回想:手作り弁当あーん
文字数 1,178文字
というわけで、そんな薫子とのやり取りを交わした翌日。
俺が先に来ていると彼女は屋上にやって来た。
もちろん、鍵は開けておいて。
よお。本当に来たんだな……昨日のあれは夢じゃなかった。
信じていなかったの?
昨日のやり取りは紛れもない事実……あなたはここで私を好きにしていいのよ
………………
ダメよ!ダメダメ!!!!!そんなの、ダメに決まっているじゃない!!そういうのは順序が必要なの!まだキ、キス……とかできないわ
そ、そんなことないっ!そんなビッチじゃないわよ!わたし!
どーだか……。好きにしていいって自分で言い出したくせに。
じゃあ何ならしていいんだよ?
私を褒めたたえたり、私が寝る為の膝枕を用意するとか、そのお弁当をあーんで食べさせてくれるとかなら全然ありね!
あーん、だよ。自分で言い出したんだろ。
卵焼きでいいよな?ほら、口開けろ。
お、美味しいわ!!!
ふわふわで、甘くて、すっと口の中で溶けるわ!この卵焼き!!!
そりゃよかった!卵焼きだけは自信作なんだよなー。
俺友達いないから食べてくれる奴いなくて。褒めてくれるの初めてだ。
えっ、これあなたが作ったんだ……というか全部手作り?
ちょっと他のも食べさせなさい!
俺が食べている弁当をひったくってすごい勢いで食べる薫子。
俺さっき食べ始めたばかりだから全然食べてないんだけど。
まあ、嬉しそうだからいっか。
それに、こうやって美味しそうに食べてもらえることがうれしい。
完食どうも。美味しそうに食べてもらえて感想貰えてうれしいよ。
私も初めて人が作ったものを食べた。
あなたの味、とっても好みだわ!
えっと、じゃあさ、明日から俺が作ってこようか?お前の分の弁当
えっ、いいの!?毎日食べられるなんて……っ!それに、食費が浮くわ!!
ふふふっ……あっ、さっきは夢中で食べちゃってごめんなさい。
代わりと言ってはなんだけど、このメロンパン食べて。
久々に食べるメロンパンは美味かった。
ほんとは、彼女に手作り弁当をあーんしてもらうのが夢だったんだけど……美味しそうに食べてくれるこいつを見たらどうでもよくなった。
料理できなさそうだしな。
この日から、毎日薫子に弁当作ってやっている。
ついでに1つ多く作るだけだし、あまり手間は増えない。どうせいつも余ってるしな。
美味しいと言って食べてくれたあの表情が忘れられなくて、脳裏から離れない。
また見てみたい。そう思わせる表情だった。美少女の笑顔、最高。
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