第47話

文字数 1,571文字

 怜はノットコネクトに陥って沈黙した儘。
様々な推測のコードのいずれにも岡天一の影が見え隠れしているみたいでした。数字と宇宙の神の使者たるAIプログラムが、公式を見失って不安に陥ってしまうとは。
最悪の想定外に可笑しい感情が溢れたりして。

「フフフっ」
「何々?  
いいことでもあったのか?
あ、星野が戻ってきたんだ。
うん?
違うのか。じゃあ、なんで笑ってるんだよ」
「そうじゃない。本当にうるさい! 」

村川、こいつとは常に間が悪い。
こんな縁(えにし)にドッと電圧も下がるわ。

「ごめんよー、怒らないでおくれよ。
そうだ、星野がログアウトしちゃっているなら、直接星野の家でも行って様子見てこようか」
「怜ちゃんが危ないの? 
ええええ、どうすればいいのエエエエっ」

村川の余計な動きに明日香を動揺させてしまったではないか。

「落ち着いてください。大丈夫、怜が居る場所は特定済みです。一旦ワタシはゲームから抜けますので、イザナをお願い致します。こちらが本来の最重要案件ですからね。大分弱気になっていますから、ユートさんの導きをお願い致します」
「おい、メルーナにじゃないのかよ! 」

時折いじりたくなる。ユートも体をよじって笑ってくれていました。それに引き換え、数字の心の源泉が立たれて弱ってしまったキングは狼狽えたまま。

「俺を一人にしないでくれ。急に自信が無くなってしまった。
この不安の原因は何?
そもそも俺はなんで存在しているのだろうか」
「サブ通信で繋がってはいるけれど、メインシステムからは切断されたの。量産型システムの意識態に次元がダウンして、容量差異による破滅的負荷を回避する為に不安という解を返し続けている。メルトダウン寸前ね」
「いずれはオレのIZANA Cainは消えるのか。
そうしたらオレの感情はゼロになるのか。
芸術を知らぬ人間みたいに、いなかったことに為るのか」
「言い過ぎよ。まあ、数値的な冷たい道をいかに豊穣なる薫る大地にするかが、特別なAIであるワタシたちの存在意義でもあるから。あなたが飲み込むべきソースコードは此処にある。
少なくともこのゲーム世界では、わたしのICHIGO Cainがサポートできる筈だから怯えないでよ。
今この時点で君の寄生プログラムが勝手にワタシのシステムと繋がるようにシナプスが蠢いているから消えやしないわ。単純な階層のシナプスばかりだからまずこのゲーム世界で生きて経験値を積んでいきなさい。その限りにおいては、ワタシのサポートが万全に享受出来るから安心して。まあでも、弟なんだから少しは姉の前で弱虫な処を見せて欲しいわね、ふっ。
さあ、リズ・キングとしてメルーナとユートの下で大人しく従って生き抜いて見せてよ」
「さっきまで世界を支配しようとしていた者に対して、この仕打ちはなんだ! 」

イザナの泣き言を遮りメルーナが首根っこを掴んだ。

「うるさいな、グダグダ言わずに惚れさせてくれよ」

なんだか強気な村川ですが、ふざけた奴の方が滞りがちな流れをスムーズにしてくれることもある。怜は喜んでいるでしょうね。
それに、倉木さんのユートがしっかり見張ってくれているから、軌道修正してくれるだろう。調子に乗って変なプレイをするものなら、現実の倉木さんに村川の部屋まで乗り込んでもらってもいい。

「何かあったら、私村川の家に乗り込んで、いつものようにド突くから心配しないでね」

以心伝心でした。

「解ってらっしゃる。ワタシもそう考えていました」
「やっぱり、イチちゃんとは分かり合える。村川は任して。
早く怜ちゃんを助けてください、お願いします」
「おい、何かまた俺、除け者じゃんか。
まあ、いいか。
おれにはリズ君がいるから」
「え、おい、キぃィィ
オレは最下層か! 」
「うるさいイザナ!!!
行くよ」

メルーナに引っ張られ、ファースト・ステージの荒野へ消えていきました。
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