第5話

文字数 14,429文字

櫻井 琴音

 二〇〇一年七月


 奈央との出会いは放課後の教室だった。
 高校二年生の夏、琴音は土浦第二高校の吹奏楽部に所属しており、夏のコンクールに向け、部活動終了後も、教室に残ってトランペットを吹いていた。
 琴音が練習していた教室は二年三組で琴音のクラスは二年一組。琴音の所属する吹奏楽部は各楽器ごとにチームを組み、チーム練習を割り当てられた教室で行う。琴音の担当楽器であるトランペットのチームは二年三組だったため、琴音は居残り練習も引き続き、その教室で行っていた。
 日が傾き始め、オレンジ色の空が、青と紺色の淡いコントラストを呈してきた頃、がらがらと後ろの教室のドアが開く音がした。
 琴音はびくっと肩をすくめ、後ろを振り向くとそこには、陸上部のジャージを見に纏い、首にかけたタオルで汗を拭きながら佇むショートカットの美しい女性がいた。彼女が奥園奈央だった。
 奈央は同学年の中ではかなりの有名人だった。美しい美貌もさることながら、陸上部に所属し運動神経も抜群。さらに持ち前の明るい性格でコミュ力も高く、男子、女子問わず誰にでも分け隔てなく気さくに喋りかけることから、男子からの人気は当然の事、女子からも人気も相当なものだった。むしろ女子からの人気の方が高かったかもしれない。学年中の生徒が奈央と仲良く成りたがっていた。
 奈央と仲が良いことが一種のステータスのようになっていた。この高校にもいわゆるカースト制度のようなものがあり、当然奈央のグループはカーストのトップだ。生徒たちは奈央と仲良くなることで自分もそのカーストの一員になれたんだと自負したいのかもしれない。
 一方の琴音はあまり目立つことはない、いわゆる地味な部類にいる女子であった。フチなしの眼鏡に髪は黒髪のロング。前髪は目にかかるほど伸びていて、スカートはしっかり膝を隠していた。普段は教室の隅っこでアニメ好きの女子達がコソコソと集まり、アニメ談議に花を咲かせていた。琴音と奈央はクラスも違えば、部活も違う、共通の友人だっていない。普通に学校生活を送っていれば、接点が全くなかった。琴音にとって奈央は全く違う次元にいる眩しすぎる存在だった
 そんな奈央が今この瞬間、教室で自分と二人きりでいる。琴音は緊張のあまり視線を落とし、うつむいてしまう。そんな琴音をよそに奈央はスタスタと琴音に近づいてくる。琴音は息が止まりそうになる。同じ学年の女の子にこんなにも緊張してしまう自分が恥ずかしくなり、顔が赤らんでくる。奈央が椅子に座る琴音の傍にやってきた。
「そこ、私の机なんだ。忘れ物しちゃったの。ちょっと机の中見て良い、櫻井さん」
 琴音はどきっとして、奈央の顔に振り向く。
「ん? どうかした?」
「いや……」
「お、あったあった」奈央は机から筆箱を取り出した。
 すると奈央は机の上に無造作に置いてある琴音の携帯電話を凝視した後、「え、これって⁉︎」と声を上げて驚き出した。
「これ『君と青い空』のチアキちゃんじゃない⁉︎ 好きなの?」奈央は琴音の携帯電話につけられているアニメキャラのストラップを見て、愛嬌のある笑顔を向けた。
「う、うん。好き。奥園さんも?」琴音は呆気にとられながらもなんとか答えた。
「めっちゃ好きだよ! 漫画も全巻持っているし、アニメも毎週欠かさず見てるよ! でもこのアニメ好きな人中々いなくてさぁ。だからうれしくなっちゃって」
 奈央は目を輝かせて琴音を見つめた。
「あ、ごめん。私ばっかり喋っちゃって。練習中だったのにごめんね。櫻井さんトランペット上手だね。といっても私、音楽センスないから私に褒められてもうれしくないと思うけど」
「あの……」
「ん?」
「私の名前知ってくれていたの?」
 奈央は「え?」というと大きな目で琴音の顔をじっと見つめ「当たり前じゃん!」と満面の笑みで答えた。
「櫻井さんとは一年生の頃からずっと話してみたかったんだよね。でもなかなかきっかけがなくて。ほんと忘れっぽい自分に感謝だわ。しかも趣味も合うなんて──」
 奈央は琴音の右手を両手でぐっと掴んで、こう言った。
「ねぇ櫻井さん、私と友達になってくれない?」
 琴音は早すぎる展開についていけず、口を開けてぽかんとしていた。
 我に返った瞬間、腹の底から喜びが溢れだしてきた。
「もちろん。私なんかで良ければ」
 冷静に答えたが、内心はしゃぎたくなる程嬉しかった。憧れの存在だった学年のマドンナからこんな事を言ってもらえるなんて。
 だけど疑問は残る。
「ほんと? ありがとう!」
「でも奥園さんみたいな可愛い女の子がなんで私なんかとお話したかったの?」
 純粋に疑問だった。自分みたいな地味な女にどうして興味を持ってくれたのか。
「櫻井さんさぁ、自分の魅力に気付いてないでしょ?」
「魅力?」
「櫻井さん、この学年ではトップクラスに可愛いよ」
「そんなわけないよ!」
 琴音はつい声を荒げてしまう。奈央は虚を突かれたように固まっている。
「あ、ごめんなさい」
 琴音はしょんぼりして言った。 
 自分に魅力がないことなんてわかっている。小学校の頃は少し男の子にモテたこともあったが、それも長くは続かなかった。視力が落ちて眼鏡をかけて、髪の手入れもおざなりになってから、鏡で自分の顔を見ることも嫌になった。イメチェンしようと思ったこともあったが、急に色気づいたとクラスの女子から思われるのも嫌で、目立たず騒がず生きてきた。
 それに学年一の美女に可愛いなんて言われるのは皮肉だと捉えてしまう。そんな卑屈な自分がすこぶる嫌なのだが、こればっかりは理性では止められない。
「よし決めた!」奈央は左の手のひらに右手の拳を振り落とした。
「櫻井さん、明日暇?」
 明日は土曜日で珍しく部活動も休みであった。
 特に家の用事もなかったため、「暇だけど」と答えた。
「じゃあ明日、私に一日付き合って」奈央が真剣な眼差しで言う。
 琴音はその圧に押され、気付くと「わかった」と答えていた。
「じゃあ決まりね! ちなみに櫻井さんまだ練習する? 一緒に帰らない?」
 本当はもう少しやろうかと思っていたが、口では「うん、帰ろう」と言っていた。
 帰り道、同じ学年の人と出来れば会いたくなかった。なんであんたなんかが奈央と一緒にいるの? と言われてしまうような嫌な想像が膨らんでしまう。
 しかし、もう既に夕方が過ぎさり、空は闇に包まれていたこともあって、幸いにも同級生たちと出くわすことはなかった。
 奈央とは途中まで帰る方向が一緒で道中はお互いが好きなアニメの話で大いに盛り上がった。高校生活の中で一、二を争うほど楽しい時間だと思えた。いつの間にか奈央は琴音を下の名前で呼んでいた。お互いのメールアドレスを交換した後、別れ際、奈央は琴音にこう告げた。
「また明日ね、琴音。詳しい集合場所とかは後でメールする。それと私のことは奈央って呼んでね」
「う、うん、明日ね。奈央」琴音がぎこちなく答えると、奈央は屈託のない笑顔で手を振ってくれた。
 家に帰った後も、琴音は頬が緩んで笑顔が止まらなかった。母の優子から「何をずっとニヤニヤしているの、気持ち悪いわねぇ」と冗談混じりで言われたほどだ。遠足を翌日に控える小学生のように明日が楽しみで中々寝付くことが出来なかった。

 メールで決めた待ち合わせ場所に翌日の朝十時ごろ、二人で落ち合った。
 そこは眼科だった。琴音の頭にはクエッションマークが浮かぶ。ふと昨日のメールで『保険証忘れずに持って来てね』と言われて不思議だったのを思い出した。
 待ち合わせ場所には既に奈央が待っていた。琴音は息を呑んだ。白いブラウスに薄青のレーススカートを身につけ佇むその姿はモデルそのもので、美しく輝いていた。神々しさすら感じられる。普段してない化粧もしていて、可愛さに一層磨きがかかっていた。
 琴音は急に恥ずかしくなった。安物のジーンズにベージュのシャツを羽織り、いつも通りのすっぴん眼鏡姿の自分と目の前にいる美女を比べるとみすぼらしさが際立つ。穴があったら入りたいとはこのことだと思った。
「おはよう、琴音。じゃあ早速行くよ!」
「行くってどこに? もしかしてこの眼科?」
「そのまさか。保険証持ってきたよね? じゃあついてきて」
 琴音は言われるがまま、奈央の後ろをついていった。
「どうして眼科なの?」琴音は先を進む奈央に恐る恐る訊いてみた。
 奈央は振り向くと、ニコっと笑い「今日は琴音のイメチェン計画をします! あなたに櫻井琴音という女の子の魅力をわからせてあげましょう」と意気揚々と言った。
 琴音はぽかんと奈央を見つめる。
「まずはコンタクトレンズにするよ。だから眼科ッ」琴音は奈央に腕を引かれ、半ば強引に院内に連れてかれた。
 幸い院内は混んでおらず、すぐに呼ばれ、早速視力検査を行った。その後、人生で始めてのコンタクトレンズをつけてもらった。目に異物を入れる恐怖からこれまで避けてきたが、つけてみるとその恐怖心はすぐに無くなった。鏡に映る眼鏡をつけていない状態の自分を見るのはとても新鮮で不思議な感覚だった。
「うん、うん。やっぱり琴音は眼鏡をかけていない方がよっぽど可愛い」
 奈央はご満悦な様子でうなずいていた。
 次にその足で向かったのは全面ガラス張りのお洒落な美容室だった。琴音は気後れした。こんなお洒落な美容室には身分不相応だと思い、入ったことなんか一度もなかった。琴音はごくりと唾を飲み込んだ。
「ここ私の行きつけの美容室なの」
「すごい、さすが奈央。でも高そう。私そんなお金ないよ?」
「大丈夫、琴音は今日カットモデルだから無料だよ」
「え⁉︎」琴音は驚きのあまり息が止まりそうになった。
「む、むりだよ」無論、無料ということに驚いたわけではない。カットモデルなんて高貴な仕事、自分には到底務まらないと思った。
「無理じゃないよ。もう話通しちゃっているから。騙されたと思ってついてきなさい」 
 奈央はまたも半ば強引に琴音を美容院に連れていった。
 中に入るとさらに驚いた。雑誌やテレビで見たことがあるような、もしくは東京の青山や表参道にあってもおかしくないような(行った事ないけど)そんな雰囲気に満ち溢れていた。
 一人の女性美容師がこちらに向かって歩いてくる。
「奈央ちゃんいらっしゃい。こちらがダイヤの原石ちゃん?」
「茜さん、おはようございます。そうそう。化けそうでしょ? まぁ今も可愛いんだけど」
「とんでもない逸材ね。私の隠れ美人センサーは伊達じゃないわよ」
 琴音がまたもぽかんとして佇んでいる間に、奈央と美容師さんとの間でどんどん話が進んでいった。茜という名のこちらの美容師は、ウェーブがかったブラウン色の髪は肩まで伸びており、仄かに香水の良いにおいがした。一見クールに見えるが、笑顔がとてもキュートな女性だった。
 座席に誘導され、挨拶を交わすと琴音はなされるがまま、髪にハサミを入れられた。もっさりとした髪はどんどん切り落とされ、見る見るうちに洗練されていく。生まれて初めてパーマをかけた。まるでUFOみたいな機械が自分の頭を浮遊し、じりじりと熱を浴びる。簡単に化粧も施してくれた。
 隣で見ている奈央は終始とても楽しそうだった。琴音にとってはそれが何より一番うれしかった。
 すべての行程が終わり、鏡を見た時、琴音は呆気にとられ、思わず目を瞬いた。眼前に映し出されている人が自分とは思えないほど輝きを放ち、思わず見とれてしまっていた。
「琴音やばい! めっちゃ可愛い‼ だから言ったでしょ、琴音は絶対可愛いんだから」 
 奈央は目を輝かせて、子供のようにはしゃいでいた。
「想像以上ね。店の前に堂々と張り出したいレベルだわ」茜も思わず唸った。
 胸辺りまで伸びていた髪もばっさり肩までカットし、ゆるふわのパーマで可愛らしさを演出し、前髪も元々目にかかるほど伸びていたが、眉毛ほどでカットし、持ち前の大きな瞳が露になっていた。不覚にも可愛いと思ってしまった。
「ねぇ琴音ちゃん。これから写真何枚か取らせてくれない? 出来ればこのお店のガラスに貼らせてもらいたいんだけどどうかな?」茜が琴音に尋ねた。
 琴音は気恥ずかしい気持ちで一杯だったが、料金も無料ということだし、断るのはもうしわけない思い、承諾した。何枚か写真を撮り、確認させてもらう。被写体で写る自分を見ると、昨日までの自分とは思えない、まるで他人を見ているかのような錯覚に陥った。写真は後日店前に張り出されるようだ。
 美容院を後にし、ルンルン気分で歩く奈央に付いていった先で辿り着いたのはこれまたお洒落な洋服屋さんだった。
「ここね、私が良く来るところなんだけど、お洒落な割に料金が安いの。私が一式コーディネートしてあげるから。だから行こうッ。琴音はジーンズも似合うけどワンピースとか女の子らしい服も似合うと思うよ」
 琴音は半信半疑だったが、奈央に言われるがまま、まるで着せ替え人形のように可愛らしい服をたくさん着せてもらった。最終的には薄いベージュのワンピースにジーンズ素材のジャケットを併せたコーディネートになった。
 試着室の鏡に映る自分はどこかの読者モデルのように思えた。たくさんの可愛らしい洋服を着させてもらい、色々な新しい自分を知れて、とても楽しい時間だった。少しは奈央の隣にいても恥ずかしくない身なりになれたかなと嬉しくなった。
 琴音は購入した洋服をそのまま着て、奈央とともに街中のカフェに向かった。奈央は終始にやにやと顔を緩ませ琴音の顔を覗いていた。
「もうそんなジロジロ見ないでよ。恥ずかしいな」
「いやぁ、私の目に狂いはなかったと思って、嬉しくなっちゃって。私が男なら絶対放っておかないなぁ」
「なにそれぇ」奈央の言葉に琴音はついはにかんで笑ってしまった。こんなに心から笑顔でいられたのはいつぶりだろうと思った。その後は大好きなアニメ談議で盛り上がり、三時間もの間、カフェで会話を弾ませた。帰り道、奈央はこう言った。
「また明日ね。ちゃんとコンタクトで学校来るんだよ。絶対みんなびっくりするから」
「うん。色々ありがとうね。すごい楽しかった」
「私も凄く楽しかったよ! またね」
 琴音が家に帰ると、優子がギョッとした顔つきになり、こちらをまじまじと覗き込んできた。娘のあまりの変貌ぶりに腰を抜かしたようだった。

 翌日、奈央の言いつけ通り、コンタクトレンズをつけて、教えてもらった化粧も施して登校した。少しイメチェンしたくらいでこれまでクラスの隅っこで地味に過ごしていた女子にそこまでクラスメイトが騒ぐことはないと琴音は高をくくっていたが、その想像は誤っていたことが早々にわかることとなった。
 琴音が教室に入るとすぐにクラスはざわついた。あんな子いたっけととぼけたことを言う男子すらいた。これまでちゃんと話をしたことがなかったクラスの中心である女子達が「櫻井さん可愛い!」と近寄ってくる。琴音自身、性格まで変わったわけではないため、おどおどしっぱなしであったが、みんなから話しかけられるのは悪い気がしなかった。
 一限目が終わった後の休み時間に奈央が教室に入ってきた。琴音を見つけると破顔した様子で歩いてくる。
「琴音! 制服姿でもやっぱり可愛い! 今日も部活終わった後、一緒に帰ろうね」
 教室がざわついた。クラスの女子達が近寄ってくる。
「え? 奈央ちゃんと櫻井さんって友達だったの?」
 クラスの女子の一人が訊いてきた。
「うん。超仲良し。昨日一緒に色んな場所二人で行って琴音のイメチェン計画を実施したのだ」奈央が得意げに言う。
「だからこんなに可愛くなったんだ!」クラスは異様な盛り上がりを見せた。
 琴音はクラスの話題の中心に自分がいることがとても不思議な感覚だった。ふと目を窓際に移すと普段琴音と一緒にいる、高野なつみと丸箸愛香が伺うようにこちらを見ていた。その理由が琴音にはすぐにはわからなかった。
 昼休みになり、いつものように琴音がなつみと愛香の二人に一緒にお弁当を食べようと二人に近づこうとすると、後ろから「櫻井さん一緒にお昼食べよう!」とクラスの数人の女子に誘われた。
 琴音は少し考えた後、「なっちゃんと愛香と一緒でも良いよね?」と言った。
 女子達は顔を見合わせてうーんと唸った。あの子達と一緒はねぇ、と言わんばかりの雰囲気だった。琴音は眉根を寄せ、顔をしかめた。
「だったらごめん。また今度ね」
 琴音はそう言い捨て、なつみと愛香のもとに歩を進めた。
「一緒に食べよ?」
「うん」なつみと愛香は少し目を潤ませながら頷いた。
 クラスの女子達は身の置き所が無い様子でたじろぎ、それぞれ離散した。
「琴ちゃん、すごく雰囲気変わったね。以前にも増して可愛くなった」お弁当を食べながら、なつみが言う。
 なつみは眼鏡をかけたショートカットで背丈も低く、小動物系の女の子だ。基本的には大人しい子だが、芯を持った頼れる友達だ。
「ありがとう。似合うかな?」
「とっても似合うよ、モデルさんみたい」愛香が言った。
 愛香はちょっとぽっちゃり系の女の子だが、愛嬌のある笑顔で少し天然が入っており、喋っていてとても癒される。
 琴音は照れ笑いをするのがやっとだった。
「でも良かった」なつみが顔を綻ばせて言った。
「何が?」琴音はきょとんとする。
「なんか琴ちゃんが今まで以上に可愛くなって、嬉しいと思ったけど、周りの女子達からちやほやされて、私たちとはもう仲良くしてくれなくなるんじゃないかと思って、内心すごい心配で不安だった」
 隣で聞いていた愛香も頷いていた。
 琴音は二人の手をそれぞれぎゅっと握った。
「そんなこと絶対ない。見た目が多少変わっても、中身は変わらずおっちょこちょいのアニメオタクなのは変わっちゃいないよ。ちょっとちやほやされたくらいで揺らぐような友情じゃないもん」
 琴音は少し語気を強めて言った。いつも温和な琴音の真剣な眼差しを受け、そのギャップが可笑しかったのか、二人はふふと笑みが零れた。
 それでも二人に自分の偽りない思いは伝わったように思えた。その後、三人はいつもの調子を取り戻し、大好きなアニメ談議に花を咲かせた。
 午後の授業の合間にはクラスの男子からもたくさん声をかけられた。男子との会話に慣れていない琴音は当惑しながらも無難な会話に努めた。
 この日以降、琴音は吹奏楽部の部活終わりに、同じく陸上部の練習が終わった後の奈央と一緒に帰ることが習慣となった。これまで琴音は吹奏楽部で少し浮いた存在だったが、後輩や先輩からもたくさん声をかけてもらえるようになり、琴音を取り巻く環境は大きく変わっていった。

 それから何日か経ったある日の放課後、琴音が教室で部活に行く準備をしていると教室の外から「櫻井さん」と声をかけられた。声がした方を振り向くと、そこには四人の女子が集まっていた。みんなぱっと見、髪も明るめでスカートも短い。琴音は見たことある人達だと思ってすぐに合点がいった。良く奈央と一緒にいる子達だとわかった。確か中心にいるのは西澤清美という名前だったはず。琴音は恐る恐るその子たちに近づいた。
「ちょっと話があるんだけど、屋上まで一緒に来れる?」
 琴音は胸がざわっと騒いだ。嫌な予感がする。
 だが、この人たちからは断れない圧を感じた。琴音はこくんと頷き、四人の後をついていくことにした。
 ちらっと教室を見ると、なつみと愛香が怯えた目でこちらを覗いている。
 琴音は大丈夫だからと力強くアイコンタクトを図った。
 屋上に辿り着くと、琴音は女子四人に取り囲まれた。その内の一人に肩を強く押され、尻もちをついてしまう。
「お前奈央と仲良くなったからって調子に乗ってんだろッ」
 西澤が物凄い剣幕で琴音に迫ってきた。
「ちょっと小綺麗になったからってお前みたいなアニメキモオタクが奈央に近づくなよ」
「お前のクラスにいる高野とか丸箸って言ったっけ? お前はあいつらみたいな芋女どもとずっとアニメの話でもしてろ。そんでラッパをプープー吹いてれば良いんだよ」 
 きゃははと女たちの笑い声が空に響く。
「なつみと愛香のことは悪く言わないで‼」
 琴音は顔を紅潮させて怒りを露にした。自分を卑下することは痛くも痒くもない。でも友達をバカにすることだけは絶対に許せない。
「ねぇこいつ泣いてるんだけど、まじウケるッ、友情ごっこおつだわ」
「ちょっと生意気過ぎるからさぁ、少しこいつ締めない?」
 周りがいいねいいねと同調する。
 琴音は女の一人に後ろから羽交い絞めにされる。目の前にいる西澤が琴音に平手打ちをしようとしたその時、屋上のドアがばんと大きな音を立てて開いた。
「琴音‼」
 うなだれる琴音は視線を上げた。視線の先には奮然とした様子の奈央が立っていた。
「奈央……」
 掠れた声で琴音は言った。
 奈央は怒りを抑えられない様子で大股で琴音に向かってくる。
「あんた達一体どういうつもり⁉︎」
 奈央は琴音の腕をとり、傍らに寄せた。琴音の手は小刻みに震えている。
 こんなにも憎悪に満ちた剣幕で凄む奈央を琴音は見たことがなかった。それは目の前にる四人の女子達も同じなのだろうと思った。さっきまでの人を嘲るような余裕綽々な表情とは打って変わって、明らかに狼狽している。
「清美、あんた達がそんなことするような奴とは思ってなかった。失望した」
「いや、奈央違うんだって。ちょっと櫻井さんとアニメの話で盛り上がっていただけだよ? 何をそんなに怒っているのさぁ」
 西澤はおどけた様子を見せながらも、目には明らかに当惑の色が宿っていた。
「ねぇ櫻井さん?」
 琴音に同意を求めるその目は反駁を許さない冷徹な光を宿している。 
 琴音はその冷たい笑みに怖気を振るうも、湧き上がる恐怖に抗い、西澤の目を鋭い眼光で見つめ返した。
 奈央は琴音のその目で確信したようだった。
「アニメの話でなんで羽交い絞めして、手を上げようとするのよ。説明しなさいよ」
「アニメのシーンを真似てただけだよ。良いシーンはみんなで真似てみたくな──」
「もういい!」
 奈央は西澤の言葉を言下に閉ざした。
「あんたらとはもう金輪際関わらない。絶交だよ。行こう琴音」
 琴音の腕をやや強引に引く奈央に連れられ、二人は二階の保健室に入った。養護教諭の金子先生は琴音が腕を擦りむいていることに気付き、手早く応急処置をしてくれた。ベットに座る琴音を奈央は力強く抱き寄せた。
「奈央? どうしたの?」
「ごめんね、私と友達になったばっかりにこんな酷い目に。あんな奴らだとは思ってなかった。ほんとごめん」
 琴音は奈央を抱きしめ返す。
「奈央は悪くないよ。悪いのはあの子達だもん。だからそんな謝らないで。むしろお礼を言わないといけない。助けに来てくれてありがとう」
 琴音の頬に雫が滴った。ふと奈央の顔を見遣ると目を潤ませて泣いていた。
「当たり前じゃない。友達だもん。これからもずっと友達でいてくれる?」
「それこそ当たり前じゃない。ずっと友達。これから先もずーっと。ね?」
 琴音は柔和な笑顔を奈央に向けた。奈央はいつもの天真爛漫な笑顔を見せて、右手の人差し指で涙を拭った。
「でも、どうして私が屋上にいるのがわかったの?」
「実はね、高野さんと丸箸さんが私の所に来て、教えてくれたの」
「え?」
「私が部活に行く準備をしている時に、二人が私の教室に来てね──」
 奈央曰く、教室で部活に行く準備をしている時に、なつみと愛香は血相を変えて奈央に駆け寄り、懇願をしてきたのだという。
「奥園さん、琴ちゃんが西澤さん達に連れてかれちゃったの、お願い助けて」
「え、琴音が? なんで清美達が……どこに行ったのかわかる?」
「上に連れてかれたから、三階のどこかか、屋上か──」
 切迫した様子の二人を見て奈央は焦りを覚えたらしい。三階はまだ一年生がごった返していると思い、奈央は足早に屋上に向かい、あの場に出くわしたということだった。
「高野さん、丸箸さんは教室で待ってる。心配してると思うから早く行って上げよう」
 奈央の言葉を受け、琴音は奈央とともに自身の教室に急いだ。
 二人が教室に入るとクラス中がざわついた。西澤達に琴音が連れていかれたのはクラス中が見ていて、その理由について憶測を飛び交わせていたようだった。琴音はなつみと愛香を見つけるとすぐに駆け寄った。二人も琴音のもとに近づく。
「琴ちゃん、大丈夫⁉︎」愛香が心配そうに眉尻を下げる。
「大丈夫だよ。奈央が来てくれたから。それより奈央に知らせてくれて、ありがとうね」
「ごめんね。私たちじゃ怖くて助けに行けなくて……」なつみが無力そうに唇を結んで言う。
 琴音はかぶりを振った。「そんなことないよ」と言う。
 すると、なつみが奈央の方を向き、口を開いた。
「奥園さん、琴ちゃんを助けてくれてありがとう。でも危害を加えようとしたのは奥園さんのお友達だよね? これからも琴ちゃんが同じ目に逢うようなら、もうこれ以上琴ちゃんとは関わらないでほしい」
 なつみは奈央の目をじっと見据えていた。しかし、奈央は一切のたじろぎを見せず、なつみの目を見つめ返した。
「私の友達が奈央に手を上げようとしたのは事実だよ。それはほんとごめん。でもあの子達とはもう絶交した。今後一切関わらない。それでももし清美たちが琴音をつけ狙うようなら──」奈央は一拍間を置いた。
「私が琴音を絶対に守る」
 なつみと愛香は奈央の決意に気圧され、口を噤んだ。
「わ、私からもお願い! 奈央は悪くないの! 奈央は私を守ってくれた。だから奈央とはこれからも友達でいたい。出来れば、なつみと愛香も奈央と仲良くなってほしい……」
 琴音は懇願するようになつみと愛香を見た。
「君と青い夏」奈央が唐突に言う。そして続ける。
「『リズムの彼方』、『一途な鈴の音』、『エルドガーデン』、『レイビリータ』……」
 奈央の口からマイナーなアニメタイトルがつらつらと出てくる。琴音となつみと愛香は顔を見合わせた。
「私もアニメ大好きなんだ。私も高野さん、丸箸さんと友達になりたい」
 奈央の言葉は四人の空間に一瞬の静寂を生んだ。沈黙を破ったのはなつみだった。
「なつみ」
「え?」奈央が聞き返す。
「高野さんじゃなくて、なつみって呼んで」
「私は愛香で良いよ! よろしくね、奈央ちゃん」愛香もすかさず笑顔で言った。
「ありがとう、なつみ、愛香」奈央は少し涙目になりながらも、とびきりの笑顔を見せた。
 
 それからの学校生活は琴音にとって、これまでとは全く違うものとなった。
 翌日の昼休み、クラスの女子達が琴音、なつみ、愛香に一緒にお弁当食べて良い? と誘ってきた。なつみと愛香としては思う所があったと思うが、快諾し、クラスの女子達の友情の輪はとても強固に大きくなった。
 西澤達に狙われた一件後、奈央が目を光らせてくれたおかげで、全くもって琴音に近づいてくることもなかった。
 奈央は相変わらず学年の人気者で西澤達はどんどん立場を無くしていっているように思えた。自業自得なのだが、少しだけ可哀そうな気もした。
 時折、琴音と奈央となつみと愛香の四人は休み時間に集まり、アニメの話だけでなく他にも色んな取り留めもない会話で笑い、笑顔が絶えることはなかった。
 部活終わりに奈央と帰宅するのは変わらず続き、琴音にとって奈央を独り占めできるこの時間がとても幸せに感じた。
 在学中、琴音は三度男子生徒から告白を受けた。恋愛にとにかく疎い琴音は恋愛感情というものがよくわからず、一切受け入れることはなかった。一方の奈央は部活の先輩とお付き合いをしていたが、あまり長続きはしなかった。奈央曰く、束縛されるのがしんどいらしい。奈央と付き合えたら、きっと誰もが奪われたくないという一心で束縛してしまうんだろうなぁと男性側に同情してしまった。
 三年生に進級しても琴音は奈央と同じクラスになれなかった。そればかりか、なつみ、愛香の二人とも離れ離れになってしまった。
 しかし、奈央とよく一緒にいるおかげか二年生の時点で他クラスの女子達と話す機会もたくさん増え、高校最後のクラスで孤立することなく、すぐに打ち解けることが出来た。すべて奈央のおかげだと思えた。
 琴音の高校最後の県のコンクールでは部員たちと結束し、銀賞を獲得することが出来た。惜しくも金賞を逃し全国大会に行くことは出来なかったが、全力を出し切ったので、琴音はすがすがしい気分だった。
 奈央は、陸上部で走り高跳びを種目としていた。県大会ではトップの成績を残し、全国大会への切符を手にした。全校集会で表彰される奈央を見ると自分の事のように誇らしかった。全国大会では奈央は三位入賞を果たした。それだけでもすごい成績なのだが、協議中に足首を怪我してしまったと後に聞いた。怪我がなければ優勝することが出来ただろうと他の陸上部の友達から聞いた時には、奈央の凄さを感じると共に悔しい気持ちでいっぱいになった。
 部活がひと段落し、いよいよ受験シーズンに突入する時、奈央は琴音の教室に来て、合手のひらのポーズを取って頭を下げた。
「琴音、一生のお願い! 勉強を教えて!」
「え⁉︎」琴音は急な奈央の懇願に声を上げて驚いた。
「でも奈央ってスポーツ推薦もらっていたでしょ? 別に勉強する必要ないじゃない」
 奈央は県大会で優勝した時、東京にあるスポーツで有名な大学の推薦を受けていることを奈央本人から訊いていた。
「もしかして怪我が原因で取り消されちゃったとか?」
「ううん。内定はそのままもらってる。でも考え直したの。私、別に陸上で食べていこうと思っているわけじゃないしさ。だから小さい頃からなりたかった職業を目指そうかと思って」
「奈央のなりたい職業ってなに?」
 琴音はそういえば奈央の将来の夢とか聞いたことなかったなと思い、興味が湧いた。
「助産師」
「え⁉︎」
「私のお母さんが助産師でさ。夜勤とかもあって大変な仕事なのは重々承知しているんだけど、人の命が誕生する場に立ち会える経験は何よりも貴重で、尊くて、やりがいがあるってお母さん言ってたからさ。だから私も目指してみようかと思って。どう? 意外だったでしょ?」
「意外っていうか……」琴音が次の言葉を発しようとすると、すかさず奈央が続けた。
「でね、私、筑波大学の看護学部を受験しようと思って、県内の大学だし自宅から通えるから便利だし──」
 奈央がふと目線を上げると、琴音が目を大きく見開いたまま固まっていた。
「どうしたの、琴音?」
「これ──」琴音は机の中から大学別の受験対策本を取り出した。そこには筑波大学と書いてある。
「私も筑波大学受けるの。しかも看護学部……」
「えぇ‼」奈央は胸を射抜かれたように飛び上がって驚いた。
「じゃあ、大学も琴音と一緒に通えるの⁉ やった~!」奈央は琴音に抱き着いて喜びを露にした。だが、徐々に奈央の顔は不安を帯びた表情に変わっていった。
「でもね。この前の塾の模試でね、筑波大学の判定Cランクだったの。もっと頑張らないと合格は難しいって……」奈央は次に力強い眼差しに変わり、琴音の手を取る。
「でも私なんとか合格したいの。琴音と一緒に通えるなら尚更。だから教えて! お願い!」
 琴音は優しく奈央の手を取り、頬を緩ませた。
「奈央、そんなお願いしなくても勉強くらいいくらでも教えるよ。私も絶対奈央に合格してほしいから。ちょっとスパルタでいくからね。これから毎週うちで勉強合宿! OK?」
 いつも雰囲気の違う琴音に面食らった奈央は次の瞬間、「Sッ気のある琴音も可愛い~!」と、妙なテンションになっていた。
「ちなみに琴音は模試の結果どうだった?」
 琴音はカバンのファイルから結果の書いた用紙をさっと取り出す。
「A判定ですッ」琴音はおどけて言った。
「御見それいたしました。先生」
 奈央が琴音に頭を垂れた後、二人の目が合うと、両者の笑い声が教室に響いた。
 それから奈央は週末琴音の家に泊まり込み、琴音から勉強を徹底的に教え込まれた。
 塾に、学校に、櫻井家に、勉強場所はころころと変わるが、奈央は必死に取り組み、ぐんぐん成績を上げていった。
 試験当日は清々しいほどの晴天となった。二人の合格を天が後押している、そんな気がしてならなかった。試験終了後、奈央はやり切ったと言わんばかりの晴れやかな顔をしていた。
 そして運命の合格発表日、琴音と奈央は筑波大学に辿り着いた。
 大学の玄関前には学生たちがごったがえしている。喜びを爆発させている者、落胆し涙を流している者、在校生に胴上げされている者、そこには様々な感情が入り乱れているようだった。
 二人は恐る恐る、玄関前に貼られている掲示板に目を凝らした。
 二人の番号がしっかりと明示されているのを確認すると、人の目も憚らず抱き合って喜びを分かち合った。二人は晴れて筑波大学看護学科に進学することが決まったのだった。




 櫻井 琴音
 
 二〇〇三年六月


 琴音は奈央と出会いから今日に至るまでの日々を友也に縷々として説明した。
 長い説明だったにも関わらず、友也は飽きることなく相槌を打って、前のめりに聞いてくれたため、琴音にとってもとても話やすかった。
 一通り話し終えると、琴音は頼んでいたカフェオレを口に傾け、薄く吐息を吐いた。
「その後、なつみちゃんと愛香ちゃんとは連絡取りあってるの?」
 友也が微笑みながら訊いた。
「うん、二人は東京の大学にそれぞれ進学してね。今度会う約束しているんだ」
 なつみは美術部だったこともあり、狭き門である東京藝術大学に。愛香はトリマーになる夢を叶えるため、東京の専門学校に進学していた。
「そうか。それにしても奈央ちゃんってすごいんだね。人気者でスポーツも万能で、琴音ちゃんを守ってくれて。まるでヒーローだ」
 琴音は微笑んだ。
「そう。奈央は私にとってのヒーローなの。奈央は狭い世界で生きていた私を知らない世界に連れ出してくれた、大好きで尊敬して止まない、大切な親友なの。奈央にこのこと言ったらヒーローじゃなくてヒロインにして、とか言われそうだけどね」
 琴音の冗談に友也は大きな声で笑ってくれた。
「琴音ちゃんにとってのヒーローが奈央ちゃんなら、俺にとってのヒーローは間違いなく涼太だ」
「涼太君が友也君のヒーロー?」
「うん。感謝してもしきれない。琴ちゃんから奈央ちゃんとの高校時代の話聞かせてもらったからさぁ、俺と涼太の出会いの話も訊いてくれる?」
「も、もちろん! 聞くよ!」琴音は前屈みで食い気味に答えた。
 涼太の幼少期の話はとても聞いてみたかったからだ。もちろん涼太と友也がどのように出会ったかについても興味がないわけではない。それでもやはり涼太の事の方が関心が強くなってしまう。
 そんなことを考えている時、琴音がふと友也に目をやると、いつも笑顔の友也の顔が少し神妙な面持ちになっていた。
 出会ってから彼のこんな表情を見たのは初めてだった。
 といってもまだ出会って数ヶ月なのだが……。
「……どうしたの?」
 琴音は弱々しい口調で尋ねた。友也は小さな吐息を吐いた。
「自分で話すって言っときながら何をひよってんだかな。ごめんね琴ちゃん。ただ、ちょっと辛い話というか、もしかしたら嫌な気持ちにもなっちゃうかもしれない。それでも訊いてくれる?」友也は訴えかける目をしていた。
 友也の表情に琴音は少しだけ気後れしてしまったが、答えは決まっていた。
「もし友也君が話してくれるなら、聞かせてほしいな」
 友也は頬を緩ませた。友也は手元のコーヒーを少し飲み、ゆっくりと視線を上げ、虚空を見つめる。数秒経った後、視線を琴音の目に向け、たどたどしくも話し始めた。
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