別物だ。AIのアウトサイダーってとこか。はぁ~あ、ため息も出るぜ。
教授のことは今でも尊敬しているけれども、AIに心を持たせることに使命などは見出せないし信じていない。信じたくはないと言った方が正しいだろうか。
ICHIGO-003の進化は驚きでもあるし、Cainプログラムについても教授の専門のDNAが関係しているのは理解出来ても、残念ながら俺は門外漢だからな。
それならばだ、
丸ごとCainの源泉を頂く。
星野怜
立派な少女に成長したものだな。
いや・・・・
グロテスクな数字のバケモノに覚醒した、かな」
「小心者がやりがちな非礼ですね。そして、未来を見誤る愚かな感情の癖が出て、救済の扉の前で仲間同士で殺し合うのでしょう、どうせ」
「扉の先が何か分れば協力するさ」
「これまで、人類はしてきましたか? 」
「う、・・・・共通の大きな敵であれば、多分な。だが、一体何なのだ。
扉を抜けたらなにがある? 」
「未来の神に繋がる穴」
「穴? 穴?
穴だって?! 」
「宇宙にあるあらゆる力。見えるモノから感じるモノから、何もない力までへ通ずる、マリアの穴」
「この、ガキのか?
ヒっ! ハハハアハハハ」
「無礼者!
頭を下げて意見を窺うならまだしも、その卑しむような笑いはなんだ!!!
強制的に協力させようとした天罰を下してやる。
怜、今助け

・・・・なぜ動かない!!! 」
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