商品企画会議

文字数 965文字

「それでは第一回、商品企画会議を開催します!」

 村上春樹はやる気満々で高らかに宣言した。

「ガンるぞー!」

 と絆も小さく手を上げた。

「・・・・・・」

 だが、ベトナム人バイトリーダーの(グエン)・ザップさんの表情は冴えない。
 たぶん、時給問題がくすぶってると思われた。
 東京辺りにいけば、外国人と言えども950~1350円ぐらいの時給はもらえるが、村上一家のコンビニは困窮していたため、時給800円で雇用していた。
 島根県の最低賃金は764円なのでぎりぎりセーフだったのだが、今や日本のベトナム人は24万人にもなり、中国人を抜いてその数はトップレベルになっている。
 国際問題にならなければいいがと、いつも母親の村上妙子などは心配していた。

「じゃあ。私から提案しますね。商品企画会議ですが、今回はべトナム人バイトさんの時給を上げたいと思ってます」

「じぇじぇじぇじぇ――」

 (グエン)さんが何故か某朝ドラのヒロインのような叫び声を上げた。

「時給950円に値上げします! 今まで頑張ってくれてありがとう! (グエン)さん!」」

 妙子の言葉に、(グエン)さんの目から大量の涙が流れ落ちていった。

「――ワタシ、ウレシイデス。オカアサン、ダイスキデス!」

 (グエン)さんが妙子に抱きついた。
 春樹は気が気でないが、絆が手で制した。
 この高時給戦略は、当然、AIの妖精ルナの指示である。
 村上家のコンビ二の利益率が改善してきたので、慢性的人手不足を解消するための思い切った施策であった。

 ベトナムではコンビ二時給は100円ぐらいで、(グエン)さんは留学生できてコンビニバイトで稼いで家に仕送りしていた。
 留学生のブローカーの渡航費は100万は超えるので、日本での生活は決して楽なものではなかった。
 村上家のコンビ二では、さらに月数万の住居費補助してコンビニバイトを確保していた。

「良かったね。(グエン)さん」

 絆は心からそう思った。
 その後、商品企画会議は順調に進み、更なる商品アイテムの入替えが提案された。

 全てAIの妖精ルナのお陰であるが、そのコンビ二家族の救世主に全国屈指のSV(スーパーバイザー)の魔の手が迫りつつあった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み