そんなわけで、もはやこれがいつもの日常風景

文字数 1,803文字

体育も終え、昼休み、いつもの屋上。
昨日徹夜でゲームをしていたから眠いわ、とても眠いわ
そう言って彼女はふわぁと大きな欠伸をする。本当に眠そうだ。翌日辛いのが分かっているのだからそこで中断して、学校から帰ってやるとか明日やるとかすればいいのに。
……なにその中断して寝ろよって言う目は。あそこでやめては区切りが悪かったのよ、それくらい察しなさい
顔に出ていたのか言いたい事を見抜かれてしまった。察しなさいと言われても趣味と言える趣味のない俺にはゲーマーの気持ちは分からない。
そういえばさ、さっきの時間体育だったけど、またサボったのか?
愚問ね、サボるに決まっているじゃない
思ったんだけど、お前が体育サボる日ってテニスとかバレーとか二人組作るやつだよな
……そうね、というか何で知っているの? 女子と男子は体育別のはず……女子の体操服姿が見たくてこっちを見ていたのかしら?
断じて違う! お前はサボっていたから知らないだろうけど、今日は合同だったんだよ
それじゃあ貴方と一緒に運動が出来ていたというわけね
意味深な言い方するなよ……というか何処行っていたんだ
今日はバレーだと分かった瞬間、先生、お腹痛いですって言ってお腹を押さえながら保健室に行ったわ
すごいなその技、サボりのプロかよ
私病弱っぽいから信じられやすいのよ。まあ、でもスポーツの中でも陸上とか水泳は好き、テニスも一人で壁打ちなら好きだわ。チームプレーは総じてクソ、個人競技以外滅ぶべきよ
その発言スポーツ選手に喧嘩売ってるよな
貴方にも分かるはずよ、私と同じで友達いないし
うん。その通りなんだけど、他人から面と向かって友達いないとか言われるとへこむ
実際俺はぼっちだ。

修学旅行の班決めとか余ってよく知りもしない奴らのグループに入れて貰った。その時は口には出さないものの、何でお前居るんだよオーラがひしひしと伝わってきてさっさと家に帰りたかった。二十分でさえ一時間のように感じた。慣れると一人と言うのは楽で、休み時間は睡眠に費やせるし、喋って体力を消耗しないので、一人の気楽さに気付いてからは進んでぼっちとなった。


そんなわけで俺も人のことは言えないが、薫子は酷いほど協調性が欠落している。
おまけに気に入らない人間には暴言も吐く。
こんな人間性で、社会に出て生きていけるんだろうかと心配になる。
俺たちは高校三年生だ、来年はもう卒業して進学か就職かしていなきゃならないのだ。

あら、その顔はこいつ進路どうすんだって顔をしてるわね
何故分かるのか。俺はそんなに言いたいことが顔に出やすいのだろうか。
それともこいつは読心術を極めた使い手かエスパーで俺の考えは全て見抜かれているんだろうか。
ふふっ、それなら心配ないわ。私、進路調査票にはニートになる、それか専業主婦って書いたの。貴方の専業主婦になるから私を養ってよね
は?Fランの大学行くんじゃなかったのかよ?
……Fランでも、勉強しないと厳しいラインになってきたのだわ……
バカすぎる!ゲームばかりしてるからだろ!勉強しろ!一生を棒に振るぞ!就職に大学のランクって大きく関係あるんだからな!
……ふぅ、ママなのかしら?大丈夫よ、まだ入試までに半年あるしいける。私、追い込まれるとギリギリで力を発揮するタイプなの。
ふ、不安だ……
このお弁当とても美味しいわ、いつも私の分も作ってくれてありがとう。さすがママね。
あ、ありがとう……って俺はママじゃねえ!

ママ扱いされているが、よく考えたらこれってプロポーズなのだろうか。自分で作った弁当を食べて貰い、美味しいと言われて悪い気はしない。そんなことを言われては一生作り続けてあげたいという気になってしまう。

こんなに可愛い子を嫁に貰えるなんて俺は幸せ者なんじゃないか。
クズだけど、外見はとても可愛い。ああ、でも確実に尻に敷かれそうだ。と、薫子との結婚生活に思い巡らせていると、彼女は微笑んで言った。
あ、結婚と言っても、お給料だけ口座に振り込んでくれたらいいわ。籍だけ入れて別居生活がしたいの、誰かと一緒に暮らすだなんて考えられない
ああ……あっそ
一気に夢が砕け散る。こいつを養ってやろうかと思った途端その反応……ぼっちでも平気な強メンタルを持つ俺でさえ傷ついた。
お前を養える男なんて生涯俺だけだということを分かっていない。分からせてやりたい。
クズだけどそこが可愛いなと思ってしまう。
そんな奴だ、黛薫子という女は。
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登場人物紹介

黛 薫子 (まゆずみ かおるこ)


学校で一番の美少女と言っても過言ではない。

孤立しており、友達がいない。

クラスではあまり喋らないが、喋ると分かる重度のクズ。

皆川 佑 (ミナカワ タスク)


モットー 適当に生きる。

だが、意外にも面倒見がいい。

高校生活をぼっちで生きることを決意する。

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