恋人なようでなれない俺たち
文字数 1,337文字
だよな……でも付き合ってる実感なくて。ほら、見てみろあれを。
俺は中庭でキスしたり、身体を触りあったりとしている男女カップルを指さした。中庭は木で囲まれているから絶好のいちゃつきスポットなのだが、残念なことに……こちらとしては喜ばしいことに、屋上から見える。
カップルのイチャつき。どうだ?知らなかっただろ?毎日あれを見ている俺の身にもなれ。
ふっ……アレを見ながらシコシコしていたのね?ふふ、それで私にお手伝いをしてほしいと?
おー、よく分かったな。じゃあ今からやるから。手伝ってくれ。まずは手で――
って、なにベルトカチャカチャしてるのよ!嘘に決まってるじゃない!変態!変質者!
ったく……照れるくらいなら言うなよ。俺もさっきのは嘘だよ。ちょっとからかった。
サイテーだわ。
で?あれを見せて私に何が言いたいわけ?
いや、だから、俺たちも付き合ってるならああいうことでもやるんじゃないかなーって。
したい!!けど、ああいうカップルにはなりたくないな。
人目が気になるじゃん!現にこうして俺たちに見られているわけだし。
ふうん、見られないところでイチャイチャしたいわけね。どんなプレイをするつもりかしら?やっぱり変態ね。
いたって普通だよ!俺は健全なお付き合いがしたいんだ。なんかいい雰囲気になって、特別な時にさ……だから昼休みなんかにパパッといちゃつかないんだよ。昼休みなんて1時間しかねーし、そんなことしてたら昼食べられないし
そうね、お昼は重要ね、なによりも食事が優先されるわ。こうしてる間にももう残り時間が10分しかないもの。
マジだ!くそう昼休みが早い!
なあ、そろそろ一緒に教室戻ろうぜ。同じクラスなんだしさ。
嫌よ。
私みたいな学校一の美少女が平凡ぼっちなあなたと一緒に戻ったら噂されるもの。めんどくさいの。あくまでこの屋上だけに留めておきましょう。
そうだけど、今は秘密にしておきましょう。私のファン、めんどくさいわよ。ぼっちな立場が虐められるなんてことにもなるかもしれないし。
そうだった……お前にはファンがいるんだったな……。殺されそう。
そういうこと。貴方と私の関係はこの屋上での1時間だけよ。……今はね。
さて、お昼も終わるしお先に教室へ戻るわ。……ごちそうさま。今日のお弁当もおいしかったわ。
あ、それと、カップルって平成のこのご時世では死語だから。人前で言わない方がいいわよ。じゃあね。
ええっ!?まじかよ、カップルってずっと言ってたわ!
薫子が屋上を去って行ったのを眺めていた。
今は、ということはいずれ屋上以外でも話しかけていいことになるのか…?で、いつかあのカップルのようにイチャイチャしたり……?
でも、それもいいくらいには薫子とのことを考えてしまっている。あれはあれでかわいい。顔じゃなくて、もちろん顔は最高なんだけど。クズなんだけど。反応とかかわいい。話しやすいし。意外に、もうハマってしまっているのかもしれない。
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